「愛に、打たれる。」
どうもこんにちはこんばんは、ちびぞうです。
エロもグロもゴアもナンセンスもカルトも鬱映画も大体ヤバそうなジャンルは受け入れられるちびぞうではあるのですが、数少ない「鬱過ぎて辛くて観るのをやめた」映画の一つが今作品。
高校時代だったかな・・・観たの・・・。クリント・イーストウッド初体験にして枯れに対する苦手イメージを植え付けられてしまったんですよね。そもそも、おそらくもっと単純なボクシングのサクセスストーリーだと思い込んで観たところがあったのかもしれない。それがいけなかったのかもしれない。
でも後半の展開なんて観てみないことにはわかんないじゃないですかぁああああああああ
もう何年越しになるか分からないですが、知人に勧められて観ました。
ようやく、この映画のラストと向き合うことができます。
【映画情報】
【原題】Million Dollar Baby
【制作国】アメリカ
【監督】クリント・イーストウッド
【脚本】ポール・ハギス
【原作】F・X・トゥール(ジェリー・ボイド)『Rope Burns:Stories From the Corner』
【製作】クリント・イーストウッド、ポール・ハギス、トム・ローゼンバーグ、アルバート・S・ラディ
【撮影】トム・スターン
【美術】ヘンリー・バムステッド
【編集】ジョエル・コックス
【音楽】クリント・イーストウッド
【出演([]内は役名)】
- クリント・イーストウッド[フランキー・ダン]
- ヒラリー・スワンク[マギー・フィッツジェラルド]
- モーガン・フリーマン[エディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス]
- アンソニー・マッキー[ショーレル・ベリー]
- ジェイ・バルチェル[デンジャー]
- マイク・コルター[ビッグ・ウィリー]
- ブライアン・F・オバーン[ホーヴァク神父]
- マーゴ・マーティンデイル[アーリーン・フィッツジェラルド]
- ネッド・アイゼンバーグ[サリー・メンドーサ]
- ブルース・マックビッティ[ミッキー・マック]
【公開日(日本)】2005年5月28日
【上映時間】133分
【配給】 ムービーアイ、松竹
【映倫区分】 R15+
【IMDB】8.1/10.0 (およそ584,000人の評価)
【あらすじ】
ロサンゼルスの寂れたボクシングジムの門を叩いた田舎育ちのマギー。ジムのオーナー兼トレーナーのフランキーは彼女を拒んでいたが、彼女の真剣さに打たれ、彼女のトレーナーとなる。お互いに父娘の関係をなくしている2人は、激しいトレーニングの中で人間的に歩み寄っていく。【引用元:映画.com】
【感想(ネタバレするよ!)】
☆3.5/5.0
やはり賛否両論の作品のようですね!!!!!
序盤と後半のストーリーの展開の意外さ、そして「尊厳死」や「安楽死」といったテーマについて政治・宗教的な観念から物議をかもしていたようです。
おおまかなストーリー
舞台はロサンゼルスのとある寂れたボクシングジム。有能な止血係からトレーナーとなり、ジムを経営していたフランキー・ダン(クリント・イーストウッド)の元へ、家族から愛を注がれず育った貧しいトレーラー暮らしのマギー・フィッツジェラルドが訪れる。
彼女はプロボクサーとして成功するためにダンにトレーナーになって欲しいと願うが、彼女が女性であることや32歳というボクサーとしては若くないということを理由にダンは断る。
しかしジムの雑用係でありダンの旧友でもある元ボクサーのエディが彼女の素質を見抜いたことや、毎日練習に励む彼女の努力に絆されてダンは彼女のトレーナーとなる。
マギーはダンに指導されどんどん強くなり、相手のトレーナーに金を渡さないと試合相手が見つからないほどに。イギリス・チャンピオンとのタイトルマッチを経ても勝ち続けるマギー。ダンはついにウェルター級のWBA女子チャンピオン、ビリー(青い熊という異名を持つ)との戦いを決める。しかし彼女は反則技を使う危険なボクサーとして有名だった。
試合はマギーが優勢だったが、試合後にビリーが放った反則パンチにより転倒、首を骨折したマギーは首から下が一切動かせない全身不随となってしまう。
親子のような絆を育んできたダンとマギー。ダンはマギーの本当の家族よりよっぽど彼女を深く愛していた。
自分が設定した試合でこうなってしまったことを深く後悔し自己嫌悪するダン。全身不随となった彼女を励ますが、彼女は回復の見込みのない自分の状態に絶望し、自殺未遂を繰り返すように。そして最終的にはダンに自分を安楽死させてくれと頼む。
最初はそんなことは出来ないと拒絶したダンだったが、悩んだ末、彼女にアドレナリンを過剰投与し姿を消す。
彼のジムでは旧友エディがダンの帰りを待つが、彼は帰ってこなかった。
親子の愛の物語
「安楽死」や「尊厳死」の方が重いので目が行きがちだし、賛否を呼ぶのは仕方ないですよね。
でもそのテーマって結局は人の考え方に左右されるし、正しい正解なんてないじゃないですか。アメリカでも患者が自分の意思で治療を打ち切って欲しいと願えば病院側はそれを聞く義務があるようですし、逆にそう望んでいる患者に延命措置を強行すればそれが患者を苦しめていると判断されることもあるようで。
ちびぞうは、もちろんその時の状況にもよりけりですが本人の意思が全てであり、尊厳死や安楽死自体はタブーだと感じていないので、ここのテーマに多くの人の目が行きがちなのは少し寂しいかなと思いましたね。アメリカはキリスト教の影響がすごく大きいので仕方のない部分なのかもしれませんが。
実際はこの作品のもっと大きなテーマは「血縁のない家族」がいかにして作られていくかの過程であったり、彼らの絆の重さを感じるということにあるとちびぞうは感じています。
ダンの性格や、それがもたらしてきた今までの人生、娘との関係、その全てがラストシーンに帰結しており、大きな愛を表現しています。ちびぞうは単純にその家族愛の形に胸が熱くなりました!!
「モ・クシュラ」という言葉
wikiさんには
「 モ・クシュラ」は「おまえは私の鼓動だ(My pulse)」を意味するゲール語の親愛表現であり、『A chúisle mo chroí』(ああ、私の心臓の鼓動よ)の短縮形である。
とありまして、つまりは「お前は私の全てだ」という最上級の愛を伝える言葉なんですねぇ~~~~。
ほんと、イーストウッドさんはこういうとこある!ロマンチックというか!ダンディ極めてるというか!ちびぞうは彼の映画は数えるほどしか観た事がありませんが、なんとなく彼のナルシズムとかロマンチストなところを感じていましてね。
今回のこのモクシュラという言葉をマギーの異名にしたり、安楽死させる直前まで意味を教えなかったりと、かなりロマンチック…。しかしかなりジーンとくる演出なんですよそれが!!
この言葉、言いたくなりますね。無駄に言いたくなります。素敵です。
ダンという愛情表現が苦手で不器用な男がゲール語で愛を…うーんずるい。あざとさすら感じるけど感動しちゃう。悔しい。
助演のモーガン・フリーマンも素晴らしい
元ボクサーで夢破れたエディの役をモーガン・フリーマンが演じています。
彼は37歳まで戦い、最後の試合で片目の視力を失ってしまいますが、その試合前に止められなかったことをダンはずっと悔やんでいました。
このエディという存在がまたダンの過去への後悔や自己嫌悪を後押しする良いキャラクターなんですよね。ラストシーンのダンの選択への伏線の一つにもなっている。
そしてエディ自身が夢を追う事を諦めていないという希望のある対照的なキャラで、彼がジムで見出した若者が一度は夢破れ出ていくものの、後々戻ってくるシーンとか最高です。地味に感動するしちびぞうのすごく好きな場面です。
まとめ
昔は、あまりにも意外な展開でマギーの状況がどんどん悪くなってくるのがつらく、最後まで観ることが出来ずに途中で止めてしまいましたが。
今回はきちんと最後まで観ることができました!これでまた苦手を一つ克服!
というか、ちゃんと観るべきだったのかなぁ、でもどうなんだろうなぁ。過去のちびぞうは、結末を受け入れられなかったかもしれませんし、また違った感想を持ったかもしれませんね。
それはそれで面白いなぁ。人は時間を経て変化していくものですし、過去に良くなかったと思う作品でも、しばらくしてまた見返してみるというのも面白いですね。感想が変化することで自分の変化にも気付けるかもしれないし。
今のちびぞうは今作をとてもいい映画・・・とは言いにくいんですけども、心に残る名作だし面白いなと感じました。前評判とかで観るのが怖くなっている人とかにもぜひ、一度観てもらいたい作品です!