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情熱と悪夢が交じり合うイタリア映画『結婚演出家』ネタバレ&感想

映画監督フランコ・エリカを次々と襲う不可解な出来事―――

地元、柳ケ瀬の映画館シネックスにて『Viva!イタリア vol.4』のうちの1作が公開されていましたので観てきました!

ちなみにVol.4の他作品は『あのバスをとめろ』『いつだってやめられる7人の危ない教授たち』でした。どっちも面白そうーーー!!

監督は『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』『母の微笑』などのマルコ・ベロッキオ。パンドラさんによる公式サイトはこちら

パンフはなく、代わりに関係者に配られる非売品のプレスシートが100円?で売っていました。

映画評論家でもあり映画監督でもある田中千世子さんが寄稿していましたー。

【映画情報】

【原題】 Il regista di matrimoni
【制作国】イタリア、フランス
【監督/脚本】マルコ・ベロッキオ
【制作】マルコ・ベロッキオ、マッシモ・ビリア
【撮影】パスクァーレ・マリ
【美術】マルコ・デンティチ
【衣装】セルジョ・バッロ
【編集】フランチェスカ・カルベリ
【音楽】リカルド・ジャーニ
【出演([]内は役名)】

  • セルジオ・カステリット[フランコ・エリカ]
  • ドナテッラ・フィノッキアーロ[ボーナ・グラヴィーナ]
  • サミー・フレイ[フェルディナンド・グラヴィーナ]
  • マウリツィオ・ドナドーニ

【公開日(日本)】2018年6月23日
【上映時間】100分
【配給】パンドラ
【制作年】2006年
【IMDB】6.3/10.0  (およそ630人の評価)

【あらすじ】

。貴族出身の小説家マンゾーニの原作「いいなづけ」の映画化準備を進めていたベテラン映画監督のフランコは、ある時、ミステリアスな女性と出会う。それからしばらくして、シチリアで新婚カップルを撮影中の演出家エンツォの家に招かれたフランコは、そこで奇妙な貴族から、自分の娘の結婚式の撮影をしてほしいと依頼される。その娘は望まぬ結婚を迫られており……。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレするよ!)】

☆2.4/5.0

まるで悪夢のような作品でした・・・。

悪夢だと思うほどつまらないって意味ではなくて、本当に悪夢を見ているような感覚になる作品というか。

ストーリーはそこまで難しい感じではないです。「いいなづけ」という作品の熱烈なファンだったミステリアスな美女が、その作品が映画化されると知り監督である主人公を訪ねてくるオープニングから始まります。しかし彼女は男たちに追われている様子で、監督には会えないまま去ってしまう。
そして場所は変わりシチリア。ひょんなことから監督がある貴族から「娘の結婚式を撮影して欲しい」と頼まれますが、その娘というのが冒頭で登場した美女!
その美女は父親に無理やり政略結婚をさせられそうになっていて全く結婚に乗り気ではなかった。そんな時に出会った監督と美女は惹かれ合う。しかし迫る結婚式!

二人は何度かの逢瀬を経て愛を確かめ合い、最後には二人で逃げ出す・・・。というもの。

しかしこの映画、悪夢的な演出が多くて「どこまで現実の出来事なのか?」少し分かりづらくなっていると思います。そこがけっこうモヤモヤしてしまうところなんだよねぇ。

印象的なシーンが多い

オープニングから古い映画のワンシーンのようなものが挟み込まれるし、時々画面がモノクロ?調になったりします。それに意図があるのかどうなのか、ちびぞうは凡人なので全く分かりません。ヨーロッパ映画的と言ってしまえばそうなのかも。

突然死んだと思っていた知り合いの映画監督が登場したり、その人が花火をバックに飛び降り自殺したり、美女を追いかけて不法侵入して飼い犬に話しかけたり、街を歩いていたら布に下半身を入れてピョンピョン飛んでる男たちに襲われたりと意味の分からない場面も多いです(笑)

でもそれが不思議と印象的。イタリアの伝統的な結婚式での歌も、厳かで幸せな雰囲気もあるんですけどちょっと怖く感じられたり。そういった不可思議でちょっと不快感のあるシーンが前述した悪夢的な演出になっているのかもしれません。

ちびぞうの好きなシーン

主人公がシチリアの浜辺を歩いていると、出会った結婚ビデオの撮影現場。そこで監督をしていた男に、主人公が有名監督だという事がバレ「貴方ならどんな演出をします?」と聞かれて答えるシーンが好き。
短いショートフィルムなんですが、いきなり浜辺で新郎が新婦のドレスを脱がしてまぐわり始める!そして二人が去ったあとで、脱ぎ捨てられたドレスを見て新婦の母親が「新婦は海に身投げした!」と誤解して泣き崩れる。母親を慰めて撮影隊は去っていく・・・という感じの内容。

けっこう奇抜な発想の作品で、良いなーと思いましたね。

それからもう一つ、新聞記事で死亡したと報じられていた主人公とは別の監督が実は生きていた!というのが発覚してからのシーンが面白い。
その監督は実は自分で死んだという嘘情報を流して、賞レースを勝とうとしていたんです。

「死んだ監督の作品だから」という理由で票が集まり、実際に受賞してしまう。狙い通りになったはずなのに、その監督は逆に絶望してしまう。生きているままで評価されたいですよね、そりゃね。という気持ちがすごく切なくて、彼の熱弁を聞いていたら目頭が熱くなってしまいました。

まとめ

イタリア映画だなぁ。って感じしますね。そんなに驚くほど面白い!って感じではないけども、おそろしくつまらない!とも思わないし難しい。

人に勧めるか?と聞かれたら、多分勧めません(笑)

それでもイタリア映画が好きな人は一度観てみるといいかも。シチリアという場所は、本当に美しいですしね。

 

 


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画像引用元:映画.com

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スマホの中を見せる秘密暴露ゲーム!映画『おとなの事情』ネタバレ&感想

スマホの中に、人に言えない秘密はありますか?

スマホの中身を見せ合おうゲーム!するよ!!みたいなあらすじに「なんてアホな事を…」と思いつつも、秘密が暴かれてワチャワチャするコメディなんて楽しそうじゃない!!と釣られて借りてみました。

レンタルだったのでパンフなどはなーし。

出演陣で特に知ってる!という人はいなかったんですが、『人生、ここにあり!』のジュゼッペ・バッティストンが出演しています!

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】Perfetti sconosciuti
【制作国】イタリア
【監督】パオロ・ジェノベーゼ
【脚本】フィリッポ・ボローニャ、パオロ・コステラ、パオロ・ジェノベーゼ、パオラ・マミーニ、ロランド・ラベッロ
【製作】マルコ・ベラルディ
【撮影】ファブリッツィオ・ルッキ
【編集】コンスエロ・カトゥッチ
【音楽】マウリツィオ・フィラルド
【出演([]内は役名)】

  • ジュゼッペ・バッティストン[ペッペ]
  • アンナ・フォリエッタ[カルロッタ]
  • マルコ・ジャリ―二[ロッコ]
  • エドアルド・レオ[コジモ]
  • バレリオ・マスタンドレア[レレ]
  • アルバ・ロルバケル[ビアンカ]
  • カシア・スムトゥアニク[エバ]

【公開日(日本)】2017年3月18日
【上映時間】96分
【配給】アンプラグド
【映倫区分】G
【IMDB】7.8/10.0  (およそ30,900人の評価)

【あらすじ】

新婚カップルや娘の反抗期に悩む夫婦、倦怠期を迎えた2人など、食事会に集まった7人の大人たちが、「メールが届いたら全員の目の前で開くこと」「かかってきた電話にはスピーカーに切り替えて話すこと」というルールを設定し、「信頼度確認ゲーム」を開始する。ゲームが進むにつれ、夫婦間のもめ事や家庭の問題、仕事や性格についての悩みなど、7人の本当の姿が次々と露呈していく。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレしていくよ!)】

☆3.6/5.0

こ、これは・・・!コメディの皮をかぶった恐怖さえ感じる人間ドラマ!!!!!!

笑える場面も確かにあるっちゃあるんですけど、個々の隠し持っていた秘密とやらが「段々洒落にならなくなってくる」んです(笑)

イタリア映画かー。先にそれに気付けば良かった

ちびぞうの個人的見解なんですけども、イタリアの映画というのは「笑いを誘っといてドスンと突き落としてくる映画」が多い。

冒頭に書いた『人生、ここにあり!』もそうですが『これが私の人生設計』『神様の思し召し』なども同じような雰囲気のイタリア映画ですね。なんというか、前触れもなく平気な顔で突然重い展開にしてくるんです。その落差というか、「これから重くなりますよ」という雰囲気がない分、腹に来ますね。

先にイタリア映画って事が頭に入っていれば、おおよその雰囲気もつかめたかもしれません。

そう、つまりはそういう感じの映画だったんです(笑)

イタリア映画『神様の思し召し』感想!人を変えるのは神ではなく”人”。

おおまかな流れ!

  • ビアンカとコジモ(夫婦)
  • エヴァとロッコ(夫婦)
  • カルロッタとレレ(夫婦)
  • 独身の男ペッペ

最初は、仕事の話や、豊胸手術の話だったのが、段々雲行きがあやしくなってくる。

レレという男が、若い女から毎晩10時に送られてくるエロ写真を誤魔化すために、唯一独身男のペッペに「お前と俺は携帯が同じだから交換してくれ」と提案する。

友達のためと渋々了承したペッペ。レレへ送られてきた写真をみんながペッペ宛と思い込み見て爆笑したあと、今度はペッペ宛に届いたメールが物議を醸しだす!!

なんと、ペッペは最近ゲイだという自分に迷っており、みんなに彼女がいる、と伝えていた相手が実は男だった…。その結果、ペッペの携帯に届いたゲイの恋人からのメッセージがレレ宛だということになり、レレの奥さん、そして友達も唖然・・・。

ここからが阿鼻叫喚の始まり。

それぞれ、出会い系だったり、旦那の母親を施設に入れようとしていたりと色々暴かれていくんですが、一番ヤバいのは、コジモという男の元にかかってきた電話

なんとコジモは職場の女と浮気をしており、その女から「どうしよう、妊娠しちゃった…」という内容の電話がかかってくるのだ!!!!妻のビアンカはほぼ発狂状態。かと思えば夫婦仲間だったはずのエヴァも「あんた最低よ」とコジモをこっそりビンタ。そして着けていたピアスをコジモに帰す。

そう、なんとコジモは夫婦で友達だったエヴァとも不倫していたのだ…!!

ゲスいーーーーゲスマン選手権があったら優勝間違いなし。

まぁそんな感じで地獄絵図になったあと、ペッペが素直に「ゲイだったのはレレではなく自分。だけどそれを打ち明けるだけの価値が君たちにないのが分かった(台詞うろ覚え)」みたいに言う。

ラストでは、飛び出していったビアンカを追え!と言われてコジモが追いかけていく・・・すると、何故か平和そうに建物から出てくるビアンカとコジモの二人のシーンに。そして、平和そうに「今夜も楽しかったよ」と解散する7人の姿が。

どういうこと?と思っていると、家に残ったロッコとエヴァの会話が。

「どうしてあのゲームに反対したの?」

「携帯はブラックボックスだ。見てもろくなことにならないのは分かり切ってる」

そう、ここで小さなどんでん返し。

つまり本編の地獄絵図は「もしこのゲームが実際に行われていたらどうなるか?」というifを見せたものだったんです!!!!!!

そして、それぞれの持った嘘がそのままに、解散して映画は終了。

脚本がよくできてる

この、最後の小さなどんでん返しが面白い。

こんな地獄絵図になって関係が破綻するってだけでは単純ですが、「こうはならなかった」という現実があって、しかし観客は全員の秘密を全て知っている

そうすると、彼らのついている嘘も全て見えてくるし、そもそも人間関係ってすごく恐ろしくね??という気持ちになってくるんです。

これはもう、ホラーの域。

やられたー…という後味の悪さ、すごい。

個人的には、ペッペがレレと携帯を交換したことによって、「友達がゲイだった、旦那がゲイだった」という場合のみんなの真のリアクションを見ることが出来たペッペが「君たちに話す価値なかったよ」みたいに言うシーンがすごく深かったです。

ペッペは他のみんなとは少し距離があるキャラクターなので、ペッペがゲイだという事を知らされた場合、きっとみんなはその場では「にこやかに受け入れる」という選択をしつつも、裏で色々と悪口を言ったでしょう。(ペッペが来る前に、ペッペの元カノについてみんなが噂をするシーンから、「変わり者ペッペは話題のネタになる」感じが見て取れますし、ペッペだけはサッカーに誘われない)

もはや友情すら嘘、ゲイというマイノリティに対する偽善も見えてきて、最悪なんです本当に(笑)

いやー、上手だった。

コジモの浮気が発覚したあと、真っ赤なルージュを塗るビアンカのシーンが印象的。

まとめ

どこがコメディなの!?と最後はなること間違いなし。

笑えるシーンもなくはないですけどね(笑)どちらかと言えば恐怖だったり、これホラーじゃんと思う人の方が多いかもしれない。

ワンシチュエーションものなのでずっと同じ家の中での会話劇になります。そういうのが好きな人にはオススメ。

ちびぞうが去年のクリスマス時期にアップした、「絶対に恋人を観てはいけない映画」の中にエントリーできる、そんな作品でした(笑)

絶対に【恋人と観てはいけない映画8選!】気まずい。

 

 


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イタリア映画『神様の思し召し』感想!人を変えるのは神ではなく”人”。

天才だが傲慢なエリート外科医と、ムショ帰りだが大人気のカリスマ神父。住む世界の違うふたりに起きた、生涯最高の奇跡とは―――?

2015年の第28回東京国際映画祭で「観客賞」の栄光に輝いた、イタリア発のハートフル(ブラック)コメディ!

パンフはこんな感じ。

ミニシアター系の映画はとにかくパンフがオシャレなんです。このシンプルさ!素敵ですね^^

↑映画の名場面たち。全22ページで税抜き667円。

俳優紹介やコラムの他に、「教えて!クセニアおばさん~『神様の思し召し』豆知識~」と題したページがあって、主人公の家で家政婦をしているクセニアおばさんが劇中で出て来たキリスト教ネタの解説をしているページが興味深かったです(笑)

例えば、主人公の名前「トンマーゾ」について。

・トンマーゾという外科医

「トンマーゾという名は偶然ではないの。イタリア語の「トンマーゾ」は、キリストの12使途のひとり”トマス”で、最も有名な逸話は、”トマスの不信”だもの。彼は、弟子のくせに磔刑で死んだイエスの復活がどうしても信じられず、「その脇腹に指を入れるまでは信じない」とまで言う。蘇ったイエスに促されて、その通りにしてはっとする。画家・カラヴァッジョの「トマスの不信」なんてトンマーゾそっくり。中年男の不信という深刻なテーマを軽妙な笑いで包んだ名作なの。」(公式パンフレットより抜粋)

なるほどなるほど、となりますね。そしてこの解説が映画の内容そのものを表しているようで面白いです(笑)