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イランの少女がラップで叫ぶ!ドキュメンタリー映画『ソニータ』ネタバレ&感想

沈黙のかわりに私は叫ぶ。

どうもちびぞうです!以前もレポートしました、ぎふアジア映画祭で鑑賞しました。

タリバンを逃れて亡命中の少女がラッパーを目指す!というドキュメンタリー映画。

『第40回/ぎふアジア映画祭』行って来たよレポ!

元々、イラン映画が好きなのもありましたが最近はちびぞうの中でドキュメンタリー映画がだいぶ熱いので、こちらもかなり期待して鑑賞しました!

公式サイトはこちら

残念ながらパンフはなし。欲しかったなぁ。

【映画情報】

【原題】Sonita
【制作国】スイス/ドイツ/イラン
【監督】ロクサレ・ガエム・マガミ
【製作】アリン・シュミット、カースティン・クリーク、ロクサレ・ガエム・マガミ
【製作総指揮】ゲルト・ハーク
【編集】ルネ・シュバイツァー
【音楽】ソニータ・アリダザー、セパンダマズ・エラヒ・シラジ
【出演([]内は役名)】

  • ソニータ・アリダザー
  • ロクサレ・ガエム・マガミ

【公開日(日本)】2017年10月21日
【上映時間】91分
【配給】ユナイテッドピープル
【IMDB】7.7/10.0  (およそ700人の評価)

【あらすじ】

アフガニスタンのタリバンから逃れてきた難民のソニータ。18歳になる彼女はパスポートも滞在許可証もなく、不法移民として施設でカウンセリングや将来のアドバイスを受けている。児童婚の伝統が残るアフガニスタンに住む彼女の母親は、ソニータを見ず知らずの男性に嫁がせようと、彼女を迎えにイランへやって来る。9000ドル(約100万円)払ってくれる結婚相手が見つかったので、嫁ぐようにと母親から促されるソニータが強制婚を逃れるために起こした行動、それはラップをすることだった。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレもするよ!)】

☆3.9/5.0

これは当たりのドキュメンタリー!!!

面白かったです!!!!泣いた!!!

オープニングはたくさんの子どもたちに自作のラップを聞かせるソニータのシーンから始まります。力強い歌声と、メッセージ性の強い歌詞が印象に残ります。

イランに亡命し、子どもを保護する支援施設で支援を受けながら生活するソニータ。彼女が16歳になるとアフガニスタンに残った母親から「兄の結納金を用意するために自分が用意した男性と結婚しろ」と手紙が。

幼い娘を財産として取引する結婚という文化

古くからある悪習で、アフガニスタンには18歳未満の幼い娘を無理やり結婚させる「児童結婚」や「強制結婚」というものがあるらしい。そして親は相手のおっさん達から結納金としてお金をもらう。アフガンの幼い少女たちは、まるで売り物のように、自分の意思とは関係なく親が決めた相手と血痕させられてしまう。

その背景には、発展途上国の貧困がある。

詳しく記事にしているブログがありましたので参照させて頂きますね↓↓↓

アフガニスタン:今もなお強制結婚の犠牲になる少女たち

今作のドキュメンタリーの主人公であるソニータも母親から結婚を強いる手紙をもらい苦しむ少女の一人。
彼女は自由のために、そして同じように苦しむ少女たちのために自分の想いをラップにして歌う事を決めます。

しかし、それを許さない母親!帰ってこい!と求めます。
兄の結納金が必要だからソニータを結婚させたいらしく、それを延期させたいなら多額のお金を渡せと養護施設に要求してきます(ほんとなんて親なんだ)
しかし、養護施設にそんなお金を要求することも、金銭的支援をするようなことも出来ません。

監督すらも巻き込まれるドキュメンタリー

ここで、ソニータを可哀想に思った今作のロクサレ・ガエム・マガミ監督が、彼女のために資金を出すかどうかという葛藤をし始めます。

ここは凄く難しい問題だな…と思いましたね。助けられるなら助けたいじゃないですか、目の前の少女を。しかし彼女が撮っているのはドキュメンタリー映画。ドキュメンタリーというのはあるがままを撮るべきであって、監督が己の資金を出して主人公の運命を変えるなんて行動はすべきではない。

人間としての自分と、監督としての自分の間で監督も悩んでいました。

しかし、ソニータの才能に気付いた監督は彼女のために資金援助することを決意。

ついでに彼女のMVも撮ります。
そしてその映像が動画投稿サイトにアップされると見る間に再生数が伸びていく!

そしてソニータは、監督の助けを得て、ミュージシャンとしての一歩を歩みだす。

ここの監督の葛藤は、結果「手出ししてしまう」ということになるのですが、しかしこの監督想いや悩む気持ち、ソニータのための苦しみ、そしてその結果の選択そのものも”ドキュメンタリー”だなあ。と感じました。

例えプロが手出ししたとしても、ソニータ自身に力がなければ注目されなかったでしょうしね。

撮る側だった監督が、物語の一部となって動き出すところも、今作の大きな魅力に感じました。

ちなみに以下がソニータが歌う動画です。英語の歌詞がついています。

タイトルは『売られる花嫁』

この目力がすごい。この曲は劇中フルで(日本語歌詞付きで)聴くことができます。ちびぞうはもう号泣でした。

イランで女性は歌えない

いまだ根強い男尊女卑の残るイラン。宗教上の理由で女性は歌手になることができません(人前で歌うことも出来ない)

ここでもまたソニータは苦戦を強いられます!歌で表現したいのに、動画もすごく伸びているのに、歌手として歌うことができない!!

しかし、動画を観たアメリカの非営利団体ストロングハートの人がソニータをアメリカの音楽学校に入学させたいと連絡をしてくれる!!!奨学金も出してもらえるという大盤振る舞い、ソニータにとっては夢を叶える大チャンス!!

最後に立ちはだかる母親の壁

ラストに立ちはだかるのは、お金で娘の結婚延期を承諾した母親の許しを得るという壁。

実家に帰った時、ソニータのラップを家族が聞くシーンはカメラも入っていたためかかなりアットホームというか・・・みんな楽しそうにソニータの歌を聞いていたんですけどね・・・。やはりそう簡単には理解してはもらえないようで。

ソニータは母親に嘘をつき、こっそり出入国のため謄本を取り、渡米。
そしてアメリカの学校から事実を報告・・・母親には電話を切られてしまい、話も出来ない状態になってしまいました。しかし、ソニータは見事アメリカの学校に入学することに成功。

映画の最後には入学先の学校で先輩たちの前で歌を披露し拍手喝さいを浴びるというシーンで終わっていました。

まとめ

シンデレラストーリーのような、ハッピーエンド。

しかし彼女の家族の事を考えると、あまり明るい気持ちにもなりきれません。

この現代日本でのほほんと暮らしているちびぞうにとって、こんな世界があるのかと衝撃を受けました。そして、悲惨な世界に生きている少女たちの凄さにも感銘を受けました。

彼女の眼の力は本当にすごい。こうして記事で読むだけでは感じられない少女たちの現実をぜひ、映画本編で知って欲しいと思います。

 

 

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画像引用元:映画.com

 

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映画作りを禁止された監督の『人生タクシー』ネタバレ&感想

”上映可能かどうかはイスラム文化指導賞省の判断による
願い虚しく本作に上映許可は出なかった
本作がここにあるのは――支援者のおかげである”

配給会社さま、この映画を日本に届けてくれてありがとう。

ちびぞうが敬愛する映画監督の中に小津安二郎監督がいて、その小津監督の影響を受けたイランのアッバス・キアロスタミ監督がいて、彼の作品も大好きで。

そして2016年に亡くなってしまったキアロスタミ監督の愛弟子であったという、今作の監督ジャファール・パナヒさん。彼の存在は今作で初めて知りましたが、なんというか・・・胸が苦しくなる作品でした。

というのも、規制が厳しいイランで反政府的な映画を撮ったとして捕まった事があるパナヒ監督は、以降20年間、映画を撮る事を国から禁じられてしまっているのです。

保釈には映画人からの訴えも多くあったようで、こんな記事もありました。

今作は、映画作りを禁止された監督がタクシー運転手に扮し、お客さんである街中の人々を隠しカメラで撮影する・・・という体の(おそらく)モキュメンタリー映画となっています。

【映画情報】

【原題】Taxi
【制作国】イラン
【監督/脚本】ジャファール・パナヒ
【出演([]内は役名)】

  • ジャファール・パナヒ[タクシー運転手]

【公開日(日本)】2017年4月15日
【上映時間】82分
【配給】シンカ
【映倫区分】G
【IMDB】7.4/10.0  (およそ10,300人の評価)

【あらすじ】

ダッシュボードに置かれたカメラには、強盗と教師、海賊版レンタルビデオ業者、交通事故にあった夫婦、映画監督志望の学生、政府から停職処分を受けた弁護士など、個性豊かな乗客たちの悲喜こもごもが映し出され、彼らの人生を通してイラン社会の核心へ迫っていく。【引用元:映画.com

【感想】

☆3.5/5.0

正直、これを映画として普通に鑑賞するというのは難しい・・・と思います。

ちびぞうはイランの現状も監督の置かれた状況も何も知らずに観たので、この映画がどれほどの危険を冒して撮られた作品なのかという事を本当の意味で理解していないと思うから。


それでも感想は書かねばならぬ!(シヴァガミ風)

実際に勝手にお客さんを撮影しているのか、お客さんという体の役者と会話をしているのかちょっと分からない部分もあるんですが(多分完成度的に後者、つまりはモキュメンタリー)、イランのテヘランで暮らす人々の生活・価値観・死生観など垣間見ることができる貴重な作品だと思います。

最初に乗ってきた男が「タイヤ泥棒より軽い暴力沙汰の事件で死刑になった人」の話をしていて、タイヤ泥棒も絞首刑にすべきだ、と言ったのに対し乗り合わせた女性教師が「盗人にも事情があるかもしれない、犯罪は(周囲の環境も影響して)作られる、問題の根源を知るのが必要」と反論するシーンでも、イスラム法の怖さがチラ見せされていました。

”いつまでも問題が解決しないとしたら、法の適用を間違っている”だそうですよ。

 

映画業界への縛りの厳しさは、海賊版DVDを売る店員の「こうでもしないと外国映画を観られないんです・・・」という台詞や、学校で映画を撮る課題を与えられた監督の姪っ子が語る撮影のルール「女性はスカーフを着用し、男女の触れ合いは無し。善人の男性にはネクタイ(白人社会の象徴)を付けず、イラン人の名前ではなく聖人の名前を使うこと、俗悪なリアリズムに触れない事」にも現れていて切なかった。

監督が「僕の友人はイラン名でネクタイをしているし、善人か悪人かどっちなんだ?」と聞くと姪っ子が「これは映画の中のルールだもの」と言い、「彼を映画に出演させるにはどうしたらいい?」という問いに「(彼の)全てを変える!」と答えていたやりとりが非常に印象的。

(日本は本当に、色んな国の色んな作品を自分で選んで観れる、作品として撮影し発表も出来る、素晴らしい国だ)

この監督の姪っ子という存在が、巧みでしたね。
彼女は映画の課題のためにテヘランの街並みをビデオカメラで撮影しているんですが、その時偶然、結婚式を終えて車に乗り込む新郎が落としたお金をゴミ拾いの男の子がネコババする瞬間をカメラに収める。そしてその男の子を呼び寄せて咎めるんです。お金を返すところを撮影したいと、返してきてと説得する女の子とゴミ拾いの男の子の

「人の為に自分の欲を捨てるところが見たいの」
「ヒーローになるよりお父さんにお金を渡したい」

というやり取りも切なくて、現実に目を向けず自分の信じる正論や理屈ばかりに目を向けている女の子が小さな政府を表しているようでした。

最後に乗車したバラを持った女性とのやりとりは「ようやく釈放されても、外の世界は巨大な独房よ」という台詞が印象的。しかしここの場面はちょっとさすがにイラン情勢の背景を知っておかないと難しい、です。

そして、ダッシュボードに一輪のバラを残して車から去っていく監督と姪っ子の後姿を映すラストシーン。ここの長回しはアッバス・キアロスタミ監督『オリーブの林をぬけて』のラストを思い出す演出でグッと来ました。

この一輪のバラは映画にささげられたものだろう、と解釈している方がいましたが、ちびぞうは当時ガンを患っていたキアロスタミ監督に捧げたバラでもあるのかなぁと感じましたね。

ラストの長回しの中でこのタクシーも強盗に合うというオチも良かった。
冒頭に書いた一文がクレジットの前に出て来て映画が終わるんですが、本当に臓腑にドスンとくる重みのある文でした。

 

この監督が本当に好きな物を好きなように撮った映画が、いつか観れたらいいなぁ。

余談。

そういえば、ビデオ屋の店員が海賊版DVDを見せながら「貴重なクロサワ映画もありますよ」と言っていてビックリしたんですけど、やっぱり黒澤監督は凄いんだなぁ・・・世界に名を轟かせている。(しかしそこは小津監督じゃないのねという静かなツッコミ)

 

 


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画像引用元:映画.com