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目覚めたらひとりぼっち!映画『パッセンジャー』ネタバレ&感想

私はこの船で暮らし―――
永遠に旅をする 辿り着けない旅を・・・見知らぬ男とともに

劇場で予告編を観たときに気になってはいたものの、結局何気なくスルーしてしまっていた今作。家族の勧めもあってようやく、今回自宅で鑑賞しました。

主演俳優には、ヒロイン役にジェニファー・ローレンス!大好きな女優さんです(『ハンガー・ゲーム』や『世界に一つだけのプレイブック』で有名ですが、個人的には『X-MEN』シリーズのレイヴン(ミスティーク)が印象的)。そして主人公にはクリス・プラット、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスターロード役が記憶に新しいですね-!彼は宇宙に縁があるのかな(笑)

【映画情報】

【原題】Passengers
【制作国】アメリカ
【監督】モルテン・ティルドゥム
【脚本】ジョン・スパイツ
【製作】ニール・H・モリッツ、スティーブン・ハーメル、マイケル・マー、オリ・マーマー
【製作総指揮】デビッド・ハウスホルター、ベン・ブラウニング、ジョン・スパイツ、ブルース・バーマン、グレッグ・バッサー、ベン・ワイスブレン、リンウッド・スピンクス
【撮影】ロドリゴ・プリエト
【編集】メリアン・ブランドン
【音楽】トーマス・ニューマン
【声の出演([]内は役名)】

  • クリス・プラット[ジム・プレストン]
  • ジェニファー・ローレンス[オーロラ・レーン]
  • マイケル・シーン[アーサー]
  • ローレンス・フィッシュバーン[ガス・マンキューゾ]
  • アンディ・ガルシア[ノリス船長]

【公開日(日本)】2017年3月14日
【上映時間】112分
【配給】ソニーピクチャーズ・エンターテイメント
【IMDB】7.0/10.0  (およそ230,000人の評価)

【あらすじ】

20XX年、乗客5000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が、新たなる居住地を目指して地球を旅立ち、目的地の惑星に到着するまでの120年の間、乗客たちは冬眠装置で眠り続けていた。しかし、エンジニアのジムと作家のオーロラだけが予定よりも90年近く早く目覚めてしまう。絶望的で孤独な状況下で生き残る方法を模索するうちに、2人は惹かれ合っていくのだが……。【引用元:映画.com

【感想】

☆3.5/5.0

壮大で美しい宇宙と船内の映像

まず賞賛したいのはこれ!!

宇宙の映像の美しさ、無機質で洗練された宇宙船内外のデザイン!それ以外にも、無重力で浮いてしまうプールの水の表現や、隕石の激突によって起きた異常によって熱暴走する船室、そしてラストの”楽園”のシーンまで、どれも非常に美しく、それだけでも観る価値はあるかな、と思えます!

実力派俳優たちの共演

ジェニファー・ローレンスの美しさ!首元のホクロがすごく色っぽくてきれいです!そして彼女の、恋する女の目から憎しみに満ちた目に変わっていく演技!自分を起こしたのがジムだと知った後の、殴るわ蹴るわの暴行シーンが何気に鬼気迫っててゾッとしましたね。彼のした事の重さを再確認させられるというか。

対するクリス・プラットも、影のあるイケメンを演じていましたね・・・。目覚めてから、ジャケットの着方を鏡で確認して、これから始まるであろう新たな人生にウキウキする様子、そこから自分が一人だと知って絶望していく様子・・・。オーロラに対して、恋人をしながらも時々見せる罪悪感の滲んだ表情・・・。どれもすごく上手でしたね。

そして!!忘れてはいけない、アンドロイドのアーサーを演じたマイケル・シーン!凄いです、もう見た目は人間にしか見えないのに、ちゃんとアンドロイドしている。絶妙に噛み合っているようで噛み合っていない台詞回しとか、些細な表情筋の使い方とか「あ、本当の意味では理解されていない」というゾッとする感じが上手かったです。だからと言って完璧にロボット・・・とも少し違う、絶妙に愛着の持てる感じが凄く良かったんですよね。

この三人だけでほとんどの場面を回していくのに、後半の船長が目覚めるまで退屈しないのが本当にすごい。映像と、脚本と、演技者の力の賜物だと思います。

あと一番最後に出て来るノリス船長?という名前の人らしいですが、アンディ・ガルシアでビックリ(笑)もはやカメオ出演ですよね(笑)アンディ・ガルシアも大好きな俳優さんなので、ラスト「あっ!!!」とテンション上がってしまいました(笑)

泣けるけどご都合主義

残念な点になってしまうのかなぁ。切なくて、泣けるシーンも終盤あるんですが、途中まではわりとツッコミどころ満載で観てしまっていました。

ジムの孤独にもっと共感させてほしかった

彼がひとりで過ごした一年と三週間という時間をもう少し詳細に観たかったですね。全裸で徘徊したって誰も気にも留めない・・・というところとか切なくて良かったんですが。

ちょっと尺というか、表現不足だったかな。引用させてもらったあらすじも、予告編もそうだったんですけどまるで「偶然二人で目覚めた」というアオリなわけです。でも実際は全然違う!!

実際は、ひとりで目覚めたジムが残り90年の人生を孤独に過ごすのに耐え切れず、一目惚れした美女を自分の都合で起こしてしまう・・・。それは、殺人にも等しい、人の人生をまるごと奪うような行為なわけで。この情報を知らずに観た人は、きっとジムの行動には共感出来ないどころか嫌悪感さえ持ってしまうかも。

だからこそ、ジムの孤独にあともう少しでも共感を呼ぶ表現が必要だったかな、と。じゃないと物語への没入感が薄れてしまうから。「絶対に共感しない、自分ならそんなことはしない」と言い切れる人もいるかもしれないですが、本当にそうなのかな、と思います。あの状況になってみないとまずジムの気持ちは分からないし、人間は弱いから。極限状態であればまともな判断が下せず”人生を百万倍良くする方法”に縋ってしまうかもしれないですよね。

船長の台詞に「溺れる者は誰かに縋るものだ、でないと死んでしまう」という台詞がありましたが。この部分について、「ああ、この状況では仕方ないのかもしれない・・・」と思わせる表現が、もう少し欲しかった、という事ですね。

イケメンじゃなかったらどうするんだ問題

ジムがものすごいブサメンだったり、技術者ではなかったり、ものすごい幼かったり、逆に老人だったりしたら・・・というツッコミですね(笑)相手がいくら美女でも、彼女にも選択する権利があるわけで。そもそも技術者でなかったら、誰かを起こすことも出来なかったんですよねー。全体的に、予定調和な脚本であることは、間違いないです。

もし、ジムがサイコキラーだったらホラーな展開になるかも!とも思います。それはそれで観てみたい(笑)

 

船長の存在も都合がいい

後半になって起きて来る船長ですが、5000人以上もいる中で彼が目覚めたという偶然もものすごい。そしてすぐに死んでいなくなってしまうのも、都合が良い。最後に扉を開けに行く役をジムにさせるには、再度二人っきりにする必要がありますもんね。しかし最初から最後まで二人では船のシステムの深い部分まで入り込めない+医療機器の限界突破をさせることが出来ないわけで。監督の意図に沿って登場したキャラだなぁ、と冷静に思えてしまうところが残念でした。

ジムの罪は最初から許されるべくして犯された

最後の方で「沈みゆく船」だったんだ、とオーロラも観客も気付きます。つまり、ジムが彼女を起こそうが起こさないままだろうが、全員死にゆく運命だったんですよね。

この作品の最大のテーマは「人命の価値」で、武田泰淳の短編小説『ひかりごけ』のように、極限状態に置かれた人間が犯すタブーについてどう考えるか、という部分がキモだと思うんです。許されない罪に対してジムとオーロラがどうしていくのか、そこが観たいんですよね。

でも、物語は「最初からジムが許される」ように作られているわけで。

まぁラブロマンスをメインにしてしまうとそうなるのかもしれませんが・・・。原作でのラストは映画版とは違い、もう少し暗澹としたものだったようなので、そっちの方も観てみたかったなーと思いました。

まとめ

散々色々言いましたが(笑)

あまり深いことを考えずにラブロマンスとして観れば、ロマンチックなシーンも沢山ありますし、何より映像が美しい。

それから主演陣のキャラクターも魅力的で惹き込まれます。もっと素直に観れば、オーロラが「偉業を達成する人生」よりも大切な物を見つける物語なわけで。ヒューマンドラマなのか、ラブストーリーなのか、どちらに重点を置くかで見方もまた変わってくるのかなー、と。

これだけ色々とツッコんでおきながら最後の方は泣いてしまったちびぞうなので、決して失敗はしない良作だと思います(笑)

 

 

 


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スパイディの成り立ちが分かる!映画『スパイダーマン』ネタバレ&感想

大いなる力には、大いなる責任が伴う

今年、『スパイダーマン / ホームカミング』を観まして、過去のスパイダーマンも見返したい!と思ったので復習がてらDVDにて再鑑賞しました!

ちなみに新スパの方も記事を上げていますので良ければどうぞ!→三度目の映画化!『スパイダーマン : ホームカミング』感想

トビー・マグワイヤのスパイダーマン・・・少し陰鬱すぎて苦手だったんですよね。今はどう感想が変わるでしょうか・・・

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故郷を離れた大人たちへ。映画『ニュー・シネマ・パラダイス』感想

”郷愁に惑わされるな、私たちの事は忘れろ
自分のすることを愛せ
子どもの時、映写室を愛したように”

世代によっても変わってくるとは思いますが、きっと映画が好きな人でこのタイトルを知らないという方はほとんどいないのではないでしょうか。

私も、誰から聞いたかは覚えていないのに、なぜか「名作だ」という事は知っていて、ずっと観ずに放っておいてしまったのがこの作品です。どうも昔から、名作だと勧められていた作品に限って長いこと観ないで置いてしまうんですよね。(特に家にDVDがあっていつでも観れるとなるとなおさら)

今回、やっと重い腰が上がり、DVDで観る事が出来ました。おそらく重要になってくるであろう事を先に書いておくと、ディレクターズカットや完全版ではなく、劇場公開版を観ました。

まずはいつもの映画情報から!

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DCの新女性ヒーロー!映画『ワンダーウーマン』感想(ネタバレなし)

最強の美女戦士、あらわる――

元々、DCコミックの映画はあまり観て来ておらず、しかも女性ヒーローの映画は興味がなかったのもあって、もしかしたらこれ単体であればスルーしていたかもしれない本作・・・。

DC版アベンジャーズである『ジャスティスリーグ』が始まるということで、後から急いで追いかけることになるなら、今のうちに観ておこう!と思い立って劇場へ向かいました。

監督は『モンスター』のパティ・ジェンキンス監督、製作に私の好きなザック・スナイダーも関わっています!!

パンフはこんな感じ。

神々しい!!衣装もかっこいいし、ダイアナの魅力を前面に押し出した表紙です・・・(*^ω^*)

大体ヒーローもののパンフは大きめ縦長でキラキラしてますね!34Pで税込760円!若干豪華で若干安め。

ワンダーウーマンの成り立ちや他ヒーローとの関係性が詳しく載っていたり、ページ下部のほそーい部分にまで豆知識が載っていて楽しいパンフです^^

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倫理観が崩壊する不条理スリラー。映画『エル ELLE』感想

犯人よりも危険なのは”彼女”だった―――。

時々、映画好きの母親に連れられて前知識がゼロのまま映画を観に行く事があります。ある程度母親の勘を信頼しているのもあるし、「何も知らずに」観に行くワクワク感が楽しかったりするからです。

実際、以前観に行った『トランボ』なんかはもの凄く面白かった。

今回も若干の期待をしつつ、タイトルから勝手に「ブランドに関わる女性の物語だろうか」と想像しながら行ったのです。

全く違ったけどね!

パンフはこんな感じ。

やっぱりミニシアター系の映画のパンフはシンプルオシャレで好きです!右開きの真っ赤なデザイン、文字も白と黒のみでハイセンス。

価格は26Pで税抜き667円。まぁ普通ですね。

個人的に小説家の真梨幸子さんのコラムが載っていたのが嬉しかったです!

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MCU参戦!映画『スパイダーマン : ホームカミング』ネタバレなし感想

ホームカミング=”帰郷”を祝福せよ!

待ちに待ったMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作が、ファン待望のスパイダーマンをリブートさせアベンジャーズの一員として描く形でやってきました!!!

以前公開された2作のスパイダーマンとはまた別に新たに、『キャプテン・アメリカ/シビルウォー』で助っ人として登場したスパイダーマンの個別作品第一弾です!

今までのスパイダーマンよりももっと年齢を若く設定し、高校生としてのピーター・パーカーがどのようにヒーローになっていくのかを身近な目線で堪能出来るのが本作の魅力。

私もやっとこさ劇場で観る事が出来ましたー!

パンフはこんな感じ

A4より少し大きめサイズで46P税抜き760円はやっぱり豪華め。もう一つ、豪華版のようなものが出ていたようなのですがそちらは売り切れでした。残念。

キャストやスタッフさんへのインタビューも豊富で、監督の全て生身で撮れるように”リアルにこだわった”アクションシーンへについての記事も面白かったです。

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イベント 長野県

長野県の『星空の映画祭』行ってきたよレポ!

どうもこんにちは、ちびぞうです!今日は、いつもと少し違い”こんなイベント行ってきたよ!”系の映画関連のレポートをお届けしたいと思いますー。

【画像引用元:星空の映画祭公式サイト

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藤原竜也×有村架純『僕だけがいない街』ネタバレ&感想

だから戦う

前に進むため 生きるために

名作コミック、「僕だけがいない街」の実写映画化ですねー。もう最近、映画『22年目の告白』やドラマ『リバース』なんかでも見ていたもので、藤原竜也は本当にお腹いっぱいで・・・。

この作品は公開当時まだ原作の方が完結しておらず、更に原作が好きだったので実写化に不安がありました。なので劇場では観に行かず、この間テレビでやっていたものを録画、鑑賞しました。

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超平和バスターズのアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』第二弾!感想&ネタバレ

君のおしゃべりがとまるように

口にチャックをつけてあげよう

あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。)”ファンの皆さん待望の、次作に等しい作品が来ました!!(内容はリンクしていません)

この作品は映画館に観に行ったんですが、観終わった後とあるキャラクターへの憤りが凄くてですね・・・(笑)

もちろんラストは号泣していたんですけども、どうしても納得出来ずに映画仲間とそのとあるキャラクターへの憤りをぶつけあったりしていました(笑)

この2017年夏に”ここさけ”がまさかの実写映画化ということで、テレビで放映されていたものを観返してみましたー。

ちなみに映画館のパンフはこんな感じです!

50Pという背表紙のある大作パンフ!しかし900円!やはりコストが・・・。

ちなみに劇場公開の時に入場口で劇中ミュージカルのパンフレットも一緒に配られていました。

田舎町の高校が行う地域ふれあい交流会のパンフにしてはハイクオリティ!すごくセンスを感じますね!ちなみに裏側

しっかりとミュージカルのキャストも書かれていて、中は全8章に分かれた劇のあらすじと、そこに使われている劇中曲が載っていましたー。

【映画情報】

【副題】Beautiful Word Beautiful World
【制作国】日本
【監督】長井龍雪
【脚本】岡田麿里
【キャラクターデザイン・総作画監督】田中将賀
【原作】超平和バスターズ
【音楽】ミト(クラムボン)、横山克
【主題歌】乃木坂46 – ”今、話したい誰かがいる”
【声の出演([]内は役名)】

  • 水瀬いのり[成瀬順]

  • 内山昴輝[坂上拓実]

  • 雨宮天[仁藤菜月]

  • 細谷佳正[田崎大樹]

  • 村田太志[三嶋樹]
  • 高橋李依[宇野陽子]
  • 石上静香[江田明日香]

  • 大山鎬則[相沢基紀]
  • 古川慎[岩木寿則]

  • 藤原啓治[城嶋一基]

  • 吉田洋[成瀬泉]

【公開日(日本)】2015年9月19日
【上映時間】119分
【配給】アニプレックス
【前作】あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
【IMDB】7.4/10.0  (およそ1,600人の評価)

【あらすじ】

あることをうっかり話してしまったため家族がバラバラになり、突然現れた玉子の妖精に「二度と人を傷つけないように」とおしゃべりを封印されてしまった少女・成瀬順。もともとは元気な女の子だったが、その事件がトラウマとなり、ずっと目立たないように静かに生きてきた。そんな順が「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命され、ミュージカルの主役にも選ばれてしまい……。【引用元:映画.com】

【感想】

☆3.6/5.0

結論から先に言えば、やっぱり面白かった!!です!

序盤の設定に少しツッコミを入れたくなる気持ちはあるし、両親はあまりにも自己中だし、坂上くんにはどうしても憤りたくなってしまうんですが、”普通の恋愛映画・青春映画ならこうなるだろう”というお約束を裏切っていく脚本はやっぱり上手く出来ているし、(観客を裏切ろうという敢えての)勇気があるし、斬新で面白いのかな・・・と。

青春×群像劇 というセットに弱いので、個人的に評価が上がっている可能性はありますが。

劇中で使われるオーバーザレインボウという曲

オズの魔法使いというミュージカル作品から抜粋した楽曲ですが、ここからこの映画のメインの四人

  • 喋れない内気な女の子・・・成瀬
    • 腕を壊した野球部の元エース・・・大ちゃん
    • しっかり者のチア部の部長・・・仁藤
    • 音楽好きな草食系男子・・・坂上くん

彼らが、オズの魔法使いに登場する

  • 不思議の国に迷い込んだ主人公、ドロシー
    • 脳が欲しいカカシ
    • 心が欲しいブリキの木こり
    • 勇気を手に入れたいライオン

になぞらえられているのかな?と想像できますよね!突然玉子の妖精が出てくるお伽話のような世界観も、オズに迷い込んだドロシーの世界観と一致します。

おそらく主人公の成瀬がドロシー。そして道中出会う三人をドロシーは最終的に救う流れになる。カカシとブリキの木こりとライオンがそれぞれ誰にあてはまるのかは個々でまた色々考えられるとは思いますが、

  • まっすぐ野球に向き合おうとした大ちゃん
  • 想いを口に出せるようになった坂上くん
  • 見て見ぬふりをしていた気持ちに向き合おうと決めた仁藤

ドロシーがオズで三人を救ったように、成瀬との交流を通して三人が成長・変化していくところもリンクしているなと思いました。突拍子もない設定だったり、最後のどんでん返しだったりと斬新ではあるんですが、それでもお話の定石はしっかり守っている・・・よく出来た脚本だなと思いました。

成瀬の紡ぐ物語のラストの変化

二度目の鑑賞ですしせっかくなので、今回は成瀬は、どこで坂上君に恋をしたのか。

という事に注視しながら見ていました。

一番最初に恋に落ちたように見える演出がされているのは、坂上くんがアコーディオンを弾き語りながら玉子の歌を歌っているのを成瀬が目撃するシーン。しかし実はここは成瀬は恋に落ちてないかもしれない、と思えてきました。

ただ単に、自分の状況とリンクする歌を歌っていた坂上君に「あの人は私の心の中を見ている!?」という混乱に近いファンタジーな驚きを持つんですよね。

その後も、頭の中を覗き込まれているように感じてパニックになったりする場面がありますが、きっとあの頃はまだ恋に落ちていないはず・・・。

ちなみに、坂上くんがまるで成瀬の心の中を覗き込んでいるかのような発言ができたのは、二人が似た者同士だったから(家庭環境や想いを口にできなくなった現状がリンク)というだけなんですが、それが成瀬にとっては何でも自分の事を分かってくれる、助けてくれる王子様のように感じていったのかもしれないですね。そこが大きなミスリード(観客にとっても成瀬にとっても)になっているのが憎い演出です・・・。

二度目の鑑賞で気付いたのは、成瀬が考えた脚本のラストが最初はハッピーエンドではなかった、という部分。

お城の舞踏会に憧れた女の子は沢山の言葉で人々を傷付け、最後には断頭台で首を切られてしんでしまう。その首から、少女の本当の気持ち(王子への愛とか)が溢れ出し、人々は少女の本質を知る・・・。

というラストなんですよね。もしかしたら成瀬はまだこの時点でも、自分という存在にハッピーエンドは来ないと認識していたのかも。そう考えて見ていると、成瀬が「ラストを変えたい」と言い出したところでピンと来ますね!!

きっともうこの頃には成瀬は坂上君には恋をしていたし、「自分にも幸せなラストがあるかも」と夢を見る気持ちが動き出していたはず!!そう思うと本当に切ないです。おそらく、ハッキリどこで恋に落ちたかは言えませんが、このラストを変えたいと言い出す成瀬と、彼女の心境は重ねられていたのかな、と。

結局ラストは、坂上君の意見により成瀬の言っていたものとは変化し【ハッピーエンドとバッドエンドを同時に行う】というものに変わりました。これも成瀬の行く末を暗示するようなラストですよね。ううーん上手です!!

もう少し欲を言うなら

最後、ミュージカルから逃げ出した成瀬を坂上君が発見、言いたいことを全て受け止めると言う坂上君に想いをぶつける成瀬。

多分ここで観客のフラストレーションを発散できる仕組みにしたかったんだと思います・・・。

本来なら、観客の言いたいことを成瀬が代弁して発散し、改めて告白→しっかりと断られることで腹をくくるというか、悲しいし悔しいけれど彼女的にはスッキリとけじめがつけられた場面だと思うので、それに比例して観客もスッキリしたいところなんですが。。個人的にはまだ足りなかったな・・・。KY優男の坂上くんの罪はそれほど重いと感じました(笑)

どうでもいい話にそれますが、序盤で話に上がった仁藤が”付き合っているが名前を言えない相手”というのは同じクラスで同じくチア部の女の子(短髪で仁藤と仲良し)なのではないか?仁藤は決して人には気軽に言えない恋をしている!と、無駄な予測を立てて観てしまっていた(笑)ので、正直、仁藤は高校から同性愛に悩む女子に変化し、坂上君も失恋する

くらいのオチをつけてくれても良かったんですよ!(笑)成瀬と一緒に失恋して然るべき!それならまだ納得いったかな!!(笑)

泣けたポイント

実は裏の王子である大ちゃんの野球部のサイドストーリーもすごく面白いです。

(ミュージカルで玉子を演じた大ちゃんが最後は王子に切り替わるという演出も面白くて好きです。彼女の中の玉子問題が本当に解決に向かっていく(玉子の王子化)という明るい未来が予測できますね^^)

①ファミレスで自分の悪口を言っている野球部員と鉢合わせしてしまう大ちゃん。勿論キレに行く大ちゃん(笑)そうすると逆に、大ちゃんが腕を壊したことでエースに格上げされた山路くんにキレられてしまう大ちゃん。そこで大ちゃんをかばって

「言葉は傷つけるんだから。絶対に取り戻せないんだから」

と言う成瀬のシーン。ここが泣けます。言いたくないのに言ってしまった言葉とか、二度と取り戻せないよなぁ・・・と思うと切なくて。きっと誰しも経験がありそうな部分だからこそ響くんでしょうね。

その後、山路とキャプテンである三嶋に頭を下げに行く大ちゃんのシーンも凄く良いですし、成瀬達に頭を下げて自分も仲間に入れてくれ。と頼む大ちゃんも素敵。それを満足そうに眺める三嶋の表情からも「こいつ良いヤツ!」と伝わってきます。

何気に野球部のキャプテンの三嶋くんは、元エースと現エースの間に入ったり、野球部員と大ちゃんの摩擦をなんとかしてやろうと悩んだり、クラスでミュージカルどうする?という話題の時に「それぞれやれる範囲で手伝えば」と後押ししてくれる素敵キャラなので!そこもよーーーく見てもらいたいですね!(笑)

②成瀬がいなくなってパニックの教室。何があったか聞くと会話を聞かれていたのかもと焦る坂上君。「でも、それが原因かなんて・・・」と言う坂上君に対して「お前がそれを・・・っ!!(言うのかよと言いたいんでしょう)」と物凄くキレ気味の大ちゃん。

気持ち物凄くわかるよ大ちゃん!!と泣けてきます!!!(笑)

③ラストのミュージカルシーン、初見ほどではないですが泣けました。最後せっかく二つの楽曲を同時に演奏、歌唱ということなのでどちらもきちんと伝わるように字幕表示があったら良かったなぁ、と思いました。

小ネタ

原作を担当している「超平和バスターズ」の皆さんの前作である『あの花』と、舞台は同じく埼玉県の秩父。直接的なストーリーの繋がりはありませんが、ファーストフード店にいる大ちゃんと外にいる女子高生たちが視線を交わすシーンがあります。

この女子高生たちは、あの花に登場する”あなる”(下ネタではなく子供が付けたあだ名ですよ!!(笑))の友達。つまり同じ世界の中で起きた別の高校生の物語。という設定なんですね。素敵です。

それから、DTM研究会という今どきの会も時代に乗ってて良いな。と。成瀬の声をボーカロイド化しちゃう部員がいたり。ものすごく今どきっぽいです。

まとめ

何度観ても坂上君は罪深くて憎たらしいし、大ちゃんは素敵だし、いろんな人の想いが交錯する青春群青劇としてとても面白い作品でした!!

そういえば、実写版の予告かなにかを見たんですけアオリ文が「最高の、失恋」とかってなってたんですよね。正直、成瀬が失恋するかどうかはラストのどんでん返し的な要素であって、それを宣伝文句にしてしまうとこの作品の醍醐味が味わえなくなってしまう・・・というか単純にネタバレだと思うんですがどうなんでしょう・・・。

某有名なサイコサスペンス映画で「犯人は真ん中」って書くようなもんじゃないですか!!(笑)

実写版の方は、原作が少しファンタジーっぽさを含んでいるので多分そこをうまいことリアルに押し込めないと違和感がすごい作品になってしまうんじゃないかと心配なんですが。とりあえずDVDが出たら観てみて、また感想を書きたいと思います。

以上、長々と読んで頂きありがとうございました!

 

 


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岐路に立つ!CGアニメ映画『カーズ/クロスロード』感想&ネタバレ

この挫折は終わりか、始まりか?

「もし勝てたら、いつ引退するかは自分が決める」

やっと劇場で観ることができました!一作目は自己改革、二作目は友情を更に深堀り、今回は邦題が”クロスロード”となっており『岐路』つまり人生(車生?)の分かれ道を意味しているようです。

果たしてマックィーンはどんな分かれ道に立たされてしまうのか!?

パンフレットはこんな感じ。

道を辿った先の道が二股になっているところがまた憎い。この先の人生をマックィーンが見据え、どう選択するのか?ということを暗示しているようですね!

ちなみに形はディズニー・ピクサーのCGアニメのパンフおなじみの真四角に近い形です。46Pで税抜き667円。うーんやっぱり豪華。

黄色の車体が一体誰なのか、気になるところですね!