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頑固親父が守りたかったもの。映画『フェンス』ネタバレ&感想

彼らがフェンスで守りたかったのは、ゆるぎない愛――

ちびぞう母チョイスの作品。なんとなーく黒人差別の話なのかなーという程度の前知識でレンタルして観てみました。

デンゼル・ワシントン監督・主演作。俳優さんの監督作というとあまりヒットしないイメージがあるので少し不安になりつつ鑑賞。

日本での劇場公開は無し。原作は同タイトルの戯曲のようです。

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】 Fences
【制作国】アメリカ
【監督】デンゼル・ワシントン
【脚本】オーガスト・ウィルソン
【原作】オーガスト・ウィルソン『Fences
【製作】スコット・ルーディン、デンゼル・ワシントン、トッド・ブラック
【製作総指揮】モリー・アレン、イーライ・ブッシュ、アーロン・L・ギルバート、アンディ・ポラック、デイル・ウェルズ、チャールズ・D・キング、キム・ロス
【撮影】シャルロッテ・ブルース・クリステンセン
【美術】デビッド・グロップマン
【衣装】シャレン・デイビス
【編集】ヒューズ・ウィンボーン
【音楽】マーセロ・ザーボス
【出演([]内は役名)】

  • デンゼル・ワシントン[トロイ・マクソン]
  • ヴィオラ・デイヴィス[ローズ・リー・マクソン]
  • スティーブン・ヘンダーソン[ジム・ボノ]
  • ジョヴァン・アデポ[コーリー・マクソン]
  • ラッセル・ホーンズビー[ライオンズ・マクソン]
  • ミケルティ・ウィリアムソン[ミケルティ・ウィリアムソン]
  • サナイヤ・シドニー[レイネル・マクソン]

【レンタル開始日(日本未公開)】2017年6月7日
【上映時間】139分
【配給】パラマウント映画
【IMDB】7.2/10.0  (およそ70,000人の評価)

【あらすじ】

1950年代の米ピッツバーグ。トロイ・マクソンは、妻ローズと息子のコーリーと暮らしている。彼はかつて野球選手だったが、人種差別によってメジャーリーガーの夢を絶たれ、今では苦しい生活を送っていた。ある日、コーリーがアメフトのスカウトマンに見出され、でNFLを目指す大学推薦の話が舞い込んでくる。しかし、トロイは進学に反対、夢を見過ぎたと責め立て、家の裏庭のフェンス作りを強制的に手伝わせる。息子の夢を完全に潰してしまったトロイ。親子関係に亀裂が走り、ふたりを見守っていたローズとも激しく衝突することになるが・・・。【引用元:公式サイトより

【感想(ネタバレしています!)】

☆3.5/5.0

結構面白かった!

退屈な人には退屈に思えるかもしれない・・・と思う理由は、デンゼル・ワシントン演じる父親トロイの人物像!

とにかく喋る、喋る!喋りまくる!結構な早口でまくしたてます。しかも内容はあってないような過去の話だったり、奥さんとの出会いの話だったり、いかに自分が苦労して今の生活を手に入れたか、黒人差別がどうまかり通っているかなどなど。
一言で言えば「自分語り」。

序盤からのデンゼル・ワシントンの一人舞台に、ちびぞうはあまりの台詞量に圧倒されていましたが、正直しっかりと頭に入ったかと言えばそうではないです。吹き替え版だったんですが、聞いてるうちにだんだん内容が入らなくなってくる・・・(笑)台詞回しも下品だったりしますしね。

でも、この一見退屈に思える自分語りが、地味にポイントだと思っているんです。

こういう親父、いるよねっていう。

この父親像というのは、18年連れ添った妻を裏切り外で女を作った上に妊娠させたり、自分の理想や価値観を家族に押し付け息子の夢を自分の手で潰したりする人間的に欠陥のあるしょーーーもない親父。

背景に黒人差別というものがあり、それがこの父親をここまで歪ませてしまった、という部分があるのかもしれませんが、ちびぞう的にぶっちゃけ黒人差別などはこの映画にあまり関係がない気がしました。

だって、こういう父親って多分どこにでもいるでしょ。

原作者はこの映画を監督するのは黒人しか許さなかったようで、黒人が監督し演じることに深い意味があったようですが、いまいちちびぞうには分かりませんでした・・・。

この映画の良さは、奥さんであるローズとの人物的な対比だったり、息子のコーリーとの関係にあると思います。

親父が死んで、息子が「俺はこの家で一度も親父から逃れられなかった。一度くらいは逃げたいんだ」と言い、トロイの葬式に出席することを拒絶します。

しかしそれを許さない妻のローズ。

このラストは、「父親からは逃れられない」という事実が突きつけられる。どんなに最低でも敬うべき部分はある、と。

父親と息子の間に生まれた亀裂が、父親の死後、息子の中で埋まっていくという形のストーリーはそんなに珍しくないんですが、この映画は演出の仕方が良かったな。家の裏で作られていた「フェンス」という小道具も含め。

誰が見ても憎むべき父親と、それに向き合うことの出来なかった息子。

最後、父親がよく口ずさんでいた歌を息子が歌うシーンがあるんですが、そこが良いんです。
ちびぞうも、父親がよく歌っていた歌を歌える、ということを思い出してハッとしましたね。タイトルも歌手もわからないけれど、歌える曲というのがいくつかあるんです。

自分の中に根付く父親という存在は、自分の意識していないところでひょっこり顔を出してきて、その大きさを自覚させられるという、良い演出でした。

出来れば父親が死ぬ前に、父親に対する価値観を変えられれば良いんですけど、実際それは難しいのかな。”死”というものを媒介して初めて理解したり、心を寄せたりできるというのも、不思議なものです。

 

観終わった後に、自分を形成する”親”という存在について考えられる、良い映画でした。

 

 


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画像引用元:映画.com/IBDB