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映画『ヒメアノ~ル』これぞ”ジャンルスイッチムービー!”ネタバレ&感想

「不満や不安がないと、生きていられないと思うよ。それをなくすことが原動力になって、毎日を頑張っているんじゃない?完璧に満足している奴なんて、いないと思う」

うーん濱田岳主演のラブコメかぁ・・・程度にしか予告では感じていなかったんですが、どうも、後半雰囲気がガラりと変わるらしい・・・?

原作は未読。今後も読む予定はありません!(理由はのちほど!)

結局劇場では観れず、レンタル一週間になっているのを発見したので借りて来ました。

地味に森田剛が楽しみでした。

【映画情報】

【制作国】日本
【監督/脚本】吉田恵輔
【原作】古谷実『ヒメアノ~ル』週刊ヤングマガジン(講談社)

【製作】由里敬三、藤岡修、藤島ジュリーK
【音楽】野村卓史

【出演([]内は役名)】

  • 森田剛[森田正一]
  • 濱田岳[岡田進]
  • 佐津川愛美[阿部ユカ]
  • ムロツヨシ[安藤勇次]
  • 駒木根隆介
  • 山田真歩
  • 大竹まこと

【公開日(日本)】2016年5月28日
【上映時間】99分
【配給】日活
【映倫区分】
R15+
【IMDB】7.1/10.0  (およそ300人の評価)

【あらすじ】

平凡な毎日に焦りを感じながら、ビルの清掃のパートタイマーとして働いている岡田は、同僚の安藤から思いを寄せるカフェの店員ユカとの恋のキューピッド役を頼まれる。ユカが働くカフェで、高校時代に過酷ないじめに遭っていた同級生の森田正一と再会する岡田だったが、ユカから彼女が森田にストーキングをされている事実を知らされる。【引用元:映画.com】

【感想/ネタバレ有り(超絶絶賛しています)】

☆4.7/5.0

最高でした!!!!!!!!!!

邦画はあまり観ない私ですが、間違いなく邦画ベスト3に食い込みましたね。今回は、あまり先入観を持たずに観て欲しいので、まだ未見の方は決して

以下から下を読まないでください!!!!!(笑)


 

 

何よりも主演の濱田岳と森田剛の演技が

素晴らしい!!!!!!!!

それ以外にも個性豊かなキャラクターが前半のコメディタッチな部分を盛り上げてくれます!

  • 岡田くんの間抜け面、たまらなく好きです。

私の好きな人は岡田さんです、と告白された直後の「お、俺と同じ苗字の人・・・?」の返しからの安藤さんが発狂するシーン。それから、安藤さんにユカちゃんと付き合ってると伝えた後「君のXXXを入れたり出したりしているのか」と聞かれて「・・・多少は・・・」と答える。この二つのシーンは本当に笑えました(笑)多少ってなんだよ!(笑)

もんじゃ焼き作るのも下手くそで、セッ〇スは初めてなのに初めてじゃないと言ってみたり、彼女の体験人数を自分から聞いておいて凹んでみたり、「器が本当に小さくてごめん」と謝ってみたりと、めんどくさくて不器用で可愛らしい・それと滲み出る人の良さ・やる時はやるけどでも人としての弱さもちゃんとある、そんな人間臭い演技が本当に上手くて、もはや演技には見えないレベル(笑)

  • 森田剛も最高でしたね。

サイコパスでありシリアルキラーな森田くんを演じる森田剛。

頬のこけ方、髪の毛の雑な整え方、目付き、歩き方、ジャニーズの爽やかさなんて全くないです。相当役作りしてるんだなぁって感じました。特に目付き。

話し方も、棒読みとは違う。まるで魂が抜けているようなそんな、心が入っていないような会話の仕方をするんです。とても不気味でした。

人を殺すと決めるのも、「喉が乾いたな~自販でジュースでも買うか」みたいなノリ。特に何も思わず、それが自然な事のような振る舞い。パチンコで勝った金をチンピラにボコられて奪われるシーンもありましたが・・・自分が傷付くことや、襲った相手にやり返されるとか、そういう事にも特に何も感じていない様子でした。「抜け殻」そんな言葉が似合う役でしたね。

殺害に対して興奮するという部分、死体を埋めるシーンでの森田くんの○○ですが、私は大きく見落としてしまっていましたが、そこはそんなに重要でもないかなと思ったり思わなかったり。おそらく埋めた相手にされた事に対する復讐という意味もあったのではないかとも取れます。

ラストシーンの変貌ぶりも、チビってしまいそうなほどの衝撃の演技でした。途中から彼がいじめられていた高校時代の場面が回想されると、森田くんへの見方も変わってきます。ただの殺人鬼じゃないってところが垣間見えるのも良かったですねー!

そして「麦茶持ってきて」の一言がずっと頭の中で繰り返されていてマズい、中毒気味です。もっと他の作品でも彼の演技が観たくなりました。

  • ムロツヨシも良かった!

この人は良いことも言うけどちょっと行き過ぎてる感じ(笑)厨二病感というか、言葉と行動が伴っていないオタ感が良く出ていました。ちょっと棒読みがわざとらしすぎたけど。

チェーンソーを本当に買っていたりとか、森田くんの持った銃をモデルガンだと疑わずファイティングポーズを取った直後にすかさず撃たれる場面。

大爆笑でした。

本来は全く笑えるシーンではないんですけどね。

いやぁ、生きててよかった。あのあと病院で、

「絶交とか言ってごめん、俺たち親友だよね」

って言う場面。切なかったな。安藤さんもきっと孤独なだけで、根は良い人だから・・・余計に切ない。


キャスティングも本当に良いし、それぞれのキャラクターも良かったし、ユカちゃんが「実は森田くんの指示で美人局しているのでは?」と思えるくらい露骨に岡田君にベタ惚れな怪しい演技も良かったです。後半への不穏の始まりがそこらへんから香ってくるというか。

前半と後半の作風の切り替え方

バイト先の先輩が「運命の人だ」と惚れ込んでいる女の子に自分が告白されてしまって、こっそり付き合い出すというコメディタッチな展開に、観ている人間は笑ったりほっこりしたりと鑑賞している。だけども、少しずつ不穏な空気が広がっていって、岡田くんとユカちゃんが初めて結ばれた夜に外からアパートを見ている森田剛の表情と

そこに突然入るタイトルバック!!!!!!!

このローマ字表記のタイトル!!!!最っっ高にカッコよくて鳥肌が立ってしまいました。映画本編が始まってから、およそ40分後にタイトルバックですよ。登場人物の名前も続々と画面に出てきます。

そこで分かるわけです。

今までのはプロローグ(オープニングロール)に過ぎず、ここからが本編で、ここからガラリと雰囲気が変わっていくのだと。

そして非常に印象的だったのは岡田くんとユカちゃんの濡れ場のシーンと、森田くんがカップルを残虐に殺していくシーンを交互に見せる撮り方。あんなのずるい。斬新過ぎるというか・・・海外のホラーでもなかなか見ない。ここまで出来るんだ邦画ってすごい!って思いました。ハイセンス!

今まで、関連のなさそうに平行していた二つのジャンル(ほのぼのラブコメと猟奇スリラー)の物語がそこのシーンで混ざり合う事によって、お話も一つの結末へ向かって動き出していくんです。

お見事すぎました。

(余談ですが最近、ホラー映画で『ザ・ボーイ 人形少年の館』という作品があって、それのアオリ文が「ジャンルスイッチムービー」でした。あれもなかなか素敵だったけども、ヒメアノールの方がよっぽどうまいことジャンルスイッチしてるよ!!!)

最後のシーンへ至るまでに訪れた2人の変化

この物語は決してラブストーリーではない。と私は思います。

高校時代にいじめられていた友達(森田くん)を救えなかったどころか、自分もその片棒をかつがされてしまった、そして大人になって再会してもその彼と正面から向き合うことが出来ず嘘を繰り返す。そんな過ちを犯した弱い人間(岡田くん)が、森田くんと再会し彼との事件を通して強さを兼ね備えた大人の男に成長していく。そんな話だと思うんです。そして岡田くんの変化に共鳴するように、森田くんにも変化が起きる。

  • 岡田くん側。森田くんと再会した時の挙動不審さ、彼と過去に何があったのかを話せなかった・謝れなかった弱さ。最後には愛する彼女のために謝罪し、そして戦い、彼に強い言葉をかける。きっと彼はここまでの展開を通して人間的に成長し、もっと強い人間になれたんだろうなと、思えます。
  • 森田くん側。ラストの逃亡のシーン、車中で岡田くんに「どうしてこんなことをするの、もうやめようよ。本当の森田くんは優しくて・・・」と説得されていて、その直後。あれだけ、息をするように人を殺していた森田くんが、犬の散歩をしている人を避けようとしてハンドルを切り、車を事故らせてしまうんです。

その後、森田くんは唐突に、岡田くんと高校時代に友達だった頃のようなふるまいをします。

「あれぇ?岡田くん、来てたんだ。借りてたゲーム、返さなきゃ・・・。」

「お母さーん、麦茶ふたつ持って来てぇ」

一見、完全に人格が壊れてしまったかのようにも見えます。さらっと見れば完全なバッドエンドです。

でも!!!

もしかしたらこの後、森田くんは精神的な治療を受けて、人を殺すような人格から、岡田くんと友人だった頃の本来の人格を取り戻せるかもしれない。岡田くんとの最後のやりとりを通して、森田くんも過去から救われたのではないかと。そんな変化があったのではないかと。ポジティブな未来がほのかに香るんです。それは私の単純な願いだけでなく、理由がちゃんとあります。

森田くんの人格が変化したラストシーン、きっかけは最後の事故のように見えますが、しかし本当はそれより前に、変化が起きていた。逃走劇の途中に避けた犬が、かつて森田くんの家で飼っていた犬ととてもよく似ていたんです、だから避けようとした。でもそれ以前の抜け殻のような森田くんならばきっと気になんてしないはず。おそらくハンドルを切った時点で、森田くんの中では人間的にポジティブな変化が起きていたんです。そしてその変化は、岡田くんの言動がもたらしたものだと思うんです。

(捕まった以上は死刑確定かなと思うんですが森田くんの境遇と精神状態から無期懲役になる可能性も・・・?)

「岡田くん、またいつでも遊びに来てよ」

この最後の台詞からのエンドロールまでの流れが本当にずるい。高校時代の、一緒に遊んだ夏の回想シーン、最高に泣けます。飼っていた犬もここで登場します。

号泣必至です。

岡田くんとユカちゃんのラブよりも、岡田くんと森田くんの友情ドラマ・人間ドラマがメインとしか思えないんですよね。だってどうしても、森田くんが最初からユカちゃんを狙っていたようには見えなかったから。

タイトルの意味

「ヒメアノール」というのは、「ヒメトカゲ」という意味があるようですね。調べてみると「ヘリグロヒメトカゲ」というのがヒットしたので少しそこから読み解けることを書いておきます。

なぜタイトルはヒメトカゲだったのか。

まず

  • 下瞼のウロコは半透明になっていて、目を閉じた状態でも外を見る事が出来る

ネカフェで森田くんがアイマスクをしながら眠っているにも関わらず、過去にいじめられていた時の夢を見てしまう場面がありましたね。そんな、見たくもない物を見続けてしまうという森田くんの苦しみが表現されていたのかな。

  • 木の葉の下などに隠れていて、目に付きにくいが、わりとありふれたトカゲである。

どこにでもいる普通の人間だけど、何かのきっかけで壊れてしまう事もある。それは誰にだって有り得ること。そして壊れてしまった人をパッと見つける事は出来ないけれど、案外どこにでもいる。潜んでいる。そんな意味合いもあるのかな。考えるととても恐ろしいですが、切なくもあり、リアリティもあると思います。

  • 餌になる側の、弱者という意味

トカゲのように喰らわれる側だ、という意味もあるのかな。殺される被害者側にあてたタイトル、もしくは岡田くんのような人を指しているようにも思えますが、上記の二点を合わせて考えると森田くんそのものを指しているタイトルなんでしょうね。

森田くんはかつて弱者であり、強者に虐げられることで壊れてしまったんですから。

まとめ

パッと見、エログロでヤバそうな顔してるくせに、その奥にすごく良く出来たサイコサスペンス・サイコスリラー・ヒューマンドラマ・ラブコメをうまーい具合に配置して混ぜ合わせた最高にスタイリッシュでハイセンスな作品だと思いました。(カタカナが多い)

エロとグロは紙一重で表裏一体的なホラー映画のツボもおさえてますしね。

大爆笑するし大号泣するし、終わった後は私も抜け殻のようになっていました。

観終わった後は、トカゲの本体から切り離された尻尾みたいに何をするでもなくボーっとするしか出来なかった。置いて行かないでって感じ。

観終わって一日経ってようやく感想を書けていますが、終わった直後は興奮で感想もうまく出てこなかったなぁ。今書いてみて、すごく良く考えさせられる作品だなと改めて実感。

冒頭で、「原作は今後も読む予定はない」と書きましたが、この映画はこれで完成されていると私は思うので、読まない方向性でいきたいです。

※かなり残虐に人が殺されたり、非道ないじめのシーンがあったり、女性が襲われたりするシーンが頻発します。そういうのが苦手な方には絶対オススメ出来ませんが。まぁそういうのもいけるよって方には絶対に観て欲しい

観た人と色々と語りたい。そんな映画でした。

あ――――――、久々。こういう作品に出会えるから、映画観賞は止められないんですよね。かなり長文になってしまいましたが、ここまで読んでくださった方がいましたら・・・どうもありがとうございました!

 

 


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