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ダンケルクの実話映画を作れ!映画『人生はシネマティック!』ネタバレ&感想

「我々で、客を泣きながら帰らせてやろう」

ほんっとうにキノフィルムズさんは気になる映画ばかりを配給されている・・・!

この映画は確か、地元の映画館で『否定と肯定』を観た時に予告編でやっていた作品なんですよね。気にしつつもいつの間にか終わっていたので、レンタルにて鑑賞しました。

ホロコーストの有無を法廷で裁く!映画『否定と肯定』ネタバレ&感想

監督は『17歳の肖像』『ワン・デイ 23年のラブストーリー』のロネ・シェルフィグ。女性の監督です。

ちびぞうの大好きなビル・ナイが助演として出ています!!楽しみ!!

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】Their Finest
【制作国】イギリス
【監督】ロネ・シェルフィグ
【脚本】ギャビー・チャッペ
【原作】リッサ・エバンス
【製作】スティーブン・ウーリー、アマンダ・ポージー、フィノラ・ドワイヤー、エリザベス・カールセン
【製作総指揮】クリスティーン・ランガン、エド・ウェザレッド、ロバート・ノリス、アイバン・ダンリービー、トーステン・シューマッハー、ピーター・ワトソン、ジギー・カマサ
【撮影】セバスチャン・ブレンコー
【美術】アリス・ノーミントン
【衣装】シャーロット・ウォルター
【編集】ルシア・ズケッティ
【音楽】レイチェル・ポートマン
【音楽監修】ローラ・カッツ
【出演([]内は役名)】

  • ジェマ・アータートン[カトリン・コール]
  • サム・クラフリン[トム・バックリー]
  • ビル・ナイ[アンブローズ・ヒリアード]
  • ジャック・ヒューストン[エリス・コール]
  • ヘレン・マックロリー[ソフィー・スミス]
  • ポール・リッター[レイモンド・パーフィット]
  • レイチェル・スターリング[フィル・ムーア]
  • リチャード・E・グラント[ロジャー・スウェイン]
  • エディ・マーサン[サミー・スミス]
  • ジェレミー・アイアンズ[陸軍長官]
  • ジェイク・レイシー[カート・ランドベック]

【公開日(日本)】2017年11月11日
【上映時間】117分
【配給】キノフィルムズ
【映倫区分】PG12
【IMDB】6.8/10.0  (およそ13,015人の評価)

【あらすじ】

1940年のロンドンでカトリンはコピーライターの秘書として働いていた。人手不足のため、彼女が代わりに書いたコピーが情報省映画局の特別顧問バックリーの目に留まり、ダンケルクでドイツ軍の包囲から兵士を救出した姉妹の感動秘話を映画化する脚本チームに加わることとなった。戦争で疲弊した国民を勇気づけるための映画だったが、製作が開始され、ベテラン俳優のわがまま、政府と軍による検閲や横やりなどトラブルが続出。そのたびにカトリンたちの脚本は二転三転してしまう。なんとか撮影は大詰めを迎えるが、最後に最大級のトラブルが待ち受けていた。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレするよ!)】

☆3.7/5.0

面白かった!良かった!さすがのキノフィルムズさんの安定感!(笑)

映画好きな人なら、古い時代の映画作りの方法などが見れてとっても興味深いと思います!

物語も、タイトル通りシネマティック(映画のような信じられないような事が次々に起こる)。
その中にも笑える要素がたくさん散りばめられていて、かつ理不尽で残酷で、まるで人生そのものを映し出したような映画。

「ダンケルクでの戦いで兵士を救ったとされる双子の姉妹の映画を作る」という軸があるので、ノーラン監督の『ダンケルク』を観てから鑑賞するとより理解が深まるかもしれませんね!世界観に没頭しやすくなるというか。

絶体絶命を生き残れ。映画『ダンケルク』感想

主人公の女性は男性より給料が半分以下だったり、女性にしか書けないというスロップ(映画で女性同士がする会話をそう呼んでいた)を任されるんですけど、そこらへんサラッとくどくない程度に女性差別の実態みたいなものも描かれていましたね。

おおまかなストーリー

あらすじに補足するような感じで核心のネタバレをしていきます!(笑)

まず最初に主人公のカトリン(ジェマ・アータートン)が双子の姉妹に会いに行くと、彼女たちはエンジンのトラブルで船が出せず、ダンケルクの兵士を救ってはいなかった・・・(むしろ動けなくなっていたところを帰還する船に牽引してもらった)ということが真実であったと判明します。しかし双子はその事実が恥ずかしく、周りが騒ぐような美談だったと嘘をついていたらしい。

しかしカトリンはお金をもらうために仕事を続けねばならず、この事実を隠して映画製作をスタート。

空襲も来るなかで脚本を書くカトリン、老年の俳優は我儘放題だし、一緒に暮らしている恋人は浮気をするしで色々と大変ななか、同じ脚本チームのトム(サム・フラクリン)と良い感じになっていくカトリン。

映画製作の途中で、船はダンケルクに着かなかった、ということが上に発覚、製作中止の危機に立たされる。
しかしトムが、「たった1つの実話に基づいてなくていい、ダンケルクの兵士が民間の船に助けられ数十万人が帰還した、そこには100の実話がある。その中の一つでも映画に入っていれば良いんだ」的なけっこう強引な説得で情報省の人を納得させ、映画作りを続行。

他の映画でもよく見る「実話に基づくストーリー」という触れ込みの一体何割が真実なんだろうと若干疑いたくなる場面でした・・・(笑)

脚本は完成するものの、ラストシーンにパンチが足りないと書き直しを要求される。
(ここの、アメリカ人を馬鹿にするわけではないがと前振りをしつつ、「奴らは爆破、衝突、角を勢いよく曲がる救急車みたいなものが好きなんだ、彼らの好む展開にしろ」と言われるシーンは笑ってしまいました。国民性で求めるストーリーって違うんだなぁ)

ラストシーンの執筆に行き詰まるトム。代わりにカトリンが脚本を書き上げ、あとは撮影を終わらせるのみ・・・二人の恋愛も上手くいき、これからラブラブするぞ!というそんな時スタジオが空爆に襲われ、目の前でトムを亡くしてしまうカトリン。

スタッフに死傷者が出て映画の撮影も停滞、カトリンは映画業界から身を引こうとするも、老年俳優ヒリアード(ビル・ナイ)が説得しにやってくる。

ヒリアードの言葉に心を動かされたカトリンは撮影現場に復帰、公開すれば映画は大成功。
その後もカトリンは映画作りを続けていく。という感じで映画が終わる。

良かったところ!

映画が始まってすぐに”メインの軸になる物語が実際は全然違った!”というのが発覚するのが良い意味で期待を裏切られて好きでした。まずそこで「ここからどうするの!?」と興味を持ち物語に引き込まれますね!

当時の映画(脚本)の作り方?も面白い!例えば

  • ジョニー(最初)
  • 犬→ダンケルク→エンジンの故障→叔父の死
  • 無事に帰還(最後)

こんな感じでいくつかキーワードを出し、話の流れをおおまかに決め、その間を埋めて行くというやり方で作られていました。一人で一から百までやるのではなく、皆で意見を出し合いながら構築するっていうやり方もあるんですね~。

その中で、最初はエンジンの故障だったのに「それだとイギリスの造船技術がちゃんとしていないと思われる」と言われスクリューに何かが挟まって動かなくなる、という筋書きに変更されたり、上で書いたようにアメリカ人の好みに合わせてエンディングが変更されたり、女性は活躍させられないからスクリューは叔父が直すという流れにしようと言われたり、大人の事情ってやつで脚本が作られていくのがよーーーく分かります。映画製作って本当にたいへん・・・

脚本だけでなく、キャスティングにも大人の事情が大きく絡んでいました・・・。
陸軍省の命令でアメリカ人の軍人を起用しろと言われてとても見栄えのする軍人さんを連れて来たのはいいもの、絶望的に演技が下手・・・!!!

観てる側としては笑えるんですけど、作り手としては本当に大変ですよね(笑)

ビル・ナイ最高!

『ラブ・アクチュアリー』の頃から好きな俳優さんの一人、ビル・ナイ。

齢66歳にしてこのカッコよさ・・・なんなの・・・。

彼の演じるヒリアードという役がまた良いんですよ。
無駄にプライドが高くて扱いにくい低迷期に突入した高齢の役者。過去にヒットした1キャラクターの栄光にしがみついていてどこかもの悲しい。自分は主人公のジョニーを演じるものだと思い込んでいて蓋を開けてみれば酔いどれクズな叔父の役。こんなのやれるか!と不満たらたらの彼をカトリンはしっかりと尊厳を尊重しながら懐柔し、やる気にさせる。
するとその実力は本物で、この映画の公開後も演技の仕事がまた入るようになるという。

このヒリアードという役は劇中でしょうもない老いどれ役者、という立ち位置から徐々に変化し、最後はカトリンの父のような役割も担うようになるという重要で味わいの深い役。

彼がやる気になった時に言った「我々で、客を泣きながら帰らせてやろう」という台詞も良かったし、

トムを亡くして映画業界から離れようとするカトリンを説得しに行った時の

「我々のようなもの(老人や女性かな)に仕事が回ってくるのは若い男が戦争で死んでいるから。彼らが死んで得たチャンスを無駄にするのは、死に生を支配されている状態だと思わないか」

うろ覚えなんですけれど、この台詞もすごく良かった・・・。

それから、ビル・ナイの歌声も聴けます!すごく渋カッコいい!!66歳サービスしまくり!!

まとめ

空爆されながらのすごく過酷な環境下での映画製作なんですが、映画自体はとてもコミカルであまり重さがなく、笑えるポイントもたくさんあるし、考えさせられる場所もあるし、

何より強い女性が頑張る姿が観れます!!!

これはぜひ、女性に観てもらいたいですね。

最後に、トムが語っていた台詞でちびぞうがとても心に残ったものがあるのでそちらを紹介して終わりたいと思います。

どうして人は映画を観ると思う?ちゃんとストーリーがあるからだ。悪いことが起きるのも仕組まれているし、それにも意味がある。人生とは違う。

たまにでいいから価値のある映画が作りたい。
―――その人の人生の一時間半を費やせるような。

映画が好きだという事がひしひしと伝わってきます。良い映画でした。

 

 


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画像引用元:映画.com

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な行

元夫から届いた小説の内容とは。映画『ノクターナル・アニマルズ 夜の獣たち』ネタバレ&感想

20年前に別れた夫から送られてきた小説。
それは愛なのか、復讐なのか。

なんだか若干、エロティックサスペンスっぽいタイトルでレンタルしにくいなーって感じがするんですけど、あらすじを見てみると全くそういう系の映画ではないのが分かります(笑)ちびぞうです。なんだかすいません(笑)

えー、主演はスーパーマンの恋人役で有名なエイミー・アダムスと、『プリズナーズ』『ナイトクローラー』などダークな映画に出たら映えまくりな鬱俳優のジェイク・ギレンホール!!(ちびぞうも大好き!!)

監督・脚本を手がけるのは『シングルマン』トム・フォード

別れた旦那から小説が届く…そしてその内容は暴力的なもので…というあらすじに惹かれたのと、ギレンホールさんが好きなので借りてみました(*´∀`*)

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【映画情報】

【原題】Nocturnal Animals
【制作国】アメリカ
【監督/脚本】トム・フォード
【原作】オースティン・ライト「ミステリ原稿」
【製作】トム・フォード、ロバート・サレルノ
【撮影】シーマス・マッガーベイ
【美術】シェーン・バレンティーノ
【衣装】アリアンヌ・フィリップス
【編集】ジョーン・ソーベル
【音楽】アベル・コジェニオウスキ
【出演([]内は役名)】

  • エイミー・アダムス[スーザン・モロー]
  • ジェイク・ギレンホール[トニー・ヘイスティングス/エドワード・シェフィールド]
  • マイケル・シャノン[ボビー・アンディーズ]
  • アーロン・テイラー=ジョンソン[レイ・マーカス]
  • アイラ・フィッシャー[ローラ・ヘイスティングス]
  • エリー・バンバー[インディア・ヘイスティングス]
  • アーミー・ハマー[ハットン・モロー]
  • カール・グルスマン[ルー]
  • ロバート・アラマヨ[ターク]
  • ローラ・リニー[アン・サットン]

【公開日(日本)】2017年11月3日
【上映時間】116分
【配給】ビターズエンド、パルコ
【映倫区分】PG12
【IMDB】7.5/10.0  (およそ180,000人の評価)

【あらすじ】

アートディーラーとして成功を収めているものの、夫との関係がうまくいかないスーザン。ある日、そんな彼女のもとに、元夫のエドワードから謎めいた小説の原稿が送られてくる。原稿を読んだスーザンは、そこに書かれた不穏な物語に次第に不安を覚えていくが……。【引用元:映画.com

【感想(結末についても触れます!)】

☆3.0/5.0

そこまで難解過ぎず、テーマは”復讐”だったり”自分のあるいは恋人の生き方に対する警告”だったりと軽すぎず重すぎず、しかし「あれはこういう意味だったのだろうか」と何度も繰り返し考察できる良作だったと思います。

ちびぞうは普通に復讐の話だと解釈してしまいましたが、そうではない考察をしているこちらのブログがなかなか興味深かったので紹介します。

「ノクターナル・アニマルズ」 ラストが”復讐”ではないとしたら

太った女性たちのヌード展示という衝撃的なオープニングからなんとなく不快さを煽られて、届いた小説のシーンでは理不尽な暴力が繰り広げられなんとなくミヒャエル・ハネケ監督の作品を思わせる感じが好きでした、『複製された男』などでも見られた、ギレンホールさんの一人二役も良かったです!

おおまかなストーリー

ほとんどの場面が、元夫エドワードから送られてきた小説の中身のシーンで、その合間にそれを読んでいるスーザンの場面が挟まれる、という感じです。

小説の内容は、主人公のトニーが夜中に家族と車でどこかへ出かけようと移動しているシーンから始まる。
不穏な運転をする車に絡まれて停車を促され、チンピラたちに娘と妻を奪われて置き去りにされてしまうトニー。警察に通報すると捜査が始まり、後日レイプされて殺された妻と娘の死体が見つかる・・・。
病気で先の短い警察官と一緒に犯人を見つけるも法では裁けず、二人は私刑によって彼らを殺してしまうのだった。という感じ。

この暴力的な内容から、自分の娘の安否を確認したり、まるで自分のことのように小説にハマっていくスーザン。
いつしか彼女は元夫エドワードと再会してみようか、という気持ちになるが、結局彼は現れなかった・・・というシーンで終わります。

散りばめられた考察ポイント

スーザンは「自分の母親のように職業差別はしたくない」と思っていたはずなのに結局、書店員をしながら小説を書くエドワードに愛想をつかせ、金銭的にも成功し地位を築いている新夫を選んでしまいます。

さらに、おそらくエドワードの子どもを身籠っている時に新しい夫と浮気し更にその子どもを中絶してエドワードを傷付けて別れる・・・という非情な最後だったということが分かります。
ここら辺が、エドワードがスーザンに復讐をしたかったんだなーと思わせるポイントですね。

年々、スーザンが母親のようになっていく演出も皮肉が効いていて良かったですね。(最後、小説を読んでエドワードが過去の作品とはまた違った小説の方向性を見出したと知って会いたくなること自体がもう浅はかですもんね)
旦那に選んだイケメンは他の女と浮気しているし、結局自分はアートを自分で創るのではなくディーラーというポジションになっていて夢を叶えていないし、スーザンの人生は「こんなはずではなかった」という感じがヒシヒシと感じられます。
しかし、その状況をエドワードという存在と関わることで少しは上向くのではないか、という他力本願な気持ちで会おうとしている(とちびぞうは感じた)スーザンは、もう自分で人生を切り開くという気持ちもない・・・そんな自分に気付かせてくれるという意味で”警告”の話でもあったのかなと。

小説の中で登場する末期がんの警察が私刑を行うことについても何か意味がありそうなんですけど、それが何を意味しているのかが分からなかったですね・・・。
復讐することへの決意みたいなものかなぁ。どんな手を使ってでも!という。

まとめ

考察ポイントも沢山ありますし、見返せば新たな発見もありそうで、何度観ても楽しめるスルメ映画でもあると思います。

エイミー・アダムスとジェイク・ギレンホールの演技も良いですしね、ミステリが好きな方は一度観てみて、自分なりに考察とかしてみると楽しいかもしれません。

アーティスティックな画面作りも見応えありますよ!!

 

 


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画像引用元:映画.com

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その死体は、悪臭漂う湿地で見つかった。映画『湿地』ネタバレ&感想 

「このミステリーがすごい!」選出。世界的傑作ベストセラーを完全映画化

というアオリ文なんですけどね。どうなんですかね。

こちらレンタル店にてちびぞう母チョイスのミステリー?です。

もう一つのアオリ文は

「”ドラゴン・タトゥーの女””特捜部Q”に続く北欧ミステリーの衝撃作!!」

なんですけども・・・北欧ミステリーってちびぞう的には少し微妙だったりするんですよね・・・。『ドラゴン・タトゥーの女』のハリウッド版の映画は大好き!!だったんですけど、そこから原作となった北欧ミステリーのテレビドラマ版?を観たら

寝てしまいましてね・・・

最後までちゃんと観れなかったんだよなぁ。なのでちょっと不安になりつつも鑑賞です。

【映画情報】

【原題】Myrin
【制作国】アイスランド、デンマーク、ドイツ
【監督/脚本】バルタザール・コルマウクル
【原作】アーナルデュル・インドリダソン
【撮影】ベルクステイン・ビョルグルフソン
【美術】アトリ・ゲール・グレタルソン
【編集】エリザベト・ロナルドドッティル
【音楽】ムギソン
【出演([]内は役名)】

  • イングバール・E・シーグルズソン[エーレンデュル警部]
  • オーグスタ・エバ・アーレンドスドーティル[エヴァ]
  • ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン[オルン]
  • オーラフィア・フロン・ヨンスドッティル[エレンボルク]
  • アトゥリ・ラフン・シーグルスソン[オルン]
  • テオドール・ユーリウソン[ルーナル]
  • ソルステイン・グンナルソン[ホルベルク]

【公開日(日本)】2015年1月31日(トーキョーノーザンライツフェスティバル2015にて)
【上映時間】94分
【IMDB】7.0/10.0  (およそ4,600人の評価)

【あらすじ】

アイルランドの湿地帯に建つ家屋で男性の死体が発見された。エーレンデュル刑事は捜査を開始。部屋の中を捜索すると、引き出しの裏側に一枚の写真を見つける。それは数十年前に起きたレイプ事件の被害者が生んだ娘ウイドルの墓の写真であった。少女の墓を調べ遺体を掘り返すと脳がなく、悪性の脳腫瘍で亡くなっていたことが発覚。刑事は、かつてホルンベルクという男が行ったと思われるレイプ事件の被害者を探すことに・・・。

【感想(ネタバレするよ!!)】

☆1.0/5.0

わーこれあらすじがどこにも載ってないやつだ!困った!自分で書くしかない!書きました!!

ううううううううううううんんんんんごめんなさい!!!!!!

「これだから北欧ミステリーは!」

と一括りにはしたくないんですけどね!?

やっぱりつまんなかったです・・・。

ちなみに原題の「MYRIN」はまんま「湿地」という意味です。端から端まであまりひねりがない・・・。(すいません・・・)

ちびぞう的には悲惨なんだけど、IMDBだと結構評価があったりするので・・・好きな人は好きなのかもしれない・・・。

おおまかなストーリー

難病の娘が治療の甲斐なく亡くなってしまい、葬式が営まれるシーンがオープニングです。

そして場面は飛んでエーレンデュル刑事が湿地帯の家屋で発見された死体の捜査を始める場面から物語は始まります。

その湿地は夏場は悪臭が漂う家だった・・・(そして後に床下からも死体が見つかるんだけどね!その臭さもあって悪臭漂ってたのかな!)

家の引き出しの裏側から見つかった封筒に入っていた写真から、とある墓地を特定する。そこを暴くと、ウイドルという娘の死体が発見された。

刑事は、彼女の母が何十年か前にレイプされて生まれた子どもだという事を明らかにし、そこから同じレイプ事件の別の被害者を探そうとする。
同時にその死体には脳がなく、悪性の腫瘍で亡くなっていたことが分かるのであった。

なんやかんやあって、犯人はオープニングに登場した「娘を病気で亡くした男」だと言うことが判明。

彼(犯人)は自分の娘の病気が極めて稀な遺伝性の病気にかかっていたと知り、そのルーツを独自に探していた。すると、自分の本当の母親は別におり、彼女がレイプされて自分が生まれたのだということを知る。

そして、レイプ犯でもあり実の父親であるホルンベルクを殺害するのであった・・・。

なんやかんや推理した刑事に事件を暴かれた父親は拳銃自殺してしまう。

というお話!

感想は・・・

うーん退屈ですね。全体的に画面が暗くて、物語の盛り上がりも特になく、淡々と話が続いていく・・・

更に時系列がややこしくなっていたり、登場人物が誰が誰やら分からなかったり、名前も聞き慣れないものばかりで覚えにくしで・・・観てるこっちが臭い沼にズブズブとはまって抜け出せなくなりそうです(笑)

こういうのが北欧ミステリー!!って印象を付けられてしまうとあんまり良くないとは思うんですけど、「ドラゴン・タトゥーの女」もちびぞう的には似たような感じであんまり好きにはなれなかったので・・・きっと北欧ミステリーとちびぞうの相性が良くないんだな!!!(笑)

設定的には、亡くなった娘が持っていた遺伝性の病気が発症した原因が何か突き止めようとする、そしたら自分がレイプで生まれた子どもだという事を知る。その原因となった男を(娘を亡くした復讐心から)殺してやろう!という動機で結構真新しいというかぶっとんでるというか。もしかしたら原作は面白いのかもしれませんね・・・。

(でも元を辿れば遺伝元はその先にもいるわけで、しかも確かに娘は病気で亡くなってしまったんだけども、父親がいなかったら娘も生まれてこないわけで・・・というタイムトラベルのジレンマのようなことを悶々と抱えてしまうな・・・)

つまりまぁ、亡くなってしまったけど、そこまでのかけがえのない時間や娘と過ごした幸せな思い出だって、言ってみればそのレイプ犯のおかげだったりするわけで(しかも蓋を開けてみればレイプというかただの浮気で後々母親は脅されたらしいけど行為自体は合意だったらしいし)殺すほどのことなの?と思ってしまうというか。

うーーーーーーーん動機が弱い!!!

まとめ

全くオススメしません!!(笑)

マイナーな俳優さんばかりだから、俳優目的で観てねとかもなかなか言えないし・・・。

観てみようかな?って思った人がいたら、多分原作を読んだ方が面白いかもしれませんよ。

 

 


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画像引用元:映画.com

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汚男に愛されまくるイヤミスの映画化!『彼女がその名を知らない鳥たち』ネタバレ&感想

共感度ゼロの最低な男と女が辿り着く“究極の愛”とは

阿部サダヲ×蒼井優!そして原作は『ユリゴコロ』と同じ沼田まほかるさん!

吉高由里子が美しき殺人鬼に。映画『ユリゴコロ』ネタバレ&感想

監督は『凶悪』『孤狼の血』の白石和彌監督。ちびぞうは今回、初白石作品となりました。

今回は沼田さんファンの友人が劇場で観た時の反応がいまいちっぽかったので劇場スルー。
原作も未読のままレンタルで鑑賞しました。

「カノ鳥」公式サイトはこちら

【映画情報】

【制作国】日本
【監督】白石和彌
【脚本】浅野妙子
【原作】沼田まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち(幻冬舎)」
【エグゼクティブプロデューサー】藤本款
【プロデューサー】深瀬和美、山本晃久、西口典子
【企画】西口典子
【撮影】灰原隆裕
【照明】舟橋正生
【録音】浦田和治
【美術】今村力
【衣装】高橋さやか
【ヘアメイク】有路涼子
【編集】加藤ひとみ
【助監督】茂木克仁
【制作担当】宮森隆介
【出演([]内は役名)】

  • 蒼井優[北原十和子]
  • 阿部サダヲ[佐野陣冶]
  • 松坂桃李[水島真]
  • 村川絵梨[國枝カヨ]
  • 赤堀雅秋[酒田]
  • 赤澤ムック[野々山美鈴]
  • 中嶋しゅう[國枝]
  • 竹野内豊[黒崎俊一]

【公開日(日本)】2017年10月28日
【上映時間】123分
【配給】クロックワークス
【映倫区分】R15+
【IMDB】6.5/10.0  (およそ210人の評価)

【あらすじ】

下品で貧相、金も地位もない15歳上の男・陣治と暮らす十和子は、8年前に別れた黒崎のことを忘れられずにいた。陣治に激しい嫌悪の念を抱きながらも、陣治の稼ぎのみで働きもせずに毎日を送っていた十和子は、黒崎に似た面影を持つ妻子ある水島と関係を持つ。ある日、十和子は家に訪ねてきた刑事から、黒崎が行方不明であることを告げられる。「十和子が幸せならそれでいい」と、日に何度も十和子に電話をかけ、さらには彼女を尾行するなど、異様なまでの執着を見せる陣治。黒崎の失踪に陣治が関係しているのではないかとの疑いを持った十和子は、その危険が水島にまでおよぶのではとないかと戦慄する。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレするよ)】

☆3.5/5.0

沼田まほかるさんが70歳だからか、この方の原作の映画は少し時代背景が古いですね。昭和感のある映画でした。

ちびぞうはラストはあまり泣けませんでしたが、愛は感じました。
阿部サダヲの愛がとにかくすごい。無償の愛。恋愛という域を超えた、親子の愛のような・・・マザーテレサのような愛なんですよね。

原作の沼田まほかるさんが寺出身で僧侶をしていたということを考えると、この神のような愛の表現にもなんとなく納得。
人の為に自分を犠牲に出来るというのは、究極ですよね。

主要の登場人物が全員クズ!!!!

  • 主人公の十和子は陣冶の稼ぎでぐうたら生活しているし悪質クレーマーだし引っかかる男はどれもダメンズという残念な女・・・
  • そのそばで十和子を愛する陣冶は不衛生で身なりやご飯の食べ方が汚く、生活力もあまりなく彼女に何度も電話してくる心配性(が過ぎてもはやストーカーレベル)で冴えないデリカシーのない(さらに言えば多分EDで男性としての機能も???)男
  • 十和子が8年も忘れられない元カレの黒崎は金のために別の男に十和子を抱かせたり、突然彼女を捨てて別の女と結婚しようとしたり、それに抗議したらボッコボコに暴力をふるってくる男
  • 十和子が新たに出会った時計店勤務の水島はいつも大きなことをペラペラと語る口先だけの人間で簡単に手を出してくる上に既婚だったという男。
  • 黒崎が結婚した妻の叔父に当たる國枝という老人は黒崎が金に苦労していたのを利用して若い女を都合させる

こんな感じで出てくる人出てくる人大体がしょうもない人間なんですけども、ちびぞうが一番気に入らなかったのは主人公の十和子でした・・・。

アホすぎてアホすぎて・・・どうして一度失敗したら学ばないんだろうと・・・どうして何度も同じような男に引っかかるのかと・・・

それにあれだけ愛されてるんだから、陣冶の不衛生なところとかファッションとか身なりに関して、食べ方が汚いのとかも全部十和子が強く言えば直してくれるんじゃないですかね。
だってあれだけ愛されてるんだから。愛されてるのも知ってたんだから。

愛されてるのも知っていたし多分十和子にとっても陣冶の存在は大きかったんだろうなって映画を最後まで観ると分かります。

だからこそ、彼女の終盤までの陣冶に対する態度にイライラしてしまうという。

陣冶は十和子に愛されていた?

なんだかんだ言って十和子は、あの汚くて不器用な陣冶を選んで、そばにいたんだと思います。上で散々「直させればいいじゃん」と書きつつ、わざと十和子は陣冶をあのままにしていたんだとも思うんです。

周りにいるクズ男たちとは似ても似つかないような不衛生感、だらしなさ、生活力のなさ、そして体を求めてこない男性としても機能してなさそうな点。全てが今までの男と正反対で、だからこそ「優しい」と分かる。だからこそ「愛されてる」と分かる。

自分がどれだけ厳しく彼に接しても、だらしない姿を見せて甘えても、彼はそれでもいいと自分を受け入れる。

黒崎と接する時の彼女は猫撫で声で、いかにも「女らしく」取り繕っている感じがした。しかし、素の彼女は全然女らしくもなければ優しさもないし、小さなことで店員にケチをつけたりする心の狭い女だったりする。

陣冶はありのままの十和子を愛したように、十和子もありのままの陣冶だからこそ選んだのだと思う。そこにはちゃんと、いびつな形でも愛があったんだと思う。

あ・・・泣けますね(今きた!涙が!)

陣冶の自己犠牲

このお話の大きなネタバレとして、陣冶の自己犠牲がなんだったのか、という点があります。

序盤から中盤にかけて、陣冶の十和子に対す津異常な愛が彼をストーカーやそれ以上の犯罪的な行為に走らせていた、という風に観客をミスリードしつつ、本当は十和子の犯した罪のため奔走していた・・・というラストでビックリ!!な仕掛けになっています。

1つ目は、元カレの黒崎の失踪。その真実は、結婚するからと別れを告げられボコボコに殴られた十和子が黒崎を殺してしまったということ。十和子は心神喪失状態でありながら陣冶に電話し、異常を察した陣冶がかけつけ、死体の処理をしてくれます。そして死んだように眠っていた十和子が目を覚ますと、彼女は事件の事を忘れてしまっていた・・・。だから陣冶は彼女の罪をかぶり自分がそれを行った・・・という事にしたのです(まだ黒崎の事件は公になっていませんが、公になったとしたら自分が犯人だと自白するつもりだったのでしょう)

2つ目は、水島の件。十和子は再び男に裏切られ、水島をナイフで襲ってしまいます。しかしそこにも陣冶が駆けつけ「俺がやったと言え!」と言って水島を逃がします。この件によって十和子は過去の事件も思い出し、陣冶が自分の為に何をしてくれたのかを知ることになります。

十和子を執拗に心配し、こまめに連絡を入れていたのはストーカーとかそういうものではなく、過去の十和子の行動を考えれば当然の事だった、という事も見えてきます。

陣冶はなぜ最後、あの選択をしたか

多分、二人の関係が破滅的だったからでしょう。

人はどこまでも自堕落になれるし、それを許してしまう人間がそばにいると、状況は上向いていかないんですよね。
本当ならそばにいて、十和子がしっかりしていければ良いんだけど、多分陣冶ではそういう相手にはなれなかったと思うんです。

だから二人の間に特別な愛があっても、ずっと一緒にいるわけにはいかなかったのかなぁと。

陣冶は自分の全てを犠牲にして十和子を守っていたけど、でもそれもずっとは続かない。
今後黒崎の死体が発見され水島の証言などから十和子の罪が明らかになるかもしれません。でも、本当はそうでなくてはいけない。本来なら罪は犯した本人が償うべきだからです。

彼が全てを犠牲にし、自分の命を断ってでも彼女から離れる事で、彼女はこれから先、再び自分の足で歩いて行けるようになると信じたのでしょう。

飛び降りる直前に言っていた

「陣冶は十和子の子どもになって生まれてくるから。陣冶を育てるんやで」

という感じの台詞は結構な気持ち悪さがあり、とても陣冶らしくて良い台詞ですよね(褒めてます)

彼女が罪を償い、きちんとした生活を送り、本当に幸せになれる相手を見つけて、いつか子どもを作り育てる。そんな先までを呪うようにしながら死んでいった陣冶。
決して後味の良い終わりではないんですが、エンドロールが流れる頃には観客は間違いなく「愛」を感じているはず。

まとめ

イヤミスながら心が変に温かくなる、不思議な映画でした。

十和子には最初から最後まで苛立ちますけどね!!

阿部サダヲと蒼井優の主演二人のハマりすぎている名演技もですが、助演のクズ男たちの演技もなかなかに素晴らしいので、その辺にも注目して頂きたいです。

 

 


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あ行

有名すぎるミステリーの2度目の映画化!『オリエント急行』ネタバレ&感想

私は信じたい。人間は理性や教養がある生き物だと。

 

おそらく世界で一番有名なミステリー作家、アガサ・クリスティが1934年に発表した、これまた有名すぎるミステリー小説「オリエント急行殺人事件」の2度目の実写映画化です!

ちびぞうは1974年の映画は未見なのですが、『名探偵ポアロ』というテレビドラマシリーズで「オリエント急行の殺人」を観た事がありました。
そのせいかポアロと言えば、デヴィッド・スーシェ!(↓この人)



というイメージがついてしまっているので・・・今作でポアロを演じるケネス・ブラナ―(監督もしています)に違和感を感じないか心配・・・。

ちなみに劇場で観ようかとも思ったのですが、近年のジョニデの出演作は敬遠しがちになっているのと、内容を知っている作品だったので劇場はスルーしました。
というか、この改変しようのない不朽の名作を再び映像化って結構勇気ありますよね・・・。

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】 Murder on the Orient Express
【制作国】アメリカ
【監督】ケネス・ブラナ―
【脚本】マイケル・グリーン
【原作】アガサ・クリスティ
【製作】リドリー・スコット、マーク・ゴードン、サイモン・キンバーグ、ケネス・ブラナー、ジュディ・ホフランド、マイケル・シェイファー
【製作総指揮】アディッティア・スード、マシュー・ジェンキンス、ジェームズ・プリチャード、ヒラリー・ストロング
【撮影】ハリス・ザンバーラウコス
【美術】ジム・クレイ
【衣装】アレクサンドラ・バーン
【編集】ミック・オーズリー
【音楽】パトリック・ドイル
【ジョージ・マーフィ】
【出演([]内は役名)】

  • ケネス・ブラナー[エルキュール・ポアロ]
  • ジョニー・デップ[エドワード・ラチェット]
  • ミシェル・ファイファー[キャロライン・ハバード]
  • ジュディ・デンチ[ドラゴミロフ公爵夫人]
  • ペネロペ・クルス[ピラール・エストラバドス]
  • デイジー・リドリー[メアリ・デブナム]
  • ウィレム・デフォー[ゲアハルト・ハードマン]
  • ジョシュ・ギャッド[ヘクター・マックィーン]
  • デレク・ジャコビ[エドワード・マスターマン]
  • レスリー・オドム・Jr.[ドクター・アーバスノット]
  • マーワン・ケンザリ[ピエール・ミシェル]
  • オリビア・コールマン[ヒルデガルデ・シュミット]
  • ルーシー・ボーイントン[エレナ・アンドレニ伯爵夫人]
  • マヌエル・ガルシア=ルルフォ[マルケス]
  • セルゲイ・ポルーニン[ルドルフ・アンドレニ伯爵]
  • トム・ベイトマン[ブーク]

【公開日(日本)】2017年12月8日
【上映時間】114分
【配給】20世紀フォックス映画
【映倫区分】G
【IMDB】6.5/10.0  (およそ140,050人の評価)

【あらすじ】

トルコ発フランス行きの寝台列車オリエント急行で、富豪ラチェットが刺殺された。教授、執事、伯爵、伯爵夫人、秘書、家庭教師、宣教師、未亡人、セールスマン、メイド、医者、公爵夫人という目的地以外は共通点のない乗客たちと車掌をあわせた13人が、殺人事件の容疑者となってしまう。そして、この列車に乗り合わせていた世界一の探偵エルキュール・ポアロは、列車内という動く密室で起こった事件の解決に挑む。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレするよ!)】

☆2.5/5.0

うーーーーーーーーーん。普通に観れますよ!ただやっぱりね、筋を知っているのであんまり驚きはないんですが!

キャストを見て頂ければ分かると思うんですけど、すっっっごい豪華なんですよ。

ジョニデから始まりペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ウィレム・デフォー、ミシェル・ファイファーなどなど、名前を一度は聞いたことのあるような有名俳優さんや大御所俳優さん、一人で主役級の方々がごっそり!出演されています!

1974年版の映画化でも、キャストが豪華だったことが特徴だったようで、今作もそこにインスピレーションを受けているようですねーーー。

彼らの演技合戦を観るだけでも価値はあるかもしれません。

個人的にはウィレム・デフォーの出番をもう少し増やして欲しかった・・・。

ポアロはどうだったか?

オープニングのイスラエルでの謎解きでいかにポアロが有能な探偵かが描かれつつ、朝食に食べる卵は2つ、まったく同じ大きさ形のものでなければ気が済まないだとか、動物のフンを片足で踏んでしまったらもう片方の足でも踏まないと気が済まないという「きっちりっぷり」「左右対称大好き」がよく表現されていたと思います。この設定は今作ならではっぽい。

ヒゲも立派だし左右対称だしね!

でもやっぱりポアロはスーシェさんじゃないと!!!と思ってしまいますねー。特に喋り方、声のイメージが強くて。髪も髭も黒色がいい・・・。
性格ももう少し冷静な方が・・・。

おおまかなストーリー

もしかしたら最近の若い人はこの話を知らないかもしれないんですけど、結構ショッキングなオチだと思うんですよね、これ。

偶然列車内で居合わせた13人とポアロ。ラチェットという詐欺まがいな古物商に「脅迫状を受け取っている。護衛して欲しい」と頼まれるが断るポアロ。

すると列車は予想外の雪崩によって停車してしまう。そして起きる殺人事件!
12か所を刺された遺体が見つかる・・・。

しかしこの「オリエント急行」で予想外だったのは、雪崩と、ポアロが乗り込んでくることだけだった・・・。

殺害されたラチェット(ジョニデ)はアームストロング大佐という人物の娘を誘拐し、身代金を手にした上で殺害するという凄惨な事件の犯人だった。乗り合わせた何の共通点もなさそうな登場人物たちがそれぞれ、様々な形でアームストロング家に関りがあり、またその事件によって不幸になった人々であったということが判明していく。

(このアームストロング事件には元ネタになった”リンドバーグ事件”というものがあったらしい)

そしてポアロは、容疑者全員が犯人だったという真実に辿り着く。
しかし彼は、彼らの罪を赦し、犯人は突然乗り込んできたギャングであったと警察に説明するのであった。

このオチってどうなんですかね

原作が古い作品なのもあるんですけど、現代でこのオチは物議を醸すような気がしなくもない。

確かに犯人は偽物を高額で売りつけるような詐欺古物商であり、過去に行った誘拐殺人事件も凄惨なもので彼がどれほどの人達に恨まれていたか、と考えると「殺されても仕方ないよなぁ」と思うような人物設定にはされているんですが。

だからと言って、人は人を私情で裁いても良いものか?という問題があるじゃないですか。

彼ら犯人が行ったのは復讐を目的とした私刑であり、それにポアロも加担してしまう形になるんですよね。

確かに奇抜なオチだけど、どうも後味が悪いなぁ。

ラストで、ポアロがこんな選択をするの!?という驚きや、彼の人生観(悪か正義しか存在せず人間はその2つに分類される、という考えが、悪と正義の中間に成り得る人々の存在を知り変わっていく)の変化を面白いと観れるのは、それまでのポアロというキャラクターを深く知った場合だと思うんですよね。確かに、左右対称にしたい、きっちり2つに分けたい、ネクタイの歪みもミリ単位で気になる、神経質?なキャラクター性は序盤で示唆されてはいましたが、それだけではポアロという人物像が馴染まず、ラストの彼の変化に深い意味を受け取れるかどうかというとそうでもないような・・・。

最後の晩餐を思わせる場面が良かった

終盤、トンネルの入り口に容疑者を一列に並べ推理を行う場面は、まるでレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐のようで美しかったですね。

この中に裏切り者がいる、とキリストが告げるシーンだから、ポアロが真実を明らかにする場面としてこの絵画をパロったんでしょうか。

元々、12人だった容疑者が13人に増やされていたのには、12人の使途+キリスト(事件の首謀者だったハバード婦人がキリストの位置にいたことから彼女がキリスト役?)で最後の晩餐をやりたかったからかもしれません。
(そう考えるとポアロの立ち位置はなんなんだろう・・・)

彼らが犯した罪は全員が今後生きながらに背負っていく十字架なのだという感じで、宗教的な意味合いを持たせることによって、ラストのポアロの赦しをキリスト教的な「赦し」と暗示させたのかもしれません。

この切り口は原作にはない方向性らしいですね。

宗教的な意味合いがあれば、私刑も赦せるという考え方にもなるのかな・・・
(でもそうするとラチェットにも赦しが与えられても良いはずなんだけどなぁ)

 

まとめ

考えれば考えるほど混乱してきました(笑)が、ちびぞうの灰色の脳細胞が働いていないせいかと思われます。

現代でこの作品を映画化するのあたり、作品を既に知っている人たちにも新しい方向性を見せたかったのもあるでしょうし、新しい解釈をもたらすことで、物語にはメスを入れず新しい「オリエント急行」にしようという意欲もあったのかもしれません。

あーこの話知ってるわ、と言わず、一度観てみると・・・新しい発見や面白さが見つけられるかもしれません。

最後に一言だけいいですかね?

 

 

序盤の伯爵のアクションなんなの???

 

 

 


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ま行

政治ロビイストがどんでん返す!映画『女神の見えざる手』ネタバレ&感想

彼女がアメリカを「毒」で正す―――。

どうもこんにちは!ちびぞう(@cbz_ewe)でっす!

こちらはちびぞう母チョイスの作品。レンタルでの鑑賞。

配給がキノフィルムズさんなんですけども、今のところキノフィルムズさんの映画はハズレがないんですよ・・・たとえばどんなのがあるかというと

ハクソー・リッジ』『パトリオット・デイ』『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』『ヒトラーの忘れもの』『ニュースの真相』などなど・・・どれも良作ばかりですよね。オシャレなミニシアター系!と言われれば思い出すのもキノフィルムズさんでもあります。パンフも毎回素敵だし!

今作は何やら、政治ロビイストという職業の人が主人公なようですが・・・?内容的に難しいのかな?

【映画情報】

【原題】Miss Sloane
【制作国】フランス、アメリカ
【監督】ジョン・マッデン
【脚本】ジョナサン・ペレラ
【製作】ベン・ブラウニング、クリス・サイキエル、アリエル・ゼトゥン
【製作総指揮】クロード・レジェ、ジョナサン・バンガー、パトリック・チュウ、アーロン・ライダー
【撮影】セバスチャン・ブレンコー
【美術】マシュー・デイビス
【衣装】ジョージナ・ヤーリ
【編集】アレクサンダー・バーナー
【音楽】マックス・リヒター
【出演([]内は役名)】

  • ジェシカ・チャステイン[エリザベス・スローン]
  • マーク・ストロング[ロドルフォ・シュミット]
  • ググ・バサ=ロー[エズメ・マヌチャリアン]
  • アリソン・ピル[ジェーン・モロイ]
  • マイケル・スタールバーグ[パット・コナーズ]
  • サム・ウォーターストン[ジョージ・デュポン]
  • ジョン・リスゴー[スパーリング上院議員]
  • ジェイク・レイシー[フォード]
  • デビッド・ウィルソン・バーンズ[ダニエル・ポスナー]
  • ラウール・バネジャ[R・M・ダットン]
  • チャック・シャマタ[ボブ・サンフォード]
  • クリスティーン・バランスキー[エヴリン・サマー]

【公開日(日本)】2017年10月20日
【上映時間】132分
【配給】キノフィルムズ
【映倫区分】G
【IMDB】7.5/10.0  (およそ42,150人の評価)

【あらすじ】

大手ロビー会社の花形ロビイストとして活躍してきたエリザベス・スローンは、銃の所持を支持する仕事を断り、銃規制派の小さな会社に移籍する。卓越したアイデアと大胆な決断力で難局を乗り越え、勝利を目前にした矢先、彼女の赤裸々なプライベートが露呈してしまう。さらに、予想外の事件によって事態はますます悪化していく。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレするよ!)】

☆3.2/5.0

面白かった!!!!綺麗ーーーーーーなどんでん返し!

ちびぞうのようにあまり政治的なお話がよく分からないゾウにも分かりやすい方だったかと思います。

ロビイストとは?

ちびぞうはこの映画で初めてこの単語を耳にしました・・・

調べてみると

ロビー活動の専門家。
ロビー活動とは、特定の利益をはかるために議員・官僚・政党などにはたらきかけ,政治的決定に影響を及ぼそうとする院外活動。特にアメリカにおけるものをいい,議会ロビーにおける議員への陳情だけでなく,世論の形成・動員までも含める。ロビイング。(by weblio辞書)

という事だったらしいですねー!

分からないまま最後まで観てしまいましたが、それでも物語には支障なく観れたので問題なかったです。分かってて観るとまた理解も深まるとは思いますけどね!

おおまかなストーリー

ワシントンDCにある連邦議事堂で上院議員による聴聞会が開かれ、そこの証言台に立たされる女性(マデリン・エリザベス・スローン)が主人公。

場面は切り替わり、なぜ彼女がこのような立場に立たされたのか?という数か月前の話が差し込まれます。

 

マデリンは銃規制法案を通したいと小さな会社に引き抜かれ、今やっている仕事もやめて会社を移動。女性を銃賛成派にしたいという銃ロビーたちと戦おうとする。

しかし彼女の仕事のチームメイトの何人かは一緒に会社を移動したものの、マデリンの人柄にうんざりしていた風の後輩ちゃんは彼女について行かなかった。

なぜかというと、マデリンはあまりにも目的を達成することに執着していて、そのためには手段をも選ばない冷酷さを持っていたから。

実際に移動した先の会社でも、銃乱射事件の被害者であることを隠していた社員を利用し、メディアの前で暴露するなど、人道的にどうなのよという方法で議員たちの票を獲得しようとする。

しかし、彼女のあまりに目立つ仕事ぶりから、敵に目を付けられ、潰されそうになってしまう。
銃ロビーを支援する議員たちが裏で画策し、彼女の人柄を晒し上げて本来の流れから世間の目を外させ、銃規制法案に対する追い風を風化させようと目論んだのだ。

そして前の会社に残った後輩ちゃんが、以前マデリンが担当していた仕事で文書改ざんが行われていたことを発見し、それを理由に聴聞会が開かれる(これが冒頭のシーン)。
聴聞会では、彼女の私生活の問題(薬を飲んでわざと眠らない生活をしていたり、男娼を買ったりしていること)まで暴かれそうになる。

しかし、彼女は最後に”言いたいことを話す権利”を使って上院議員の裏取引の録画と音声を大暴露!
実は、この聴聞会そのものが彼女が最初に計画した作戦の一部であり、会社に残った後輩ちゃんも実はグルで、彼女の改ざん書類をネタにわざと聴聞会を開かせ、そこで議員の裏取引を暴露・・・そして完全勝利!!というところまでが彼女の筋書き通り・・・

そして刑務所に行く代わりに、銃規制法案を通すという・・・なんと恐ろしい女なんだ!!!!

ラストの場面では、刑務所を出た彼女が”誰か”を見るような、そんな場面で終わっています。

ジェシカ・チャスティンという女優

マデリンは目的のために同僚も平気で犠牲にするし、それだけではなく、自分のことすら平気で犠牲にする。勝利への執着のみで生きていると言っても過言でないほどに聡明で、冷たく、そして病的、とても孤独な女性でもあります。

彼女の過去などには一切触れられませんが、もしかしたら銃による事件の犠牲者・・・という可能性もなくはないかもしれません。でもそこはそんなに問題でもない。彼女は、彼女なりの正義を持って、何が正しいかを見極め、それを後押ししている。

やり方はえげつないところも多々ありますが、それでもなぜかカッコいいと思えてしまう。
なんだかダークヒーローのような、そんな印象がある深みのあるキャラクターでした。

そんなマデリンを演じているのが女優ジェシカ・チャスティン
ちびぞうは『ツリー・オブ・ライフ』や『MAMA』、『クリムゾン・ピーク』などで彼女を見た事がありましたが、今作ほど演技力に痺れさせられ、ハマり役だ!と感じたのは初めてでしたね。

彼女の力強く、鋭くよく切れるのに簡単に壊れてしまいそうなガラスのナイフのような演技を観るためだけにもレンタルして頂きたい!そんな名演技でした。

邦題のセンスの良さ

この邦題もすごくイイです。原題は「ミス・スローン」で主人公マデリンの名前です。
しかし邦題は「女神の見えざる手」。この、”神の見えざる手”というのは、経済を動かしている力を表す言葉らしいのですが、それを女神に変えているんですねー。彼女がまるで政治・経済を動かす見えざる手なのだ、と言いたげな大仰なタイトルですけど、でもそれもあながち間違っていないな!と思えるくらいにマデリンは凄い

この邦題のセンスも含めて、好きです。

まとめ

ラストの演出もすごく好きなんです。

刑務所から出てきたとき、何かを見るマデリン。

そこには何があったのか?もしかしたら、誰かが待っていたりしたのでは?と想像させるようなラスト。

劇中で登場した男娼役のフォード(ジェイク・レイシー)とは、客という垣根を超えた何かがあったように感じました。だからきっと彼がね、迎えに来てくれてたらいいなと思うんですよ・・・。(完全な妄想感)

だって、あんなに壊れそうに張り詰めている女性がね、たった独りでいていいはずがないんですよ!!だからね、自分を犠牲にしてまで勝ち取った勝利のね、ご褒美があっても良いと思うんですよ!

・・・こんな感じで熱くなってしまう映画です。
静かで政治的ですけど、すごくイイ映画です。さすがキノフィルムズさんです。

 

女性が強い映画が好きなあなたにオススメです!!!!!

 

 


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ま行

パルムドール受賞作のここがイイ!映画『万引き家族』ネタバレ&感想

「捨てた人は、どこか別にいるんじゃないですか?」

是枝監督の14本目の長編映画であり、噂のカンヌでの最高賞(パルムドール)を獲った作品でありますね。

先行上映がやっていると知り、劇場へ急ぎました。

ちびぞうはカンヌ映画祭で評価された映画だから注目したというよりは、今までカンヌで評価された作品はちびぞう好みの物が多かった。ということでカンヌ映画祭そのものとちびぞうの相性が良いのだなーという認識があったんですよね。

しかし歴代パルムドールの中でも当然ですが苦手な作品はちょいちょいあり、「観てみないとわからないな」と思いつつ、でもとても好きになれる可能性も高いのでチェックしよう!という感じで注目しました。

しかも今回は、イランの今後を担うであろう名匠ジャファール・パナヒ監督の新作『Three Faces(洋題)』も出品されていたということなので(脚本賞を受賞)、それを抜いてパルムドールと言われればそれは興味もそそりますよね!!

映画の製作を国から禁じられながらも独自のやり方で製作を続けるパナヒ監督の『人生タクシー』の感想は↓↓

映画作りを禁止された監督の『人生タクシー』ネタバレ&感想

ちなみにパンフはこんな感じ。

B5のノートサイズで46ページで税抜き741円!めちゃ分厚め。背表紙に洋題が。

そしてお安め。家族の写真がペタッと貼り付けられてる感じでぷっくりしてます。この題字がまた良いですよね。祥太くんが書いたに違いない。
左開きの縦書きで、ほぼ全てのページに映画のワンシーンが載っています。手書きしたっぽい間取りもある!豪華!

【映画情報】

【制作国】日本
【監督/脚本/編集】是枝裕和
【製作】石原隆、依田巽、中江康人
【プロデューサー】松崎薫、代情明彦、田口聖
【アソシエイトプロデューサー】大澤恵、小竹里美
【撮影】近藤龍人
【照明】藤井勇
【録音】冨田和彦
【美術】三ツ松けいこ
【装飾】松葉明子
【衣装】黒澤和子
【ヘアメイク】酒井夢月
【助監督】森本晶一
【キャスティング】田端利江
【制作担当】後藤一郎
【ラインプロデューサー】熊谷悠
【音響効果】岡瀬晶彦
【音楽】細野晴臣
【出演([]内は役名)】

  • リリー・フランキー[柴田治]
  • 安藤サクラ[柴田信代]
  • 松岡茉優[柴田亜紀]
  • 池松壮亮[4番さん]
  • 城桧吏[柴田祥太]
  • 佐々木みゆ[ゆり]
  • 緒形直人[柴田譲]
  • 森口瑤子[柴田葉子]
  • 山田裕貴[北条保]
  • 片山萌美[北条希]
  • 柄本明[川戸頼次]
  • 高良健吾[前園巧]
  • 池脇千鶴[宮部希衣]
  • 樹木希林[柴田初枝]
  • 毎熊克哉[]
  • 堀春菜[]

【公開日(日本)】2018年6月8日
【上映時間】120分
【配給】ギャガ
【映倫区分】PG12
【IMDB】7.5/10.0  (およそ300人の評価)

【あらすじ】

高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、社会の底辺にいるような一家だったが、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることに。そして、ある事件をきっかけに仲の良かった家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密や願いが明らかになっていく。【引用元:映画.com

【感想(唐突にネタバレするよ!)】

☆3.7/5.0

控えめに言っても、素晴らしかったです!!!!

もうね、安藤サクラが最高なんですよ!!!!!

カンヌで審査員長を務めたケイト・ブランシェットが安藤サクラの泣き演技を絶賛してたみたいなんですけど、ほんとそれな!!!!という感じで!!!

泣いてる姿なんか人に見せたくないって感じで、必死に泣いてるように見えないように、手で髪の毛をかきあげるような仕草で涙を拭うんですよ。
これはもう・・・もらい泣きするでしょうよ・・・。

安藤サクラが捕まったあとでの警察とのやりとりも堪らなく良いですよ。
おばあちゃんが亡くなって、葬式代も出せなくて、家の床下の地面に埋めるんですよね。その事について警察に、死体遺棄は罪ですよって言われる。なんで捨てたのって。そしたら安藤サクラが
「捨てた?捨てたんじゃない、拾ったんです。誰かが捨てたのを、拾った。捨てた人ってのは、他にいるでしょ」
と答える。この、捨てたというのは、おばあちゃんが孤独で暮らしているという点。それからおばあちゃんが過去に旦那を別の女に取られた=旦那に捨てられたという点。その両方の意味があるのかもしれません。しかし、安藤サクラがその事情を知っていた可能性は低いので、おばあちゃんが孤独に暮らしていた=社会から捨てられた。それを自分たちが一緒に暮らすことで孤独から救った=私たちは拾ったのだ、という事に繋がるんでしょう。

確かに年金目当てで夫婦はおばあちゃんに近付いたのかもしれません。
だけど、あの場所で家族を、彼らなりに家族を作ろうとしていたんですよね。
全員が孤独で誰からも愛されて来なかったひとたち。そんな孤独同士が集まって、違いの傷を舐め合うようにひっそりと、生き方を間違えながら、それを正す器用さも持ち合わせず、不器用に、いびつに、一生懸命に家族になろうとしていた。

その姿に涙が出るんですよ・・・。

世の中、まともな人間だけではないし、まともに生きられない人が正しい道を選べないというのは悲劇そのもの。彼らの持って生まれた性質もあるとは思うけど、彼らの育った環境が、そうせざるを得なくさせてしまった。ある意味で彼らは現代日本の、社会の、被害者でもあるような。そんな可哀そうな人たち。
生き方を間違えたり、そうせざるを得ないような環境で歪んだ育ち方をしていたって、その人たちも人を愛したり、愛されたり、「家族」という他人との絆を求めることは決して誰にも咎められることではないと思います。

だからと言って、彼らのしていた犯罪が、許されることではないのは確かなんですが。

「家族」の真実

父親役のリリーフランキーと母親役の安藤サクラが本当に婚姻関係にあったのかは分かりません。ただ、恋人同士であったのは間違いないかな。事実婚という可能性もありますね。
彼らは水商売の店員と客として出会い、そして安藤サクラの元旦那を(正当防衛で)殺した過去があり、その時も死体を埋めたりしていたようです。
ちなみにリリーフランキーは工事現場での仕事をしたりしつつ万引きや車上荒らしなどをしており、それを息子役の城桧吏に教えていました。安藤サクラはクリーニング店で働いていましたがクビになってしまいました。

 

樹木希林演じるおばあちゃんは、一軒家の主で、6万円ほどの年金受給者。
過去に自分の旦那を奪った女の家族にちょくちょく出向いて金銭的な援助を受けていたようです(ゆすっていた、と劇中では表現されていた)。

 

安藤サクラの妹役の松岡茉優はなんとそのおばあちゃんの旦那を奪ったという家族の二女。彼女がなぜ家を出たのか、なぜ風俗で働いているのか、など明らかにはされませんが、おばあちゃんが両親を訪ねた時、「二女はオーストラリアにいて、その生活を楽しんでいるようだ」というような説明をしていることから、家族は二女が失踪していることを世間には隠しているようです。
このことからも、松岡茉優もあまり家族内で愛を感じて育った、という感じではなさそうですね。
ちなみに松岡茉優も、自分の両親におばあちゃんがお金をもらっていたという事は知らなかったため、おばあちゃんと自分の関係も知らないまま暮らしていたのかもしれません。
何故、おばあちゃんは松岡茉優に一緒に暮らそうと言ったのか?それは、おばあちゃんも愛した男の血を引く孫と暮らすことで、疑似的な家族の絆を欲したのかもしれませんし、家族への復讐の一環だったのかもしれません。そこは謎のままです。

長男役の城桧吏は、家計の足しにするため、万引きの技を父親から教わっていました。どうやら小さい頃にパチンコ屋の駐車場に置き去りにされており、それをリリーフランキーが車上荒らしをする時に発見し、連れて帰った。という感じのようで、本当の家族のことは覚えていないようです。小さい頃からそばにいるので、彼が一番二人の息子として家族に近い存在だった事でしょう。

 

そしてそんな歪んだ偽りだらけの家族の形が壊れるきっかけになる少女が、佐々木みゆ演じる「ゆり」。彼女は両親にネグレクト(育児放棄)と虐待をされており、二月の寒空の中、家に入れてもらえず玄関先で一人で遊んでいたところをリリーフランキーが連れて帰る、という形で「家族」に参加します。
彼女の母親が「私だって産みたくて産んだわけじゃない!」と発言していたり、ゆりが居なくなった後でも捜索願を出していなかったことから、おそらく両親は彼女が「いなくなって良かった」と思ったのかもしれません。

「家族」崩壊のきっかけは長男の心境の変化

ゆりが家族の一員となり、兄と呼ばれ、少しずつ成長するにつれて「家族」の間違いに気付いた長男の城桧吏。

父親の話す矛盾や、自分のしていることの真実に気付き、「妹にこんなことをさせてはいけない」という罪悪感や使命感から、彼は自ら捕まる事で家族の間違いを正そうとします。

純粋な子どもであったからこそ、出来た選択かもしれません。

彼が好きでよく読んでいた、国語の教科書に載っていたスイマーという話がありましたね。小さな魚でも群れを成して大きな魚のフリをすれば、大きな魚を倒すことが出来る、というお話です。そして主人公のスイマーがみんなと違う赤い色をしていても、「目の役」をすることによって皆の役に立てるという話でもあります。
この話を読んでいた長男は、もしかしたら自分たち「家族」という大きな魚の正体が、実は小さな小魚だったという事に気付いてしまうという伏線だったのかもしれません。

彼が警察から逃げる時に飛び降りて足を骨折したことから、家族の事実が世間にも明らかになります。そして、各々が本来いるべきだった場所へと帰されるのです。

正しい場所でなら幸せになれるのか

社会的に本来いるべきと思われる場所へ帰された子ども達。
長男は本当の親の記憶が一切ないため施設へと入り、ゆりは虐待されていた親もとへ帰されます。

しかし、そこに本当に幸せはあるのか??という疑問を投げかけて映画は終わります。

この映画に出てくる警察は、目の前の問題にしか目を向けていないんです。
本当の事を話させるために、非情にも長男に「彼らはあなたを見捨てて逃げようとしていたのよ」なんてことを平気で伝えたりします。
確かに仕事としては正しいことをしているかもしれないけど、彼の気持ちを考えたらそんなこと簡単には伝えられないのではないか?と思うんです。でも、それも仕方がない。

だって「犯罪を犯すような家族の子どもがそこで幸せに暮らしていたはずがない」という先入観があるからこそ「彼らから引き離すべき」という考えで動いているんですしね。

そういう思い込みや、「犯罪を犯した」という表面的なところしか見ていない警察が、彼らをバラバラに引き裂く。

そのあと、家族の元に返されたゆりが本当に幸せになれるかなんて考えていないし、根本的な問題解決は何もなされていない。

この、最後の疑問符の投げかけ方も、あまり深く語らない是枝監督ならではの手法で、良かったと思います。

きっと、「”犯罪をおかした人々が家族の絆で結ばれる”ような話を美談として世界に発信しているこの映画は日本の恥を世界にさらしている」、「日本という国が誤解される」とかいう感想を言うひとたちもきっと、

登場する警察のように「犯罪を犯している」という表面上の問題にしか目が行っていないのでしょう。

その背景には一体何があるのか、もっと深く深くこの映画について考えてもらいたいなと、ちびぞうはひっそりと思ったわけです。

言霊の持つ力

言葉には、力があり、言葉にしていればそれは真実となる。と言われています。

今作では、「お父さん」「お母さん」と声に出して呼ばれたい、というリリーフランキーと安藤サクラの願いが、言葉にすることの大切さを物語っていますよね。本当に親だと思わなくてもいい、血がつながってないと分かっていても、そう呼ばれたい。それは、そう呼んでもらえたら、いつか本当の親子になれるような気がするから。

めちゃめちゃ切なくないですか。

最後、バスに乗って去っていく息子を走って追いかけるリリーフランキーの場面があります。
そして、バスの中でしばらく経ってから振り向く息子。その時、音声では聞こえませんが口が小さく動くのが確認できます。

その時多分、いやもう100%「お父さん」と口にしたと思われます。

真実を知り、彼らが自分にしてきたことの間違いを認めたうえで初めて「お父さん」だと認めた。この言葉だけで、リリーフランキーと安藤サクラが作ってきた家族にはちゃんと「絆」があったと証明されるようで、すごく嬉しかったんです。
崩壊して初めて本当の家族になった、という意味でもあるのかもしれませんね。

本当にずるい名シーン!!!!号泣。

まとめ

とにかく主演陣の自然な演技が素晴らしい。

脚本も素晴らしい。

安藤サクラがとにかく素晴らしい。彼女の出演作は『愛のむきだし』『贖罪(テレビドラマ)』『百円の恋』も全部大好きで、今作も大好きで、ちびぞうにとって”100%女優”であります!!!

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絶対に観て損はしないですよ、別に「絶対劇場で観て欲しい」というタイプの映画ではないのでDVDでも良いかもしれませんが、ぜひ一度は鑑賞してみてください!

ちびぞうは元々、是枝監督の作品はどれも可もなく不可もなくという感じでしたが、本作はすごく良かった!!ですから!苦手な人でも面白いと思えると思いますよ!!!

余談
そういえば舞台挨拶の時に、長女の恋人となった「4番さん」役の池松壮亮が参加したということで「ようやく”家族”に紹介できた」と語っていた松岡茉優のコメントにも涙がホロりしてしまいましたね・・・(笑)樹木希林がそのあと「将来性がない」とかって毒舌していたらしく、映画の外でもこういう役柄に合わせたコメントしてくれるのは本当に楽しくて好きです(笑)

 


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少女は反旗を翻す。映画『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』ネタバレ&感想

世界の運命は、一人の少女に託された―――

はい、どうもちびぞう(@cbz_ewe)です!

前回に引き続き、ハンガー・ゲームの三作目の前編を観ていきます!

反乱軍がついに動き出す!!という事でですね、今までよりもサバイバルゲームらしさは薄れてだいぶ政治色の強い作品になってきています。

役者陣には今作から『アリスのままで』や最近だと『キングスマン:ゴールデン・サークル』にも出演していたジュリアン・ムーアが参戦!反乱軍を率いるコイン首相を演じます。

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それと今までノーマークでしたが、ゲイル役のリアム・ヘムズワースは『マイティ・ソー』のソー役で有名なクリス・ヘムズワースの実弟らしい!!!知らなかった!でも言われてみれば似ていますね!!

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フィリップ・シーモア・ホフマンの活躍にも期待したい!
今作は、色んな意味で切ない作品になるかも・・・。

【映画情報】

【原題】The Hunger Games: Mockingjay – Part 1
【制作国】アメリカ
【監督】フランシス・ローレンス
【脚本】ダニー・ストロング、ピーター・クレイグ
【原作】スーザン・コリンズ
【製作】ニーナ・ジェイコブソン、ジョン・キリク
【製作総指揮】スーザン・コリンズ、ジャン・フォスター、ジョー・ドレイク、アリソン・シェアマー
【撮影】ジョー・ウィレムズ
【美術】フィリップ・メッシーナ
【衣装】カート&バート
【編集】アラン・エドワード・ベル、マーク・ヨシカワ
【視覚効果監修】チャールズ・ギブソン
【音楽】ジェームズ・ニュートン・ハワード
【出演([]内は役名)】

  • ジェニファー・ローレンス[カットニス・エバディーン]
  • ジョシュ・ハッチャーソン[ピータ・メラーク]
  • リアム・ヘムズワース[ゲイル・ホーソーン]
  • ウッディ・ハレルソン[ヘイミッチ・アバナシー]
  • エリザベス・バンクス[エフィー・トリンケット]
  • ジュリアン・ムーア[アルマ・コイン首相]
  • フィリップ・シーモア・ホフマン[プルターク・ヘブンズビー]
  • ジェフリー・ライト[ビーティー]
  • スタンリー・トゥッチ[シーザー・フリッカーマン]
  • ドナルド・サザーランド[スノー大統領]
  • ウィロウ・シールズ[プリムローズ・エバディーン]
  • サム・クラフリン[フィニック・オデイル]
  • ジェナ・マローン[ジョアンナ・メイソン]
  • マハーシャラ・アリ[ボッグス大佐]
  • エルデン・ヘンソン[ポラックス]
  • ナタリー・ドーマー[クレシダ]
  • エバン・ロス[メッサラ]
  • ウェス・チャサム

【公開日(日本)】2015年6月5日
【上映時間】122分
【配給】KADOKAWA
【映倫区分】G
【前作】少女は再び戦場へ。映画『ハンガー・ゲーム2』ネタバレ&感想
【次作】ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション
【IMDB】6.7/10.0  (およそ357,100人の評価)

【あらすじ】

記念大会として特別に開催された第75回「ハンガー・ゲーム」の闘技場から危機一髪で救出されたカットニスは、滅亡したとされていた第13地区の地下にある、反乱軍の秘密基地に収容される。そこでコイン首相率いる反乱軍は、スノー大統領が絶対的な権力を握る独裁国家パネム打倒に向けた準備を進めていた。カットニスも革命のシンボルとして反乱軍とともに戦うことを決意するが、スノー大統領はピータを人質にし、反乱の芽を摘み取ろうとする。反乱軍はピータ救出作戦を決行するが……。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレするよ!)】

☆2.7/5.0

これまでの作品を観ている前提で書いていきますので今作のネタバレ=今までの作品のネタバレにもなりますからね!!!注意してくださいね!!!

 

さて、前作のラストは記念年のゲーム自体が反乱軍に仕組まれていたものだった、革命だった!というところで終わっていましたね~。
そこから完全に地繋ぎの形で、鎮静剤を打たれたカットニスが目覚めるところから始まっています。

12地区出身の元ゲーム優勝者で教育係のヘイミッチ、お世話係のエフィー、元ゲーム・メーカーのプルターク、同じく12地区出身の幼馴染でピータの恋敵ゲイル、前回のゲームで仲良くなった歴代優勝者のフィニックなどなど見慣れたメンバーが続々と登場します。

新キャラとしてはジュリアン・ムーア扮するコイン首相が登場します。
何やら疫病で夫と子どもを亡くした過去がある哀しい女性のようなんですが・・・どうにもこの人、うさんくさい。(笑)

滅ぼされていたと思われていた13地区が実は反乱軍の隠れ家になっており、今作はそこで保護され、国全体にプロパガンダ映像を送ったりするカットニスの生活や、捕虜となったピータがキャピトルのアイコンとして利用される様子などが描かれます。

多分、この辺りで「ピータに会いたい!!!!」と切なくなる女性客が増加するはず。

ちびぞうはそうでした。

少しコミカルで笑えるシーンも

大きな戦いに備える位置の作品だからか、今までの作品よりも笑いを狙ったシーンが多かったように感じました。

プロパガンダ映像を撮ろう!と言ってカットニスに台本を読ませるんですけどそれがへったくそなのがすごく可愛い。台詞を下手に読む演技も上手い!!さすがのジェニファー・ローレンス嬢です。

個人的にはカットニスのお世話係をしていたエフィーのシーンが特に面白くかったです!!!

元々、キャピトルの市民だった彼女。反乱軍へ自ら赴いて仲間になったようですが、今までの派手でオシャレな生活から一転、灰色のツナギを着せられて不満たらたらです(笑)

「大体どこでも幹部にはあるはずでしょ!横流しが!ここは規則が厳しすぎるのよ!」

と騒ぐ彼女が可愛い(笑)

地味な服しか着られない中で彼女なりのオシャレをしているところも注目です。

それから、衣装で思い出しましたが今作は毎回カットニスの派手で奇抜でオシャレな衣装が印象的なんですよね。

今作でも、前作で殺されてしまったデザイナーのシナの遺したノートを元に、カットニスの反乱軍のシンボル”マネシカケス”の新しい衣装も披露されますのでそちらもチェック!!

ピータの安否は?恋の行方は?

今までの2作で散々、ゲイルなのかピータなのかフラフラフラフラしていたカットニスでしたが、そろそろ、本人的にも周り的にも「ピータが好きそう」って感じが見えてきましたね。

というかそうでなければピータが可哀そうすぎるけどね!!!

今作では捕虜となったピータが拷問を受けながらキャピトルの国内放送に出演させられていて、衣装や髪型はバッチリ決まっているのに顔がどんどんやつれていくのが本当に可哀そうで辛くて・・・。

ピータかカットニスかを選んで救ったという反乱軍に怒りが湧く気持ちもわかります。
(反乱軍のシンボルとしての彼女に価値を見出し、ピータを救おうとした首相に反対してプルタークがカットニスを救うのを選んだと話していましたね)

ラスト付近で救出部隊が組まれピータは無事に救出されますが、彼はトラッカー・ジャッカーという殺人蜂の猛毒を使って「カットニスは敵だ、悪だ」と洗脳されてしまっていて、せっかく感動の再会か・・・!?と思ったのに、ピータはカットニスを襲ってしまうんです・・・!!!

そしてそこで映画が終わる・・・。

せ、切ない!!!!!!!泣ける!!!

(でもなんとなく冬ソナのような展開だなぁとうっすら思ったりして)

でも、こうなったなら確実に最後にカットニスと結ばれるのはピータだなって思いますね。安心。

まとめ

シリーズ追うごとに面白くなくなる作品が多い中、今作は回を増すごとに盛り上がっていく感じがしますねーーーーー。

あとはもう終わり方がどうなるのかどうか。というただそれだけって感じです。

元々のハンガー・ゲームが楽しくて観てた人からしたらこの辺りでもうハンガー・ゲームしなくなるので、面白くないと思うかもしれませんが・・・まぁでもそういう最初の設定は段々変わっていきますよね。メイズ・ランナーでも迷路してるの最初だけだし。

 

個人的に、フィリップ・シーモア・ホフマンがこの映画のクランクアップ手前で亡くなってしまたということで、いつ出番がなくなってしまうかハラハラしながら観ていました。
今作ではちゃんと最後までいたよ・・・!良かった!!

エンドロールの時に「フィリップ・シーモア・ホフマンに捧ぐ」という追悼のメッセージが出たのでそこでもう涙腺がやられてしまいました・・・。

ホフマンさんのファンなら彼の最期の作品ですので絶対に観ましょうね!!!!

最後の最後まで素敵な俳優さんですから・・・!!!

脱線しました、ここまで読んでいただきありがとうございました。ちびぞうでした。

 

 


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画像引用元:映画.com

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愛に満ちた静かな日々。映画『パターソン』ネタバレ&感想

―――毎日が、新しい。

このポスターが最高にセンスよくてオシャレな今作!!!!

ジム・ジャームッシュ監督の作品は『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』『ナイト・オン・ザ・プラネット』『デッドマン』の三本しか観たことがないんですが、どれも相性が良くなかったんですよね。どうも、ちびぞう(@cbz_ewe)です。

高校の頃にロベルト・ベニー二にハマっていたちびぞうは、彼が出演している『ナイト・オン~』で初めてこの監督の作品に触れあいましたが、残念ながらこの時は途中で爆睡してしまった・・・!!
その後いくつか観てみたものの、監督に対する苦手意識を払拭できないままここまで来てしまい・・・。

今回は、『スター・ウォーズ新章』でファンになったアダム・ドライバーが主演をしていること、ポスターがめっちゃめちゃオシャレなこと、それに加え家族が観たい!!と言ってくれたのでレンタルで鑑賞・・・。果たして今回の感想は・・・!?

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】 Paterson
【制作国】アメリカ
【監督/脚本】ジム・ジャームッシュ
【製作】ジョシュア・アストラカン、カーター・ローガン
【製作総指揮】オリバー・ジーモン、ダニエル・バウアー、ロン・ボズマン、ジャン・ラバディ
【撮影】フレデリック・エルムス
【美術】マーク・フリードバーグ
【衣装】キャサリン・ジョージ
【編集】アフォンソ・ゴンサウベス
【出演([]内は役名)】

  • アダム・ドライバー[パターソン]
  • ゴルシフテ・ファラハニ[ローラ]
  • バリー・シャバカ・ヘンリー[ドク]
  • クリフ・スミス[メソッド・マン]
  • チャステン・ハーモン[マリー]
  • ウィリアム・ジャクソン・ハーパー[エヴェレット]
  • 永瀬正敏[日本人の詩人]
  • ネリー[マーヴィン(イングリッシュ・ブルドッグ)]

【公開日(日本)】2017年8月26日
【上映時間】118分
【配給】ロングライド
【映倫区分】G
【IMDB】7.4/10.0  (およそ46,500人の評価)

【あらすじ】

ニュージャージー州パターソン市で暮らすバス運転手のパターソン。朝起きると妻ローラにキスをしてからバスを走らせ、帰宅後には愛犬マービンと散歩へ行ってバーで1杯だけビールを飲む。単調な毎日に見えるが、詩人でもある彼の目にはありふれた日常のすべてが美しく見え、周囲の人々との交流はかけがえのない時間だ。【引用元:映画.com

【感想(さりげなくネタバレ!)】

☆3.5/5.0

食わず嫌い、ダメ、ゼッタイ。

「この監督苦手なんだよな~~~」と思ってても、観てみないことには分かりませんね!!!

ちびぞうはすごく学んだ!!

名もなき詩人の、愛すべき日々

地味って言ってしまえばすごく地味。

パターソンという街に住む、パターソンという詩を書くのが趣味な男(バスドライバー)の平凡な一週間が描かれます。

妻のことを愛し、自然と街を愛し、愛犬を愛し、バスの乗客の会話を愛し、散歩のあとのビールを愛す。

映画的な派手な山場というものはなく、ラスト付近で愛犬に自分の大切な詩のノートをズタボロにされてしまいショックを受ける・・・という出来事があります。これが一番の山場といえば山場。
ショックを受けた彼は町を散歩し、日本人の詩人と交流して、新しいノートを貰う。

そしてまた、新たなページに詩を書いていくんだろうなぁ。という穏やかな終わり。

この毎日が少しだけクスッと出来る笑いの要素もあり、心温かくなるんですよね~~~~

人生とは小さな悲劇と喜劇の連続で出来ているんだなぁ。

パターソンと妻の少し鈍感で優しい関係

この映画で一番いいなと思ったのは、パターソンと奥さんの優しい関係性。

奥さんは才能あふれるアーティストで、好奇心旺盛で、カップケーキで稼ごうとか、ギターを教材ごと買って音楽アーティストになろうとか、色々言う。
自分のことだけではなく、パターソンの詩は素晴らしい、ぜひ出版しましょうと、常に前向きでポジティブで少し夢見がち。

だけど、パターソンはそんな彼女に「それはやめといた方がいいんじゃない」とか「もうちょっと考えてから決めたら」とか、そういう言葉を一切言わないんです。基本的にいつも「良いと思うよ」と彼女の言葉を応援する。

アーティストな彼女がその独特のセンスで家の中を不思議な模様に塗りたくっても、一言も文句を言わない。
彼女の作るパイがちょっと不思議な味であんまり好きじゃないな、と思ったとしても(顔には出てるけど)言わない。
そしてそんな彼に「美味しくない?」と聞きつつも、「そんなことないよ」と言われたらそれ以上は追及せずに納得する妻。

なんというかお互いのする些細なことは気にしない鈍感さというものもありつつ、でもそれ以上に
お互いを愛しているから、寛容になれる。すべてを許せる。そんな関係なんだなと思うと、すごく温かくて、この二人の夫婦としての愛の形はすごく理想的だなって思いました。

二人とも平凡で穏やかで嫌味がなくて。

特にえらいなって思ったのは、ラスト付近で詩のノートをボロボロにされた時、妻がパターソンを「だからあんなに詩のコピーを取ってってお願いしたのに」と責めなかったところ。
ちびぞうなら言ってしまいそう。だって再三、長年言い続けてきたことだし・・・脳裏によぎっちゃう。ただただ悲しむパターソンの気持ちに寄り添う。優しいです・・・。

まとめ

何も起きない日常系映画、というジャンルの中でかなり好きな方の作品でした・・・!

(この映画のおかげで、昔爆睡してしまった『ナイト・オン・ザ・プラネット』ももう一度観てみようかな・・・!という気持ちがムクムクと!)

この作品は、詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズや詩人ロン・パジェットへのオマージュになっている(とウィキさんに書いてあった)らしいんですが、残念ながらそんな方向への造詣が深くないもので・・・・・・詩人に詳しい人が観たら、もっと違う感想が出てくるかもしれませんね。

でも、全く知らなくても普通に楽しめるし、劇中に主人公が書いてる詩も素敵だし、良い映画でした。

雨の日の休日の、午前中とかに、愛する人とまったり観るのが良いかも。

 

あっ!アダム・ドライバーの演技も最高だったし、愛犬マーヴィン役のネリーも最高でしたよ!!!

 

 


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画像引用元:映画.com

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いいね!依存のあなたへ。映画『ザ・サークル』ネタバレ&感想

「秘密とは嘘。秘密があると犯罪が起きる可能性がある。説明責任がないと、人は悪い行動をする」

予告編では面白そうな雰囲気も出てたんですけどね~~~~~~。

「ちょっと微妙」そうな世間の空気を感じて劇場で鑑賞するのはやめました、どうもちびぞう(@cbz_ewe)です。

主演はトム・ハンクスとエマ・ワトソン。エマ・ワトソンと言えば最近では『美女と野獣』の本家実写版などに出演していましたねーーーー。ハリポタのハーマイオニー役のイメージがようやく抜けてきた感あります。今後の活躍にも期待したいです!!

エマ・ワトソン主演!映画『美女と野獣』実写版のネタバレ&感想

対してトム・ハンクスは最近ちょっとちびぞうの中で不作続きというか・・・あまり良い印象がなくて怖いんですよねぇ・・・。その怖さを乗り越えて来てくれると良いんですが・・・

ギャガさんの公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】The Circle
【制作国】アメリカ
【監督】ジェームズ・ポンソルト
【脚本】ジェームズ・ポンソルト、デイブ・エガース
【原作】デイブ・エガース「ザ・サークル(早川書房)」
【製作】ゲイリー・ゴーツマン、アンソニー・ブレグマン、ジェームズ・ポンソルト
【製作総指揮】ステファニー・アズピアズー、ロン・シュミット、サリー・ウィルコックス、スティーブ・シェアシアン、エバン・ヘイズ、ピーター・クロン、マーク・シュミューガー、フェデリカ・セント=ローズ、ラッセル・レビン
【撮影】マシュー・リバティーク
【美術】ジェラルド・サリバン
【衣装】エマ・ポッター
【編集】リサ・ラセック
【音楽】ダニー・エルフマン
【音楽監修】ティファニー・アンダーズ
【出演([]内は役名)】

  • エマ・ワトソン[メイ・ホランド]
  • トム・ハンクス[イーモン・ベイリー]
  • ジョン・ボイエガ[タイ・ラフィート]
  • カレン・ギラン[アニー・アラートン]
  • エラー・コルトレーン[マーサー]
  • パットン・オズワルト
  • グレン・ヘドリー
  • ビル・パクストン[ビニー]
  • ベック[本人役]

【公開日(日本)】2017年11月10日
【上映時間】110分
【配給】ギャガ
【映倫区分】G
【IMDB】5.3/10.0  (およそ61,200人の評価)

【あらすじ】

憧れの「サークル」に採用された新入社員のメイは、あることがきっかけでカリスマ経営者のベイリーの目に留まり、新サービス「シーチェンジ」のモデルケースに大抜擢される。「サークル」が開発した超小型カメラによって、自身の24時間を公開することとなったメイは、あっという間に1000万人を超えるフォロワーを集め、アイドル的な人気を博していくが……。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレするよ!!)】

☆2.0/5.0

この映画ってスリラーだったんですか!!!!!?

 

な、なーるほど。そう知って観ればなるほど。なるほどなるほど(笑)となりますね。
流行りのSNS依存に対する警告を含めた社会派ドラマかと思って観ていたら最後ああなったのは・・・なるほどスリラーだからか・・・

いやでも、どんなジャンルか聞いて感想が変わるのって微妙でしょう!!!

何も知らずに観ても面白い!!!って思わせないと!!

というわけでちびぞう的にはこれ、微妙でした。

主人公がどっち寄りなのか曖昧問題

エマ・ワトソン扮するメイ・ホランドが、『サークル』の社員となり、そこの人たちの異常なまでのコミュニティへのこだわり、プライベートを共有しよう!という気持ち悪さに触れて

最終的にはこの会社のやりすぎな部分を明らかにしたりなんだりして、人々の目を覚まさせる展開になるんだな。

と思いきや、メイ自体が24時間体制で自分の生活を晒すという新しい試みにハマっていく・・・そして家族に見放されたり「サークル」の”世界中にあるカメラを使って30分で見つけたい相手を見つける”というシステムを披露する友達を事故で死なせてしまったりして

うん、ここからきっと目を覚まして「サークル」の闇を暴く展開!!!
さぁ現状のおかしさを訴えよう!!!!

と期待するとなぜか「私がサークルを更なる高みへ導くわ!!!」となる・・・。

今までのトップであったトム・ハンクスたちの闇を暴いたまでは良かったんですけど、そこから「SNSで何もかもを共有しよう!」という流れを打ち砕くのかと思いきや、思いきや。ですよ。彼女が新たな「サークル」の重役として、活躍していく・・・という恐ろしい展開に。(だからスリラーなのかもしれませんが)

 

序盤で出て来たカヤックの趣味の時間、それはメイにとって貴重な一人を楽しむ時間。
しかし、ラストではそのカヤックをしながらも「サークル」のカメラに向かって「ハイ、みんな!」と笑顔で声をかける姿が映って終了・・・。

つまり、彼女にとってのプライベートそのものを会社(というか社会?)に捧げてしまったよという恐ろしいオチだったんですよね。

いや、別にオチが恐ろしいのは良いんですけど、その主人公のスタンスが最後の最後まで分かりづらいのが問題。だと思うんです。
メイの立ち位置がわかりづらいため、最後まで共感や感情移入が出来ない。この物語は自分とSNSとの関係を見直すための物語だと思うので、「自分の物語」としても見れないと意味がないと思うんですよね。

そしてその”自分”を投影するためのキャラクターが主人公のメイのはず。だから彼女に共感することが出来なければ、自分の物語として見ることができない。

せっかくの良いテーマなのに、ただただ「最後こっわ」となるだけのスリラーにしてしまったらもったいないと思うんですよ!!!

そもそも一般人のプライベート公開に需要があるのか問題

そりゃエマ・ワトソンほどの美人だったら意味があるかもしれませんが、普通の社員である(という設定だし)メイの私生活を全て公開します!!と言ってもそこまで民衆が熱狂するのか・・・?!という素朴な疑問がありますよね。

見てて面白いなーという事をメイがしていたわけでもないし、あれなら別に彼女の私生活に張り付かなくても、普通にYoutube観てた方が楽しいことしてる人いっぱいいるじゃないすか。

なんかそこらへんも妙にリアリティがないんですよね。
リアリティがない社会のままで進んでいっても、あれはあくまでも「フィクション」の域を出ないんだよなぁ・・・。(当然フィクションなんですけど、リアリティがあればあるほどオチも映えると思うので)

ジョン・ボイエガは一体なんだったのか問題

途中で登場する、「サークル」のシステム開発に携わったという有名人タイ・ラフィート役として登場する、ジョン・ボイエガくん。

スター・ウォーズ新章から始まり、活躍しっぱなしの彼。

こんなところにも出てるのか!!とビックリしましたが、せっかくの彼の名演技も披露されることもなく

「結局彼はなんだったんだ?」

と疑問が浮かぶくらいしか出番もなければそのキャラクターに意味もなかったように感じた(メイに大した影響を与えたようにも見えなかったし)のが非常に残念でしたね・・・。

まとめ

ディスるだけでなく褒めることもしたいなって思っているんですけど、うーーーーーーん。あんまりだったなぁ。褒めたいところもあんまり・・・。

メイがSNSに夢中になって自分の生活を晒すところまでも1時間もかけてるし・・・その割に彼女に共感できないっていうのは結構痛いですよねぇ(まだ言う)

トム・ハンクスもいまいちどの程度悪い奴だったのか分からないまま成敗されてしまったし。

全体的に微妙・・・という、鑑賞前に聞いた世間の評判が間違いなかったパターンのやつかな、とちびぞうは思いました。

とりあえず劇場で観なくて良かった!!!!

あっ、そういえば

ベック出てましたよ!!!!!!!

 

 


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