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世界最大級の知の殿堂『ニューヨーク公共図書館/エクス・リブリス』裏側に迫るドキュメンタリー映画。感想

世界でもっとも有名な図書館のひとつ その舞台裏へ

岐阜の柳ケ瀬にあるCINEXにて岐阜新聞映画部さん主催のトークイベントが行われていました。登壇者は岐阜市立図書館・館長の吉成信夫氏。が、ちびぞうは今回は普通の上映回で鑑賞。

第74回、ベネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞したという本作ですが前知識などもないまま観てきました。その上映時間はなんと驚異の3時間越え!

最近、ドキュメンタリー映画の面白さに気付いたちびぞうですが、この長さは初体験。(インド映画のように途中休憩が欲しいですね…)

パンフレットはこんな感じ!とにかくオシャレ!

裏面はこう!行ってみたくなるぅうう!!

B5サイズっぽい縦長のパンフ。30Pで税込み800円。

監督のインタビューのほか、本館のガイドマップや図書館の人々、図書館のゲストの人々の紹介、ストーリー一覧などが載っていてこの映画の理解を深める手助けがいっぱい!

ちなみに映画館の物販コーナーには現地でしか購入できないNYPLのオリジナルTシャツやトートバッグが4,500円で販売されていました。(トートバッグが結構人気ですぐに売り切れていた)

映画情報

【原題】Ex Libris: The New York Public Library
【制作国】アメリカ
【監督/製作/編集】フレデリック・ワイズマン
【製作総指揮】カレン・コニーチェク
【撮影】ジョン・デイビー
【出演([]内は役名)

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  • ポール・ホルデングレイバー
  • エルビス・コステロ
  • パティ・スミス
  • エドムンド・デ・ワール
  • ハリール・ジブラーン・ムハンマド
  • タナハシ・コーツ
  • ジェシカ・ストランド
  • リチャード・ドーキンス
  • ユーセフ・コマンヤーカ
  • イバン・レスリー
  • キャロリン・エンガー
  • マイルズ・ホッジス
  • キャンディス・ブロッカー・ペン

【公開日(日本)】2019年5月18日
【上映時間】205分
【配給】ミモザフィルムズ、ムヴィオラ
【IMDB】7.4/10.0 (およそ820人の評価)

あらすじ

19世紀初頭の荘厳なボザール様式の建築物である本館と92の分館に6000万点のコレクションを誇るニューヨーク公共図書館は、地域住民や研究者たちへの徹底的なサービスでも知られている。2016年にアカデミー名誉賞を受賞したドキュメンタリーの巨匠ワイズマンが監督・録音・編集・製作を手がけ、資料や活動に誇りと愛情をもって働く司書やボランティアの姿をはじめ、観光客が決して立ち入れない舞台裏の様子を記録。同館が世界で最も有名である理由を示すことで、公共とは何か、そしてアメリカ社会を支える民主主義とは何かを浮かび上がらせていく。

シーン一覧(パンフより抜粋)

  1. 午後の本 Books at Noon ~リチャード・ドーキンス博士
  2. 司書たちの対応
  3. 民間支援者に語り掛けるマークス館長
  4. ジェロム・パーク分館
  5. 著者と語る ~イスラム教と奴隷制
  6. 舞台芸術図書館 ~ブルーノ・ワルター講堂のピアノ・コンサート
  7. ブロンクス分館の就職フェア
  8. 幹部たちの会議
  9. ピクチャー・コレクションニューヨークのユダヤ二世について著者のトーク
  10. 公共図書館ライブ ~エルヴィス・コステロ
  11. 幹部たちの会議
  12. 午後の本 Books at Noon ~ユーセフ・コマンヤーカ
  13. 中国系住民のためのパソコン講座
  14. 点字・録音本図書館
  15. 障がい者のための住宅手配サービス
  16. ミッドマンハッタン分館
  17. ブロンクス分館の演奏会
  18. 黒人文化研究図書館 ~”ブラック・イマジネーション”展
  19. 舞台芸術図書館 ~マイルズ・ホッジス
  20. 幹部たちの会議
  21. 読書会
  22. 隣接する公園で本を読む人々
  23. 幹部たちの会議
  24. 舞台芸術図書館~劇場の手話通訳者
  25. 図書館の内側
  26. パークチェスター分館
  27. ジョージ・ブルース分館
  28. シニアダンス教室
  29. ウェストチェスター・スクエア分館
  30. 黒人文化研究図書館 ~90周年の祝賀会
  31. 読み聞かせ教室 ~マクドナルドおじさんの歌
  32. バーグ・コレクション
  33. 幹部たちの会議
  34. 印刷コレクション
  35. 各分館スタッフとのミーティング
  36. 点字・録音本図書館
  37. ジェファーソン・マーケット分館
  38. 公共図書館ライブ ~パティ・スミス
  39. 施設担当の報告
  40. 幹部たちの会議
  41. 図書館ディナーの準備
  42. 委員会への報告 ~黒人文化研究図書館の蔵書について
  43. 幹部たちの記念撮影
  44. 公共図書館ライブ ~タナハシ・コーツ
  45. 幹部たちの会議
  46. マコームズ・ブリッジ分館
  47. 公共図書館ライブ ~エドムンド・デ・ワール 

感想

☆2.6/5.0

ものっっっすごい勉強になりました!!!!!3時間みっちりお勉強!!!

さすが図書館を題材にした映画。その館内に入った時のように、BGMやナレーションなどは全く入らず、静かで荘厳な雰囲気が漂っていました。しかしその静かさとは裏腹にすさまじい情報が流れ込んでくる!!

ちびぞうは学がそんなにないものですから、正直ついていけない場面もチラホラ…ウトウトしてしまった部分も。

分館の数がすごい!

マンハッタンにある本館と、4つの研究図書館、地域に根付いた88の分館を合わせ全部で92の図書館がネットワークでつながっておりこれら全てが「ニューヨーク公共図書館」なのです。

こんなにたくさんの図書館があるなんてすごい。さすが世界最大級の図書館。

岐阜には県立と市立の2つくらいしかないから驚きです(ちびぞうは少なくともその2つしか知らない)

田舎と比べるなよと言われる前に都内の図書館の数も調べてみましたが全部でおそらく141館かな?区ごとに区立図書館が多数あるようですね。

公共、の意味とは

「公立」ではなく誰にでも開かれたという意味の「公共」。運営母体は非営利のNPO法人であり、市や州からの出資と、民間の寄付によって成り立っているようです。

現在・未来を地域とともにどう生きていくか

いかにして予算を確保していくのか、デジタル化の波にどう乗っていくのか。電子本と紙の本の割合は?貴重な財産としての本とベストセラーのどちらを選ぶのか。などなど図書館幹部の運営方針の会議を主軸に

ニューヨークで根強く残る国民差別の問題、ホームレスの問題、身体的精神的ハンデを持つ人々への福祉的な対策

さらに創作人がアートへ昇華させるための写真のコレクション、ミュージシャンによる演奏会、朗読会などの芸術的な活動などなどの一部が映し出されます。

上にまとめたストーリー一覧を読んで頂ければ分かる通り、まさに「こんなに多様な仕事を図書館が担っているの!?」と驚きの声が隠せない感じ。

ただ本を蔵書するだけではない図書館の歴史、その活動内容の進化と、更に未来へ向けた進化の過程を垣間見ることができます。

映画の中だけの話かと

呑気に考えていたちびぞうでしたが、このドキュメンタリー内で「男性が1ドル稼ぐ時女性は77ドル、さらに黒人女性だと64ドルしかもらえない」という話を聞いて現状にショックを受けました。

2015年に発行された教科書の中にある黒人奴隷についての記述に嘘がある話なんかも衝撃的でしたね。

映画の中でいくら差別が描かれようと、「フィクション(作り物)だし」という目で見ていた自分に改めて気付き。これを受けてまた映画の中で出る「差別」というテーマを深く受け止めていけるのではないかと思いました。

ドキュメンタリーというのは真実を映す鏡ですから、やはり現地で生きてい人々の生の声が聴けるわけで、そこにあるリアルにはとても重みがあります。

演出も厳か

ナレーションもBGMもない。淡々と会議の内容や公演・イベントの内容を映していくだけの手法がとても静かで厳かで、ちびぞうは好きでした。

いつか行ってみたいなぁ。ニューヨーク。

図書館はもとよりアメリカそのものの歴史やアートに触れることが出来る良い機会だと思います。3時間というのはなかなか長いですし、DVDで休み休み鑑賞したいですね…(笑)

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4トンの壁に描かれた高額の落書き。映画『バンクシーを盗んだ男』ネタバレ&感想

“A WALL IS A VERY BIG WEAPON IT’S ONE OF THE NASTIEST THINGS YOU CAN HIT SOMEONE WITH.”

最近、東京でバンクシーのものと思われるグラフィティが防潮扉に描かれていて「誰かが持っていくと危ないから」と撤去されたニュースがありましたね!

その前にはザザビーズにて高額で落札されたバンクシーの絵が落札直後にシュレッダーにかけられるという衝撃的なニュース(額縁にシュレッダーがはめ込まれており”落札された絵が刻まれる”というところまでがバンクシーの意図)もありまして、ちょいちょい日本で普通に過ごしていても日常の中で「バンクシー」という名前を聞くようになってきました!

ちびぞうはネットでチラッとバンクシーの絵を見たことがある程度で『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を視聴し、バンクシーのファンになったにわかです(笑)
その後に観た『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』も最高でしたね・・・

今回は以前、ミニシアターを紹介する記事にて書いたヒューマントラスト渋谷さんでの鑑賞でした!

ヒューマントラストシネマ渋谷:東京【素晴らしきミニシアターの世界】2館目

前売り券に、特典でトートバッグがついていたので前売り券を購入しました!トートバッグはこんな感じ。

 

大きさはおよそ33cm×26cmほど。材質はこれは布でなく紙…?ポリエステル…?的な。ツタヤとかゲオのレンタル袋と似たような感じです(笑)あんまり使い勝手良くなさそう!!(笑)

パンフはこんな感じ!

なんと、指定された席でくじ引きが行われ抽選に当たると非売品のTシャツがもらえるというキャンペーン?をやっていました!

この日は一緒に観る友人が遅れてくるということだったのでちびぞうが先に席を取り、そのあと友人が私の隣の席を取ったんですよね。

そしたらなんとその友人がTシャツを当ててしまったー!!!!!!ずるい!!!私が選んだ席の隣だったから当たったのでこれは私のTシャツでは!?!と思ったんですが大人げないので大人しく「ずるい!!!(大人しくない)」と騒ぎました。Tシャツは譲ってもらえませんでした。ずるい。

ちなみに当たったTシャツのデザインはこんな感じでした。

↑表

↓裏

【映画情報】

【原題】The Man Who Stole Banksy
【制作国】イギリス、イタリア
【監督】マルコ・プロゼルピオ
【脚本】マルコ・プロゼルピオ、フィリッポ・ペルフィド、クリスティアン・オモデオ
【撮影】ヤコポ・ファリーナ
【編集】ドメニコ・ニコレッティ
【音楽】フェデリコ・ドラゴーニャ、マッテオ・パンサーナ
【ナレーション】イギー・ポップ
【出演】

  • ロン・イングリッシュ[現代アーティスト]
  • スティーブ・ラザリデス[バンクシーの元マネージャー]
  • ステファン・ケスラー[収集家]
  • クリスチャン・オモデオ[芸術史家]
  • ベラ・バブウン[撮影当時のベツレヘム市長]
  • パオロ・ブッジャーニ[芸術家/パフォーマー/収集家]
  • フィリップ・トイヒトラー[収集家/芸術家]
  • カミッロ・タロッツィ[修復家]
  • ワリド・”ザ・ビースト”・ザワラー[タクシー運転手]
  • アブ・ヤメン[BANKSY’S SHOP店主]
  • マイケル・カナワティ[壁の元持ち主]

【公開日(日本)】2018年8月4日
【上映時間】93分
【配給】シンカ
【映倫区分】G
【IMDB】6.1/10.0  (およそ23人の評価)

【あらすじ】

パレスチナ・ヨルダン西岸地区にあるベツレヘム。紛争地区に指定されているその場所にはパレスチナとイスラエルを分断する高さ8メートル、全長450キロを超える巨大な壁が存在する。その壁にバンクシーが描いた「ロバと兵士」の絵は、パレスチナの住民たちの反感を買い、絵が描かれた壁はタクシー運転手のワリドによってウォータージェットカッターで切り取られてしまう。ワリドはその壁画をオークションに出品し、最高額の入札者への売却を試みるが……。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレなし)】

☆2.3/5.0

うーん。今までのバンクシー関連のドキュメンタリー映画の中では一番「あんまりだな・・・」って感じでしたね。

イギーポップの渋すぎるナレーションは良かったです!!!

なんというか、言いたいことは分かるんですよ!!!

パレスチナとイスラエルの壁に描かれたアートというかグラフィティという名の違法の落書き。おそらくバンクシーは己の落書きの世間的な価値を知っていてそれが消される(もしくは切り取られる)ことでその壁を崩すという事に世界の目を向けさせたくて行ったプロジェクトなわけで。

その壁に描かれた「兵士とロバ」という絵が地元住民の怒りを買い、それを切り取ったワリドという地元の男がネットオークションに4トンものコンクリートの壁を出品するという展開から、ワリドが本作の主人公として物語が語られるわけですが。

アートというカテゴリーの中にバンクシーの落書きを無理やりはめ込もうとする人たち、4トンものコンクリートの壁が絵画として高額で落札される事実。それに振り回される地元住民。

アートとは?グラフィティとは?それを取り巻く国の歴史的背景とは?

とても考えさせられる部分がたくさんあるんですけど、なんといっても

映画の構成がくどい!!!!

ちびぞう的にはこのくどい構成がダメでした・・・。93分間とそんなに長くはない映画なんですけど、長く感じる。沢山の人が出てきて意見を言うんですけど、大体の人が同じような話をするんですよ。

うんうんそれね、分かった分かった・・・という気分で観なければならず・・・。残念でした。こちらの映画はこれ単品で楽しむんではなく、今までに出ているバンクシーのドキュメンタリー映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』を観てからの鑑賞をオススメします!その方がバンクシーという人物についても知った上で、この国の現状だったりアート界の現状だったりに視点を向けて考えられると思うので。

以上、感想短めですがネタバレがどうのという作品ではないのでこれにて!

ここまで読んで頂きありがとうございました!ちびぞうでした!

 

 


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写真家・鋤田正義さんに迫るドキュメンタリー映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』感想

デヴィッド・ボウイ、YMO、忌野清志郎―――
時代を駆け抜けた天才たちの《永遠の時》を獲得した写真家・鋤田正義の軌跡をたどるドキュメンタリー

最近、ドキュメンタリー映画熱が少しずつ上がってきています!!!

こちらもちびぞうの働く映画館で上映されていた作品。

鋤田さんという写真家の方は存じ上げていなかったので前知識ゼロでの鑑賞です!
ちびぞうも知っているような有名人の方がたくさん出演されているのでそれだけでも興味がそそられますよねー!

残念ながらパンフレットの販売はしていなかったのでゲットできず・・・。

公式サイトはこちら!

【映画情報】

【制作国】日本
【監督】相原裕美
【プロデューサー】相原裕美、鋤田晃久
【エグゼクティブプロデューサー】石田美佐緒、金子学、松井智
【スーパーバイザー】井上智、追分史朗、近藤正司
【撮影】マーク東野、北島元朗
【整音】田辺邦明
【カラリスト】小林哲夫
【編集】臼杵恵理
【音楽】鋤田晃久
【助監督】松永光明
【出演([]内は役名)】

  • イギー・ポップ[ナレーション]
  • 鋤田正義
  • 布袋寅泰
  • 山本寛斎
  • 高橋靖子
  • ジム・ジャームッシュ
  • 永瀬正敏
  • フィル・アレキサンダー
  • 糸井重里
  • リリー・フランキー
  • クリス・トーマス
  • ポール・スミス
  • 細野晴臣
  • 坂本龍一
  • 高橋幸宏
  • 鋤田哲雄
  • 日暮真三
  • 平田比呂志
  • 寺山偏陸
  • デビッド・ゴドリス
  • アーロン・ジチェ
  • スージー・ロンソン
  • MIYAVI
  • 箭内道彦
  • 羽良多平吉
  • ロス・ハルフィン
  • マウリッツオ・グイドーニ
  • マッテオ・メイリ
  • ジョナサン・バーンブルック
  • アキマ・ツネオ
  • PANTA
  • 鋤田弘子
  • マーク東野
  • 内山直之
  • 是枝裕和
  • 北島元朗
  • 立川直樹
  • DRUM TAO
  • 宮原夢画
  • ガイ・ホワイト
  • 野上眞宏

【公開日(日本)】2018年5月19日
【上映時間】115分
【配給】パラダイス・カフェフィルムズ
【映倫区分】G

【解説】

デビッド・ボウイと40年以上も親交を重ね、イギー・ポップ、マーク・ボラン、YMO、寺山修司、忌野清志郎らのポートレート、アルバムジャケットなど数多く手がけた写真家・鋤田正義を追ったドキュメンタリー。1938年に九州の炭鉱町で生まれた鋤田は60年代に広告写真で注目を集め始める。70年代には海外へ飛び、ボウイとの運命的な出会いを果たした。布袋寅泰、山本寛斎、永瀬正敏、糸井重里、リリー・フランキーら鋤田と親交のある人びとの証言を交えて、2018年5月に満80歳を迎える鋤田の創作活動や人柄に迫っていく。【引用元:映画.com

【感想】

☆3.5/5.0

鋤田さんが幼少期の頃に家の店番をしていた時、その窓から見える外の景色をまるでカメラを通してみているようだった。窓枠が、自分の初めてのファインダーだった。というエピソードに、彼が生まれながらの写真家だと実感。

この映画で見れる鋤田さんの全ての作品は、被写体のかっこよさとかかわいさとか表面上のものを写したものではなく、その人の自然体を、魂そのものを写し出したような生々しさと力強さを感じるんですよね。総じて美しいって一言に収束しちゃうんですけど・・・!!!

劇中で「カメラは写真家の武器であって、武士が持っているような刀を突きつきられるようなものだから」という台詞があり、鋤田さんはその武器をもっているのに相手に突きつけられているという感覚を受けさせない。だから自然体を写し出すことができるんだなー、と感動しました。カメラマンとしてのプロの技はもちろんですがそれ以上に、鋤田さんが生まれながらにして持っているもの。という印象ですね。

以前、黒沢清監督の『ダゲレオタイプの女』を観た時も思ったんですけど、被写体と写真家の関係って少しエロスを感じるんですよちびぞうは。

『ダゲレオタイプの女』感想/黒沢清ミーツ仏映画!

「見る」って行為は縛って縛られての魂のぶつかりあいというか。

MIYAVIも劇中で「互いの全てをぶつけ合ってまるでセックスのようだった」って表現しているんですよねーーー。やっぱりそういう感覚あるんだ!?分かるーーー!!!と思ってしまった(笑)

最後の方で語られた、震災の時に写真が流れてしまった家族の話をしていて号泣してしまいました。亡くなったおばあちゃんの写真が、見つからない。おばあちゃんがどういう人物だったのかを語るものが何もない。とても悲しいことですよね。

ディズニーの『リメンバー・ミー』でも、祭壇に写真が飾られていない人は現世の家族に会いにいけないという縛りがありました。写真というものは、いなくなってしまった人と現世を生きる人を繋ぐ大切なものなんですよ。

愛してくれる人達を忘れない。CGアニメ映画『リメンバー・ミー』ネタバレ&感想

そう考えると写真家の人の仕事というのはとても偉大で、人ひとりの生きた証のようなものを後世に繋いでいく仕事なんですよね。

有名アーティストから名もない普通の人まで、鋤田さんの写真はその人の表面的ではない人としての軌跡のようなものが垣間見れる。だからこそ、これだけの人に愛される写真家さんなんでしょうね。

まとめ

素晴らしいことを学べる映画でした。有名な写真家さんは、古い手法にこだわる人も多い中で鋤田さんは最新の技術をすぐに取り込もうとするそうです。そういう姿勢も時代を超えて活躍する秘訣なのかもしれませんね。

 

ドキュメンタリーが好きな方にはオススメな作品です。

どうでも良いんですけど、ポール・スミスが出ていてめちゃめちゃカッコいいロマンスグレーのおじさま(おじいさま)でした!!!素敵すぎる!!!!

 

 


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あなたは人間を信じますか?映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』ネタバレ&感想

「この中ではすべての人が平等に権利を持ち、公平に扱われる」

劇中の美術館で行われる「ザ・スクエア」という展示。

これは”傍観者効果”という、誰かが助けを求めていた時にその場にいる人間が多ければ多いほど「自分じゃなくても誰かがやるだろう」と責任が分散してしまうという心理にスポットを当て、地面に引かれた四角い線の中でもし誰かが助けを求めていたら、その中にいる人はその人を「助けなければならない」という義務が生じるという実験的な展示だという。

こういった人間の根本的な善の心とそれに対して実際に動けるのかどうか?という部分にメスを入れ、皮肉をふんだんに入れ込んだ今作。さらりとあらすじを読んだだけでちびぞうは引き込まれてしまいまして。

最近、『万引き家族』が受賞したカンヌ国際映画祭のパルムドールを獲った作品のようです!!

パルムドール受賞作のここがイイ!映画『万引き家族』ネタバレ&感想

地元の映画館で母と共に鑑賞してきました!

パンフはこういう感じ!

スクエアです。ちゃんと真四角。26Pで税込み800円。
UltRA Graphicsの山田裕紀子さんがデザインされています。中は黄色を基調としていてとってもオシャレ・・・!美術館をテーマにした映画だけあってスタイリッシュですね。

【映画情報】

【原題】The Square
【制作国】スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク合作
【監督/脚本】リューベン・オストルンド
【製作総指揮】トマス・エスキルソン、アグネタ・ペルマン、ダン・フリードキン、ブラッドリー・トーマス
【製作】エリク・ヘンメンドルフ、フィリップ・ボベール
【撮影】フレドリック・ヴェンツェル
【美術】ジョセフィン・アスベルグ
【衣装】ソフィー・クルネガルド
【ヘアメイク】エリカ・スペツィク
【音響デザイン】アンデシュ・フランク
【ミックス】アンドレアス・フランク、ベント・ホルム
【編集】リューベン・オストルンド、ジェイコブ・シュルシンガー
【キャスティング】ポーリーヌ・ハンソン
【挿入曲】ボビー・マクファーリン、ジャスティス
【出演([]内は役名)】

  • クレス・バング[クリスティアン]
  • エリザベス・モス[アン]
  • ドミニク・ウェスト[ジュリアン]
  • テリー・ノタリー[オレグ]

【公開日(日本)】2018年4月28日
【上映時間】151分
【配給】トランスフォーマー
【映倫区分】G
【IMDB】7.3/10.0  (およそ34250人の評価)

【あらすじ】

現代アート美術館のキュレーターとして周囲から尊敬を集めるクリスティアンは、離婚歴があるものの2人の娘の良き父親で、電気自動車に乗り、慈善活動を支援している。彼が次に手がける展示「ザ・スクエア」は、通りかかる人々を利他主義へと導くインスタレーションで、他人を思いやる人間としての役割を訴えかけるものだ。そんなある日、携帯電話と財布を盗まれたクリスティアンは、その犯人に対して取った愚かな行動によって予想外の状況に陥ってしまう。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレするよ!)】

☆3.5/5.0

社会やSNSに対する風刺、ブラックコメディ、矛盾への指摘と・・・満載で考えられさせられることばかり!!!すごく面白かった!

北欧の、スウェーデンという国は福祉に手厚い、というような印象を持ってる人は衝撃を受ける”真実”がこの映画にはありました。

主人公のキャラクターが良い!

主人公は映画の序盤で「男に追われて泣き叫んでいる女」を助けようとするんですが、実はそれは詐欺師の罠で、財布とスマホを盗まれてしまう。
スマホのGPSで大体の位置は掴めるものの、団地のどの家の人が盗んだのかまでは分からない。困った主人公が部下に相談すると「私はお前の住所も把握している。私から盗んだものを全て返さないと・・・」という脅迫めいた文章を打った紙を全世帯のポストに入れて回りましょう!というハチャメチャな提案をされ、それを仕方なく受け入れることに。

この方法もアホっぽくてなぜ警察に頼らないのかが不思議なんですが・・・ともかく主人公はその作戦を決行する。そして盗まれた財布とスマホは戻ってくる。一件落着・・・かと思いきや!後日、その手紙のせいで両親に泥棒扱いされてしまったという男の子が主人公の前に現れる。
しかし主人公は彼の両親に電話で説明してやろうともせず、帰れと追い払うばかり。揉み合って階段から落ちてしまった様子の男の子も助けない。

このように「ザ・スクエア」の展示を企画した主人公が、自分の社会に対する”善の意識”を私生活で別の人間にしっかりと行動で示せているかと思えばそうではないんです。

富裕層と貧困層の人々では、住んでいる場所が区分けされていて、富裕層に属する主人公は貧困層の住む団地の人間を見下しているし人間扱いをしていない。そこの矛盾がこの映画で何よりも大きく、一番の風刺ポイント。

パンフレットには、「善行は心に余裕のある者しか行えない」的な事が書いてありましたがこの主人公がまさにそれで、序盤に困っている人を助けようとした時の心理状態と、中盤、男の子を追い払おうとする場面での心理状態では大きな違いがあり、「自分に余裕がないと人は助けられない」というのを上手く表現していましたね・・・。

主人公はラストで、男の子の家に電話をかけたり、謝罪する動画を撮ったり、娘たちと一緒に団地へ出向いて彼の家を探したりするんですが・・・すでに男の子の家族は引っ越してしまっていました。
謝罪することの出来なかった主人公の後ろ姿を娘が見つめます。しかし主人公は振り返らないのでどんな表情をしているかは分からない・・・そして映画は終わります。

ちびぞうはこの理想とする生き方を実際には出来ていないという矛盾たっぷりの主人公が物語全体を面白くしていて非常にいいキャラクターだと思いました。
ラストでそんな自分に気付いて終わる、という形だと思うんですけど、表情が分からないので主人公が人間的な変化をしたのかどうかは観客に委ねられます。

ちびぞうは良い方に変化したと思うんですけどね・・・。

モンキーマンの演技がすごい!!

パフォーマー・オレグとして登場するテリー・ノタリーは『猿の惑星』や『キング・コング:髑髏島の巨神』などで活躍するモーション・キャプチャー俳優。

続編に期待高まる!映画『キングコング:髑髏島の巨神』ネタバレ&感想

こちらの猿の惑星の記事でテリー・ノタリーの写真が見られます。

今作では、展示のお披露目パーティが開催され、そこにゲストとして招かれた猿人間として登場しますが・・・この猿の演技が本当にすごい・・・。そしてこの猿の演技に会場の気まずい空気もものすごく辛い!!しかも結構な長回し・・・。
この場にいたら本当に恐ろしいなと思いました・・・。

この映画はこのシーンだけでも観る価値ありです!!!

って言っても過言ではないです。それくらいインパクトのあるシーンでした。

まとめ

スウェーデンの社会にメスを入れるための皮肉や風刺たっぷりのブラックコメディを軸にした、ヒューマンドラマという感じですね。

笑えるシーンと笑えないシーンのさじ加減が上手ですし、気まずいシーンは本当に気まずい。
観終わった後は色々と考えさせられます。

「ただのバッグでも美術館の1コーナーに飾れば芸術品となり得る」・・・という台詞を聞いて、『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』を思い出しました。

美術館やアート界に興味がある人にもオススメです!

 

 


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元夫から届いた小説の内容とは。映画『ノクターナル・アニマルズ 夜の獣たち』ネタバレ&感想

20年前に別れた夫から送られてきた小説。
それは愛なのか、復讐なのか。

なんだか若干、エロティックサスペンスっぽいタイトルでレンタルしにくいなーって感じがするんですけど、あらすじを見てみると全くそういう系の映画ではないのが分かります(笑)ちびぞうです。なんだかすいません(笑)

えー、主演はスーパーマンの恋人役で有名なエイミー・アダムスと、『プリズナーズ』『ナイトクローラー』などダークな映画に出たら映えまくりな鬱俳優のジェイク・ギレンホール!!(ちびぞうも大好き!!)

監督・脚本を手がけるのは『シングルマン』トム・フォード

別れた旦那から小説が届く…そしてその内容は暴力的なもので…というあらすじに惹かれたのと、ギレンホールさんが好きなので借りてみました(*´∀`*)

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】Nocturnal Animals
【制作国】アメリカ
【監督/脚本】トム・フォード
【原作】オースティン・ライト「ミステリ原稿」
【製作】トム・フォード、ロバート・サレルノ
【撮影】シーマス・マッガーベイ
【美術】シェーン・バレンティーノ
【衣装】アリアンヌ・フィリップス
【編集】ジョーン・ソーベル
【音楽】アベル・コジェニオウスキ
【出演([]内は役名)】

  • エイミー・アダムス[スーザン・モロー]
  • ジェイク・ギレンホール[トニー・ヘイスティングス/エドワード・シェフィールド]
  • マイケル・シャノン[ボビー・アンディーズ]
  • アーロン・テイラー=ジョンソン[レイ・マーカス]
  • アイラ・フィッシャー[ローラ・ヘイスティングス]
  • エリー・バンバー[インディア・ヘイスティングス]
  • アーミー・ハマー[ハットン・モロー]
  • カール・グルスマン[ルー]
  • ロバート・アラマヨ[ターク]
  • ローラ・リニー[アン・サットン]

【公開日(日本)】2017年11月3日
【上映時間】116分
【配給】ビターズエンド、パルコ
【映倫区分】PG12
【IMDB】7.5/10.0  (およそ180,000人の評価)

【あらすじ】

アートディーラーとして成功を収めているものの、夫との関係がうまくいかないスーザン。ある日、そんな彼女のもとに、元夫のエドワードから謎めいた小説の原稿が送られてくる。原稿を読んだスーザンは、そこに書かれた不穏な物語に次第に不安を覚えていくが……。【引用元:映画.com

【感想(結末についても触れます!)】

☆3.0/5.0

そこまで難解過ぎず、テーマは”復讐”だったり”自分のあるいは恋人の生き方に対する警告”だったりと軽すぎず重すぎず、しかし「あれはこういう意味だったのだろうか」と何度も繰り返し考察できる良作だったと思います。

ちびぞうは普通に復讐の話だと解釈してしまいましたが、そうではない考察をしているこちらのブログがなかなか興味深かったので紹介します。

「ノクターナル・アニマルズ」 ラストが”復讐”ではないとしたら

太った女性たちのヌード展示という衝撃的なオープニングからなんとなく不快さを煽られて、届いた小説のシーンでは理不尽な暴力が繰り広げられなんとなくミヒャエル・ハネケ監督の作品を思わせる感じが好きでした、『複製された男』などでも見られた、ギレンホールさんの一人二役も良かったです!

おおまかなストーリー

ほとんどの場面が、元夫エドワードから送られてきた小説の中身のシーンで、その合間にそれを読んでいるスーザンの場面が挟まれる、という感じです。

小説の内容は、主人公のトニーが夜中に家族と車でどこかへ出かけようと移動しているシーンから始まる。
不穏な運転をする車に絡まれて停車を促され、チンピラたちに娘と妻を奪われて置き去りにされてしまうトニー。警察に通報すると捜査が始まり、後日レイプされて殺された妻と娘の死体が見つかる・・・。
病気で先の短い警察官と一緒に犯人を見つけるも法では裁けず、二人は私刑によって彼らを殺してしまうのだった。という感じ。

この暴力的な内容から、自分の娘の安否を確認したり、まるで自分のことのように小説にハマっていくスーザン。
いつしか彼女は元夫エドワードと再会してみようか、という気持ちになるが、結局彼は現れなかった・・・というシーンで終わります。

散りばめられた考察ポイント

スーザンは「自分の母親のように職業差別はしたくない」と思っていたはずなのに結局、書店員をしながら小説を書くエドワードに愛想をつかせ、金銭的にも成功し地位を築いている新夫を選んでしまいます。

さらに、おそらくエドワードの子どもを身籠っている時に新しい夫と浮気し更にその子どもを中絶してエドワードを傷付けて別れる・・・という非情な最後だったということが分かります。
ここら辺が、エドワードがスーザンに復讐をしたかったんだなーと思わせるポイントですね。

年々、スーザンが母親のようになっていく演出も皮肉が効いていて良かったですね。(最後、小説を読んでエドワードが過去の作品とはまた違った小説の方向性を見出したと知って会いたくなること自体がもう浅はかですもんね)
旦那に選んだイケメンは他の女と浮気しているし、結局自分はアートを自分で創るのではなくディーラーというポジションになっていて夢を叶えていないし、スーザンの人生は「こんなはずではなかった」という感じがヒシヒシと感じられます。
しかし、その状況をエドワードという存在と関わることで少しは上向くのではないか、という他力本願な気持ちで会おうとしている(とちびぞうは感じた)スーザンは、もう自分で人生を切り開くという気持ちもない・・・そんな自分に気付かせてくれるという意味で”警告”の話でもあったのかなと。

小説の中で登場する末期がんの警察が私刑を行うことについても何か意味がありそうなんですけど、それが何を意味しているのかが分からなかったですね・・・。
復讐することへの決意みたいなものかなぁ。どんな手を使ってでも!という。

まとめ

考察ポイントも沢山ありますし、見返せば新たな発見もありそうで、何度観ても楽しめるスルメ映画でもあると思います。

エイミー・アダムスとジェイク・ギレンホールの演技も良いですしね、ミステリが好きな方は一度観てみて、自分なりに考察とかしてみると楽しいかもしれません。

アーティスティックな画面作りも見応えありますよ!!

 

 


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画像引用元:映画.com

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ま行

イタリア×日本のヒーロー誕生!映画『みんなはこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』ネタバレ&感想

「皆を―――救って」

どうもこんにちは、こんばんはちびぞう(@cbz_ewe)です!

見始めるまで知らなかったんですが、こちらの作品、なんと、日本で1975年に放映されていたテレビアニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフにしているというイタリア版のヒーローもの!

劇中にもばっちり「鋼鉄ジーグ」の映像も出てきますし、主人公がアニメの登場人物の名前である「ヒロシ」と呼ばれたりなど、明らかにモチーフにしているのが分かります。この邦題もカッコよくて良いなぁと思ったんですが、どうも監督自らが訳した邦題らしいです!!すごい!!日本愛に溢れている!!

ちびぞうは全く知らないアニメですが、やっぱり日本愛を感じる作品は嬉しいですね~。

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】Lo chiamavano Jeeg Robot
【制作国】イタリア
【監督/製作】ガブリエーレ・マイネッティ
【脚本】二コラ・グアッリャノーネ
【撮影】ミケーレ・ダッタナージオ
【美術】マッシミリアーノ・ストュリアーレ
【衣装】メリ・モンタルト
【編集】アンドレア・マグオーロ
【音楽】ガブリエーレ・マイネッティ、ミケーレ・ブラガ
【出演([]内は役名)】

  • クラウディオ・サンタマリア[エンツォ/ヒロシ]
  • イレニア・パストレッリ[アレッシア]
  • ルカ・マリネッリ[ジンガロ]
  • ステファノ・アンブロジ[セルジョ]
  • マウリツィオ・テゼイ[リッカ]
  • フランチェスコ・フォルミケッティ[スペルマ]
  • ダニエーレ・トロンベッティ[タッツィーナ]
  • アントニア・トルッポ[ヌンツィア]
  • サルボ・エスポジト[ビンチェンツォ]
  • ジャンルカ・ディ・ジェンナー[アントニオ]

【公開日(日本)】2017年5月20日
【上映時間】119分
【配給】ザジフィルムズ
【映倫区分】PG12
【IMDB】7.1/10.0  (およそ10,000人の評価)

【あらすじ】

ふとしたきっかけで超人的なパワーを身につけたチンピラのエンツォは、世話になっていたオヤジが殺され、アニメ「鋼鉄ジーグ」の熱狂的なファンである娘のアレッシアの面倒を見る羽目になる。超人的な能力を持つエンツォを「ジーグ」の主人公である司馬宙とダブらせて慕うアレッシアを前に、パワーを私利私欲のために使っていたエンツォは、彼女を守るため正義に目覚め、互いにほのかな愛情が芽生えていく。そんな2人の前に、闇の組織のリーダー、ジンガロが立ちはだかる。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレもあるよ!)】

☆4.1/5.0

ちびぞうはこの映画、好きなんですよ~~~~~~。

とっても画面が暗くて主人公も陰気だしヒロインは頭がおかしいしで決して娯楽映画ではないんですけど、でもすごくアーティスティックで愛に溢れていて愛しい映画なんです!!!!

哀愁と悲哀たっぷりの主人公がイイ

盗みを働き男たちに追われている主人公エンツォ。川に逃げ込むと、そこに廃棄されていた核物質のドラム缶にはまってしまい、全身に放射能物質に浸かってしまう。

というオープニングのシーンから始まり、ちょっと体調を崩したあと彼は

放射能物質の影響で肉体強化されちゃいます!!!

9階の高さから落ちても平気だし、鉄も変形させられるほどに怪力だし、傷もすぐに治っちゃいます。(しかし鋼鉄のような体かと思いきや、刃物では切られてしまうし、切断された指とかはくっつかない)

しかしスーパーパワーをゲットしたからと言って、エンツォは突然正義に目覚めたりはしないんですよーーー!!!

そこがイイ!!!

ATMをまるごと盗んだり現金輸送車を襲ったりして悪いことをする。そしてお金を溜め込む。
溜め込んだお金で引っ越したりもしないし、くたびれたアパート住まいのまま、豪華なご飯を食べるでもなく好きなヨーグルトを大量に買い占めて、巨大なスクリーンを買い、その画面でアダルトビデオを観る、という今までの生活に毛が生えたような感じの事をするんですよ・・・(笑)
なんだろう、金は最低限生きていくために必要で、最低限生きるとは彼の中で「雨風しのげる家がある/ヨーグルトを食べる/AVを観る」くらいのもの。その最低限の生活を維持するためだけに金を盗んだ・・・そんな感じがします。つまり、彼自身は彼の人生に何も展望がなく、夢ややりたいことがあるわけでもない。超人的な能力を手に入れたとしても、それは何も彼の生き方を変えるきっかけにはならなかった・・・。

ならば、何が彼を変えるのか!?

それはヒロイン、アレッシアの存在。
同じアパートに住んでいたギャング一味のおっさんに盗んだ時計とか売って生活していたエンツォ。そのおっさんが麻薬密売の時に死亡。彼の家には一人娘(アレッシア)がいて、行き場がなくなった彼女は顔見知りだったエンツォの周りをうろつくようになる。

アレッシアは母親を亡くしてから精神を病み、日本のアニメ「鋼鉄ジーグ」の世界観の中にどっぷりと入りこんでしまってまともに会話が出来ないような感じ。
彼女はエンツォの超人的なパワーを見て「あなた、シバ ヒロシね!」と鋼鉄ジーグの主人公の名前で呼び始める。最初は困惑していたエンツォだったが、彼女の持っていたアニメのDVDを観たことで一緒にハマってしまい、DVDセットを買ってしまう。(ここらへんすごく可愛い)

同じものを観て同じものを好きだと感じたり、同じ時間を共有して、彼女のピュアな心に触れていくうちに、エンツォは次第に彼女を愛するようになる。

廃遊園地へ彼女を連れて行って、動かなくなった観覧車に乗せて、エンツォが自力で観覧車を回してあげるシーンとか最高に可愛くてロマンチックだし、いい雰囲気になったらパニックになってしまうアレッシアを抱きしめる二人の姿に鋼鉄ジーグのアニメの画面がかぶっていたりするのがすごくアーティスティックで素敵!!!!!!

孤独で盗むことでしか生きていけなかったこの情けない冴えない男がですよ。
輝き始めるわけですよ。アレッシアに時々見せる笑顔が切なくて愛しいわけですよ。

しかもきっと今まで女性を愛したことなんかなかったものだから関わり方も愛し方も知らない。どうしたらいいの?って

そんな矢先!!!!悲劇は起きてしまうんですねーーーーーー。

ヒーロー映画にはつきもの。ヴィラン(敵)の登場ですね。それまでただのギャングのチンピラっぽかったジンガロ(しかし無駄に運がよく死なない)が、エンツォのパワーに目を付け、アレッシアを人質にしてそのパワーの秘密を教えろと迫ってくる。
そして逃げ出そうとしたアレッシアは銃弾に倒れ、最期に「皆を救って」とエンツォに言い残す

かたやジンガロはエンツォと同じ川で同じ核物質に浸かり、同じような超人パワーを手に入れてしまう。球場で爆弾テロを仕掛けようとするジンガロをエンツォは止めに行き、最後に一対一で戦って勝つ。

このラストの場面、エンツォは爆弾を持って必死に走るんですよ。出来るだけ人の少ないところへ、出来れば川の中へ、と走る。このシーンがオープニングの彼の走る姿とリンクするんです!!!

オープニングでも彼は必死に走っていた。しかしそれは、自分の身のため。盗んで捕まらないようにと必死に走っていた。
しかし!!このラストの走りは違う。爆発まで5分を切っている爆弾を小脇に抱え、アレッシアの言葉を胸に「誰かを助けよう」と走っている!!同じ川辺を走るシーンですが、全く意味合いが違うんです。

こんなに分かりやすく成長してくれる主人公も珍しいというか、すごく感動しましたね。

エンツォのキャラクターが本当に素晴らしく、彼の生き方の描き方も本当に良かった。

ヒロイン、アレッシアの魅力

彼女はちょっと外見が、美人なのか不細工なのかちょっと場面によってコロコロ変わる不思議な女優さんでして・・・(笑)しかしそれが魅力の一つと言うか。精神を病んでしまった部分でのピュアさの演技だったり、それまでの正常な女性であった時の顔が見え隠れする演技が、表情から何から不安定なアレッシアを表現していたと思うんですよね。

エンツォを演じたクラウディオ・サンタマリアも素晴らしかったですけど、アレッシアのイレニア・パストレッリもすごく良かった!!!

お姫様のドレスを着て、喜ぶ彼女の姿はエンツォの目にも心にも焼き付いたんだろうなぁ・・・。

まとめ

SFアクションですけど、これは間違いなく愛によって成長する男のストーリー。

そして、ヒーローの誕生の物語でもあります。

すっごくちびぞうは好き!!続編も観たい!!!!

エンツォはあまり表情に変化がないし明るい性格ではないけど、でもコミカルな雰囲気にも持って行けると思うし、ヒーローとして目覚めた彼の今後の生き方もぜひ見ていきたいんで監督宜しくお願いしますよ続編をぉおと額を擦りつけて土下座したいですね!!!!!!

 

あ、結構グロいシーンあります。容赦なく人が死にます。あとエロいシーンもあるっちゃあるし基本的に雰囲気が陰気なので苦手な人は気を付けていただきたい。
PG12ですからね。

でもすごくオススメですよ!!!!!!!!!鋼鉄ジーグも観たくなりますよ!!!

 

 


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画像引用元:映画.com

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は行

宇宙で彼女を落とす方法。映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』ネタバレ&感想

”無限の愛を注いであげて。計れる愛は、貧しい愛よ―――”

来ましたー!!!!!リュック・ベッソン×デイン・デハーン!!!

デハーン様がこんな大衆映画??っぽい大作??に主役として登場するなんてー!!!これは観ねばなるまい観ねばなるまいとある種の強迫観念にかられて劇場へ!!!

ちなみにCMなどでは「地雷臭」がすごくってもう不安しかなかったんですけども・・・ツイッターなんかで「これはヤクをキメたスターウォーズ」という呟きを見かけて妙に期待してしまいましたね・・・。

何気にクライヴ・オーウェンだとかイーサン・ホークが出ていて(イーサンは本当にちょい役)地味に豪華・・・。

ちなみにちびぞうは原作であるバンド・デシネ(フランス版コミックのこと)に関しては全くの無知!でした!

パンフはこんな感じ!

横長でキラキラ加工がされています!けど、若干の手抜き感がぬぐえない表紙・・・(笑)
というか配給がキノフィルムズさんなんですね!!キノフィルムズさんと言えばハイセンスなミニシアター系映画を配給している会社だという印象が強かったので、意外でした・・・。いつもシンプルかつオシャレなパンフ作ってるから、こういうSFアクションものはどういう雰囲気のパンフにすればいいのか分からなかったのかな・・・(笑)

裏面はこう!

34Pで税抜き667円。普通なお値段。個人的に映画評論家の村山章さんのコラムが最高でした!

【映画情報】

【原題】Valerian and the City of a Thousand Planets
【制作国】フランス
【監督/脚本】リュック・ベッソン
【原作】ピエール・クリスタン(作)、ジャン=クロード・メジエール(画)
【製作】ヴィルジニ―・ベッソン=シラ
【コンセプト・デザイン】パトリス・ガルシア、ベン・マウロ、マーク・̪シモネッティ、ジュー・フェン、シルベイン・デプレ、アラン・ブリオン
【VFXスーパーバイザー】スコット・ストクダイク
【VFXプロデューサー】ソフィー・ルクレール
【撮影】ティエリー・アルボガスト
【衣装】オリヴィエ・ベリオ
【美術】ユーグ・ティサンディエ
【編集】ジュリアン・レイ
【音楽】アレクサンドル・デスプラ
【出演([]内は役名)】

  • デイン・デハーン[ヴァレリアン]

  • カーラ・デルヴィーニュ[ローレリーヌ]

  • クライヴ・オーウェン[フィリット司令官]

  • リアーナ[バブル]

  • イーサン・ホーク[客引きジョリー]

  • ハービー・ハンコック[国防長官]

  • クリス・ウー[ネザ軍曹]

  • ジョン・グッドマン[アイゴン・サイラス]

  • ルトガー・ハウアー[世界連邦大統領]

 

【公開日(日本)】2018年3月30日
【上映時間】137分
【配給】キノフィルムズ
【映倫区分】G
【IMDB】6.5/10.0  (およそ110,000人の評価)

【あらすじ】

西暦2740年。銀河をパトロールする連邦捜査官のバレリアンとローレリーヌは、あらゆる種族が共存する「千の惑星の都市」として銀河にその名を知られるアルファ宇宙ステーションを訪れる。しかしその深部には宇宙を揺るがす邪悪な陰謀や、歴史から抹殺されようとしていたある秘密が隠されていた。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレしているよ!)】

☆2.5/5.0

残念。この映画は映像と、主演二人の美しさが全てを持って行っている映画です・・・。

映画的な良さで言えばオープニングの、デヴィッド・ボウイの”Space Oddity”をバックに宇宙ステーションの発展を描く数分が一番クールで面白かった。それ以降は、うん。まぁ、うん。

~ここから若干の脱線~

まず観終わって最初に頭によぎったのは「アレハンドロ・ホドロフスキー監督」の名前。そして次に「これ、リュック・ベッソンの脳内を可視化した映画だ」と思いました。

つまり一言でいえば「監督が好き放題やっただけ」ってことなんですけど(笑)

なぜホドロフスキー監督の名前がよぎったのかは自分でもよくわかってないんですが、彼の映画『ホーリー・マウンテン』『リアリティのダンス』など、「ああ監督の脳内を見せられている」と思った部分に共通点があったのかな。
しかしよくよく調べてみると、この『ヴァレリアン』の原作は『スター・ウォーズ』シリーズにも影響を与えたコミックだったそうじゃないですか!!ホドロフスキー監督の『ホドロフスキーのDUNE』『スター・ウォーズ』シリーズに影響を与えた作品だったんですよね。(ヴァレリアンの原作の方が古い)そういう意味でも共通点があったのかー!と一人感動するちびぞう。

~脱線終わり~

脚本のことは考えてはいけない

話の流れはもうめちゃめちゃというか、主人公のヴァレリアンがひたすら相棒のローレリーヌを口説いているっていうだけの話の背景に政府が滅亡させたのをなかったことにしたパール人の復讐劇があったりなかったりするんですけども、その部分はものっすごい薄いですしね、悪役になってる司令官も影が薄かったりして「ドラマ」としての部分の弱さが半端ないです。

ドラマが妙に薄いのに、なぜかバブルという宇宙人(リアーナ)のショーシーンがフルで見せられて「いや、こんなに長くなくてよくないか」と思ったりして。彼女が亡くなる時のセリフはなかなか良かったんですけどね。それが最終的にヴァレリアンに活かされているのかどうかも謎ですし。あってもなくてもよかったよなぁ。(ついでに言えばイーサン・ホークもなんだったのか・・・)

最後、政府にとって多大な利益をもたらすであろう変換器をパール人に返すかどうかの重大な場面で兵士としての規律を守ろうとしているヴァレリアンに
「私のこと愛してるなら信じて好きにさせてよ」
って感じで説得しちゃうローレリーヌと説得させられちゃうヴァレリアンの「大切な事決めるのにそんな痴話げんかの延長みたいな話でいいのかよ」って感じもどうもなぁ・・・。

まぁこんな感じで内容はひっじょうに軽いんです。遊び人ヴァレリアンの口説きほどに軽い。彼が遊び人かどうかの描写もないに等しいですけども。
元々ローレリーヌも彼のこと好きって感じがしてるし、ヴァレリアンの彼女に対する口説きもいまいちどうほかの女性に対するそれと違って特別感が出ているのかも、ローレリーヌを口説く場面しかないから観客は測れないんですよね。だから恋愛ドラマとしても弱い・・・いいとこなしか、監督・・・)

邦題センスも微妙・・・

そもそも、アルファ宇宙ステーションは「千の惑星の種族が集まる街」であって「千の惑星」ではないんですよね。しかも話の流れ的に、最後の爆発でアルファが滅びる危機に陥っていたわけでもないので「アルファを救った」というわけでもないんです。なので

「千の惑星の救世主」とかいう嘘八百なサブタイトルは本当にひどいと思う・・・。

「千の惑星の集まる街で彼女を落とす方法」とかでいいですよもう・・・(脱力)

映像を観よう!そして主演を観よう!

この、監督の素晴らしい才能溢れる脳内を映像化させて、それを観れるという幸福ですね!それを味わいましょう!

何十、何百という種類のいる宇宙人たちのデザインを楽しめますし、アクションシーンもすごく新鮮!!

特に別次元が同じ場所に存在しているという「ビッグマーケット」での敵との追いかけっこシーンは「ゴーグルをつけている間だけ別の世界が見えている」という特殊な(今でいうVRゴーグルみたいな。VRの世界で攻撃されたら実際に怪我をする、みたいな感じに近い)場面で、とても楽しい!!!

それから、アルファという幾千もの種族が住んでいる宇宙ステーションの中を、壁を突っ切りながら進む無茶苦茶なシーンの、色んな世界がまるで本のページをめくっているみたいに素早く切り替わっていく様がとっても面白いです。

ちびぞうは大好きなデハーン様が病んでない役をするのが非常に珍しかったので、それだけでも眼福でしたね~~~~~~~

見てください、この笑顔。こんな顔、彼の他の映画ではなかなか見れませんよ!!!!!

特にバブルのショーを眺めるデハーン様のニヤついたり驚いたりする表情のバリエーションが本当にアホっぽくて最高に可愛いです(笑)

ダブル主演の女の子の方(カーラ・デルヴィーニュ)もかなりの美人ですよ。モデル出身らしい!
彼女の魅力もぜひ劇場で楽しみましょう!

 

 

以上!!!!ちびぞうでした!!

 

 


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ら行

アートな写真が流れるフランス映画『ラ・ジュテ(1962)』ネタバレ&感想

「彼がいない時には、おそらく彼女は死んでいるのだ」

IMDB

「フォトロマン(モノクロ写真の連続だけで構成されている)」という手法で作られた、ということで興味が湧いた作品。
分かりやすく言えば、スライドショーであり、紙芝居。

1962年に製作されたフランスのSF映画です。28分しかないので非常に観やすいね!

観終わって調べて初めて知ったんですが、『12モンキーズ』の原案となった映画のようですね。ちびぞうはそちら未見なので、またチェックしてみねば!!!

【映画情報】

【原題】La Jetée
【制作国】フランス
【監督/脚本】クリス・マルケル
【製作】アナトール・ドーマン
【編集】ジーン・ラベル
【音楽】トレバー・ダンカン
【出演([]内は役名)】

  • ジャン・ネグロニ[ナレーション]
  • ダフォ・アニシ[男]
  • エレーヌ・シャトラン[彼女]
  • ジャック・ルドー[科学者]

【公開日(日本)】1999年7月3日
【上映時間】28分
【IMDB】8.3/10.0  (およそ24120人の評価)

【あらすじ】

第三世界大戦を舞台にした架空のパリで、過去や未来にタイムトラベルする実験に携わるある男と「彼女」の物語。

【感想(ネタバレしますよ!)】

☆3.2/5.0

ちびぞうは好きです!!!!!

主演の女優さん(エレーヌ・シャトラン)が、どことなくキルスティン・ダンストっぽくてとっても美しい!

おおまかなストーリー

空港の写真から始まる。割れんばかりのオペラ

Stichere – “A la croix”

が流れている。

「これは少年期に見た光景に取りつかれた男の話である」

男性の語りと、文章が出る。

「少年期にその男が見たのはオルリ空港での出来事で 第三次世界大戦ぼっ発の数年前のことだった。少年はその日の出来事をそれ以来忘れたことがなかった」

※オルリ空港とはフランス(パリ)の国際空港のこと

写真がどんどん変わっていき、そこに男性のモノローグが乗る。

少年が見たというのは「送迎台の光景と、ある女性の顔」。
しかしこの女性の顔に見覚えがあるとずっと後に彼は気付くことになる。戦争が起きる少し前の平和な彼女の顔に見覚えがあったというのだ。

揺れる送迎台。突然の轟音と、倒れ行く人々。そしてある男の死を目撃したと、少年は後に知る。

それが現実だったのか、戦争から逃れるための妄想だったのかは分からない。

そしてほどなくパリは崩壊

流れるオペラと共に崩壊したパリの写真が次々と流れてくる。暗転し、再び男のモノローグと共に写真が流れ出す。

放射能によって、誰もパリの地上では暮らせなくなってしまった。勝者は敗者を捕虜にし、実験台にした。しかし実験は失敗し、多くが死ぬか、錯乱した。

そして新たな実験に主人公が選ばれる。

なんとその実験というのは「タイムトラベル」の実験だった。過去に行って現在を救うために物質やエネルギーを持ち帰るのが使命だった。

体が過去に行っても意識は現在のままなので、体にかかる衝撃が大きすぎ、普通の人は錯乱してしまう実験らしい。しかし主人公は過去への執着が強く、想像力が豊かな人物だったので実験台に選ばれた。

主人公は過去に意識を飛ばし、平和だった頃へ戻る。そして、見覚えのあるあの女性を探し出す。彼女と二人で見覚えのある公園で過ごす。第三次大戦中に付けていたネックレス(ドッグタグのようなもの?)に気付かれるが、彼はごまかす。

意識が戻るが、すぐにまた過去へと戻る。

 

彼女と遠い国の話をしながら、散歩を続ける。これがまだ同じ日の出来事なのかどうかは男にはわからない。

実験の第一段階が終わり、第二段階の最初で彼女とあちこちで会った。

彼は唐突に現れるが、彼女は気にしない。彼女は彼を”私の幽霊”と呼ぶ。

朝の鳥のさえずり、彼女の寝顔。

ここだけ一瞬、動画に切り替わる!彼女が目覚めて瞬きをする瞬間だけが動画に!

実験は進み、50日目。彼女と博物館で様々な動物を見る。照準は完璧になり、思うままの時間に送り込まれることが可能となった。楽しそうに博物館デートを楽しむ二人。

彼女も、突然現れて消える彼を自然現象として受け入れた。

実験室に戻った時、微妙な変化を感じた。所長がいるのだ。過去への実験は成功し、次は未来へ行く実験が始まった。

未来では地球は変貌していた。再建されたパリは迷路のような道路が広がっていて、冷たい未来人がいた。全産業を復活するエネルギーを未来人に渡して、未来への旅も終わった。

実験が終わり、彼は用済みになった。しかし、未来人がやってきて、彼を仲間にする、と言う。彼はそれを拒否した。未来ではなく彼女の待つ過去へと行きたかったのだ。

再びオルリ空港。

送迎台で彼女を探す。彼女の姿を見つけるも、そこには追跡者がいた。

少年時代に見た記憶、強迫観念の正体は―――自らの死の場面であった。

まとめ

あらすじは、現代に生きるちびぞうが観てみれば「この最初に出てくるある男の死って自分じゃね?」とか簡単に予想してしまいますが、当時の人からしたらそうは問屋が卸さなかったんであろう・・・。

内容云々というよりも、この悪夢のような作品をあえてスライドショー方式にしたことで、より悪夢っぽさが際立ってる感じがしたんですよね。

映画も、細かくしていけば絵の連続。たくさんの絵がものすごいスピードで流れていくとそれが動いているように見えて、動画になる。この作品では、その1枚1枚の絵が流れていくスピードを限りなく遅くしていった結果、こういう紙芝居的な表現になったのだ。と思うんです。すると、一つ一つの場面が、流れているようで止まっているような、不思議な感覚に陥るというか。悪夢を見てそれを思い出そうとすると断片的にしか思い出せない、そんな感覚に似ているというか。

時の流れを遅く遅くさせていって、止まってしまいそうな感じが、この「タイムトラベル」するというSF的なテーマにすごくマッチしていたと思います。

そしてちびぞうが特に感動したのは、途中で「彼女」が目覚める場面。

その数秒だけが動画になって、彼女の瞬きする様子が見れるんです。が、その表現の美しいこと!!彼女の美しさとか、尊さとかを深く感じ、「この瞬間だけは本物かもしれない」という気持ちにさせてくるというか・・・うーん。とにかく美しかった。

モノクロ映画はそんなに得意でないちびぞうの、数少ないお気に入りの作品となりました。

みなさんもぜひ機会があれば、鑑賞してみてください!

 

 

 


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か行

母親が別人に入れ替わる恐怖。映画『グッドナイト・マミー』ネタバレ&感想

“僕たちのママをどこにやったの?”

こちらはだーいぶ前に映画仲間が「ちびぞう好みっぽい」と言ってくれてた作品。

最近になってちびぞう父がやたらと「観てみ」と言ってくるので、ようーやく鑑賞しました!

整形した母親が病院から戻ってくると、別人になっていた・・・?というサイコスリラーっぽい雰囲気の作品ですね!

原題は「見てるよ、見てるよ」もしくは「分かってるよ、分かってるよ」と言った意味っぽい。”お前が母親じゃないことは分かってる”といった意味なんでしょうかね・・・。

【映画情報】

【原題】Ich seh, ich seh
【制作国】オーストラリア
【監督/脚本】ベロニカ・フランツ、セベリン・フィアラ
【製作】ベロニカ・フランツ、セベリン・フィアラ
【撮影】マルティン・ゲシュラハト
【出演([]内は役名)】

  • ルーカス・シュワルツ[ルーカス]
  • エリアス・シュワルツ[エリアス]
  • スザンネ・ベスト[母親]
  • ハンス・エッシャー[神父]

【公開日(日本)】2016年1月12日
【上映時間】99分
【配給】AMGエンターテイメント
【IMDB】6.7/10.0  (およそ31,200人の評価)

【あらすじ】

森と畑に囲まれた田舎の一軒家で母親の帰りを待つ9歳の双子の兄弟。ところが、帰ってきた母親は顔の整形手術を受けており、頭部が包帯でぐるぐる巻きになっていた。さらに性格まで別人のように冷たくなってしまい、兄弟は本当に自分たちの母親なのか疑いを抱くように。そして正体を暴くべく彼女を試しはじめるが、その行為は次第にエスカレートしていく。【引用元:映画.com

【感想(ネタバレしているよ!)】

☆2.9/5.0

つまらなくはないんですけど、面白くもないかも・・・という微妙なライン・・・・ッッ!!!!

すっっっごく雰囲気も良いし、主演の双子の美少年っぷり、演技もすっごく良いんですけどね・・・!

ちびぞうは後半の展開が胸糞すぎてちょっと見てられなかったです・・・

大まかなストーリー

このおかあさん本物じゃないんじゃない?と疑った双子が、寝ている母親の口にゴキブリを投入してみたりだとか、ベッドに縛り付けて「本当のママをどこにやったの」と脅したりだとか口を接着剤で塞いでみたりだとか、それだとご飯があげられないので接着剤をハサミでチョキチョキしてたら唇も切っちゃったよーーー血が噴出!したりとか、一度は逃げ出した母親がコケて頭を打って気を失っている間に今度は床に縛り付けて双子が「本当のことを言え」と脅しながら家に火をつけたりしてて最後にはママが許しを請おうとするけどダメで、結局焼き殺されて終了・・・多分双子も火事で死んだのかな。

そして三人が森の中で再会し笑顔で肩を抱き合いこちらを見つめる・・・という絵面で映画が終わる。

ネタとは何だったのか

この映画のラストで用意されているどんでん返しというのは、

「母親が別人に変わっているかもしれない」という設定の話から、実は

「母親は変わっていないが双子の片割れ(ルーカス)がすでに事故で死んでいて、その事実を認められないエリアスがルーカスの亡霊(か妄想)に操られ”ルーカスがいないと言うお前は母親じゃない”と拷問する」という展開に変わるというところなんですねー。

そのネタの伏線はあらゆるところに用意されていて、例えば

  • ルーカスはエリアスの名前を呼ばない(劇中ではエリアスがルーカスの名前を呼んでばかり)
  • ルーカスは母親に直接話さず、いつもエリアスに耳打ちをして母親に伝えてもらっている
  • 母親はエリアス一人分の食事しか用意しない
  • 母親が誰かに電話で「もうこれ以上フリを続けられない(死んだルーカスが生きているというフリをエリアスの前で続けるというのがもう無理、ということ)」と言っている
  • ルーカスは赤十字の人に対してもエリアスに耳打ちして話す

などなど。他にもちびぞうは気付けなかったんですが、最初の方で母親が「汚れたシャツを着替えなさい」と言った時にエリアスの服だけが汚れている・・・などもあったようですね。

もちろん、母親が別人に変わったのでは?と思わせるような伏線もいくつかあります。

まず母親が森で全裸になるなどの奇行をしていること、双子の見ていないところでは包帯を外していること、双子が部屋に来ても寝たふりをして、こっそり何かを食べてたり・・・まぁ「とにかくいかにも怪しいな」という感じの伏線が。

もうこの母親の初登場シーンの恐ろしさが・・・(笑)

それ以外にも、双子がアルバムを見たら過去の母親の写真が外されていて、おそろいのサングラスと服を着た母親とよく似た女性が一緒に写っている写真が残されていたこと。(この写真については後々母親から”友達とおそろいの格好をして写真を撮ったのよ”と説明されますが、エリアスはこのもう一人の女が母親と入れ替わったのでは、と疑ってしまう)

 

母親も怪しいですが、ルーカスが死んでいるという伏線の方が多いので、途中で真実に気付きます。というか相当早めに気付く人もいるかな?

真相は、母親は整形手術ではなく、おそらくルーカスを失った事故で顔に怪我を負い、その治療から戻ったところだった。双子の片割れを失ったエリアスのために、ルーカスがいる”フリ”をしていたが、それも段々辛くなり・・・というところでしょうね。一切出てこない父親も同じ事故で失ったのかもしれません。

まとめ

おそらくこの映画の真の恐怖は、このどんでん返しで驚かせるところよりも、ネタが早めに分かるようにわざと作られていて「実の母親に”僕らの母親だと証明して”と迫る息子に拷問される」という状況が恐ろしいんだと思います。

いや、もうそういう意味での恐怖というか・・・恐怖というよりも観ていて胸糞で、辛かったですね。珍しく最後の方を倍速で飛ばし見してしまおうかというくらい嫌な気持ちになりました。

そういう意味ではホラー?というか人を不快にさせるという意味では成功している映画なのかも。

今思い返すと、オープニングで洞窟?に一人入っていくルーカスの後ろ姿が消えた後、全く何も聞こえないただの暗闇が広がっている、というシーンがすごく綺麗で怖くて、あのシーンだけでも「本当はエリアスしかいない」と表されていて秀逸だったな、と思ったりしますね。

この双子という設定も、上手ですよね。観ている方も見分けがついていないので「どちらかに偏って存在していない」と思うようなことがあまりないように作られているんです。だからもしかすると、ネタに最後まで気付かない、という人ももしかしたらいるかもしれません。

そう思うと「早めにネタに気付いても真相が恐怖」だし、「気付かなくてもラストでびっくり」できるという非常に上手く出来た映画だったのかもしれません。

あまり人にはオススメしないですけどね!!!

 

 


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あ行

視線で恋する女性同士の青春ラブ映画『アデル、ブルーは熱い色』ネタバレなし感想

あの時から、生きることは歓びとなった―――。

こちらも、ちびぞうが過去に観た作品を記録しておこうのコーナー。

最近レンタルで『アンダー・ハー・マウス』を観たので、その記事に合わせてこちらも書いておくことにしました。

主演は『美しい人』や『イングロリアス・バスターズ』のレア・セドゥ。とっても美しいフランスの女優さんが、今回主人公を翻弄するビアンの女性を演じます。

監督は非常に名前が呼びづらいアブデラティフ・ケシシュ監督。チュニジアの人らしいです。

非常にオシャレで美しさのある本作。果たして内容は?

公式サイトはこちら

【映画情報】

【原題】 La vie d’Adele
【制作国】フランス
【監督】アブデラティフ・ケシシュ
【脚本】アブデラティフ・ケシシュ、ガーリア・ラクロワ
【原作】ジュリー・マロ「ブルーは熱い色」
【撮影】ソフィアン・エル・ファニ
【編集】ガーリア・ラクロワ、アルベルティーヌ・ラステラ、カミーユ・トゥブキ
ジャン=マリー・ランジェレ
【出演([]内は役名)】

  • アデル・エグザルコプロス[アデル]
  • レア・セドゥー[エマ]
  • サリム・ケシュシュ[サミール]
  • モナ・ベルラバン[リーズ]
  • ジェレミー・ラユルト[トマ]
  • アルマ・ホドロフスキー[ベアトリス]
  • バンジャマン・シクス―[アントワーヌ]

【公開日(日本)】2014年4月5日
【上映時間】179分
【配給】コムストック・グループ
【映倫区分】R18+
【IMDB】7.8/10.0  (およそ111,780人の評価)

【あらすじ】

文学を愛する高校生アデルは、青い髪をした美大生エマと運命的な出会いを果たし、2人は激しく愛し合うようになる。しかし、時の流れとともに2人の気持ちは次第にすれ違っていき……。【引用元:映画.com

【感想】

☆2.9/5.0

ながい!!!

まさか、3時間近くもあるなんて…。と思ったらこれドラマ映画だったんですねぇ、納得。

正直この内容でこの長さは苦痛でした。
雰囲気は良かった。

ホモセクシャルに比べレズビアンの社会進出は遅れていて、けれどもこの映画を観ていると少しずつ世界は変わってきているんだと感じました。
『ボーイズ・ドント・クライ』の世界ならば、間違いなくエマはその外見だけでダイク(当時レズビアンの蔑称として使われていた)と罵られ撃たれて死んでいたでしょうし。

さてさて、問題の内容についてですが、ちびぞうが良かったなー!と思えた点。

個人的に注目したのは冒頭で教師が生徒に読ませていた“視線による一目惚れは運命がさせるもの”というフレーズの『視線』の部分。この映画は全体的に顔のクローズアップが多く、序盤はその『視線』のやり取りで2人の女性の距離感の図り方や探り合い、戸惑いなどが非常に上手く描かれていると感じました。

レア・セドゥ扮するエマは自分がビアンであることに自信を持っており、家族にもカミングアウトし受け入れられていて夢もある。かたやアデルはまだ高校生で自分の性嗜好に悩む思春期真っ盛り、まだやりたいこともハッキリ決まっておらず親にも友達にもビアンであるとは打ち明けられない。
この2人の微妙な関係性の違いは先の展開に暗雲を漂わせていて良い感じ。

私はこの先をどう料理してくれるか楽しみにしていたけれど、思っていたよりビアンならではの葛藤の部分には触れられず不満もありました。浮気はもちろんアウトだけど、それは別としてLGBTの中でもゲイとバイには大きな壁があり、万が一アデルがバイであれば2人の間の溝はより一層深まっただろうなーと思うんです。そういう事(アデルがビアンなのかバイなのか)に神経を使っていただろうエマ側の葛藤も見たかったな。

後半の展開はもー普通のカップルでも成り立つような内容で説明の必要は無し。前半だけで終わってくれてたら…もしくは…あぁ凄くもどかしい!
ラストシーンも、画廊には彼女モデルの作品はなくても良かった。そして彼女に、『ここに私の居場所はない』と突き付ける感じでも十分だったな…。残念。

この監督がゲイかどうかは知らないけども“世の男性達がイメージする女性同士のセックス”って感じの美しすぎる濡れ場はほんとに必要なのか謎。

しまった!いいところを書いていたはずが結局、最終的には不満点でまとまってしまいました!!(笑)

まとめ

ちなみに調べてみるとやたらと性描写が過激!と書かれてましたが、そんなに過激だった記憶はないんですよね・・・劇場公開の時にだいぶ省かれたんですかね。

 

こういう作品に縁がない方は是非『Lの世界』をどうぞ。もう少しリアルでエグくてめんどくさいドロドロしたレズビアン達の日常を垣間見れます。

しかしアレだね!タチのイケてるビアンは何故か美容師だ芸術家だDJだなんだとアート系の職種設定が多いね!イメージなのか実際そうなのかは知らないけども!
オリジナリティ欲しいですね!!

 

 


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画像引用元:映画.com