これが私の復讐です――
松たか子主演の中島哲也監督作品、私が中島監督の作品の中で2番目に好きな映画です。
ちなみに湊かなえさんの原作は未読。劇場で一度観たものの、BSで放送していたので観賞しました。
生徒たちが牛乳を飲むシーンからの、松たか子の「告白」へと繋がっていく。非常に印象的なプロローグですよね。
パンフはこんな感じ!シンプルでおっしゃれぇええ
31Pで税込み600円!安い!!中もシンプルなのにスタイリッシュで、原作の文章を引用しながら、まるでちょっとした小説本のよう。素敵です。
ちなみにクラス全員のアルバム的なページもあって、なんとなく『バトルロワイヤル』を思い出しました(笑)
【映画情報】
【制作国】日本
【監督/脚本】中島哲也
【原作】湊かなえ
【製作総指揮】市川南
【製作】島谷能成、百武弘二、吉田眞市、鈴木ゆたか、諸角裕、宮路敬久、喜多埜裕明、大宮敏靖
【音楽】金橋豊彦
【主題歌】レディオヘッド – “ラスト・フラワーズ”
【出演([]内は役名)】
- 松たか子[森口悠子]
- 木村佳乃[下村優子]
- 岡田将生[寺田良輝]
- 西井幸人[渡辺修哉]
- 藤原薫[下村直樹]
- 橋本愛[北原美月]
- 芦田愛菜[森口愛美]
【公開日(日本)】2010年6月5日
【上映時間】106分
【配給】東宝
【映倫区分】R15+
【IMDB】7.8/10.0 (およそ28,000人の評価)
見返してみて初めて気付いたんですが、芦田愛菜ちゃんが出ていた!!!今更ながら驚きです(笑)
【あらすじ】
ある中学校の1年B組の担任を務める女性教師の森口(松)は、愛娘を学校のプールで殺害される。警察は事故死と判断するが、森口は学年末の終業式の日に、犯人はクラスの中にいると生徒たちに告げる。【映画.com】
【感想】
☆4.1/5.0
全体的に青みがかった画面がお気に入り。とにかく大好きな作品です。
4人の人物がそれぞれに想いを告白する、章ごとの構成になっていて、ほとんどが語りや、モノローグで進んでいきます。
交錯する群像劇の上手さ
見せ方が本当に上手。一番最初に語った告白が、タイトルにもなっている「告白」の全てかと思いきや、実はその告白というのは一番最後に松たか子が電話で話す内容を表している。
最初はバラバラだったピースが、各人の告白を聞いていくうちに少しずつ少しずつハマっていき、最終的に「そういうことだったのか」と腑に落ちる。それぞれの人生や考え方が浮き彫りになると、結局何が悪だったのか、命の重さとはなんだったのか、分からなくなってしまう。人それぞれ、自分の立場になってみれば”そうするしかなかった”という状況はあると思うんです。そこが、理解は出来なくても分かっていく。
この構成がたまらなく好きなんです。
湊かなえさんの世界観が好き
陰鬱で、鬱蒼としていて、登場人物みんなが“命”や”愛”について悩み、そしてどこか病んでいる。きっと、どこかで歯車が狂ってしまっただけで、私のように平和に暮らしている人間となんら変わらない人間だったのだろうと思える愛しさがあって。とにかく好きなんです。ラストも、きっと松たか子は一線を越えていない。そう思えるそこはかとない希望の残し方も、好きです。
監督の映像が好き
唐突に雰囲気に合わない明るい曲調のBGMを差し込んだり、弱い自分たちを誤魔化すために誰かをいじめることでしか自分を保てないような生徒たちの、やたらと明るく楽しそうなカットを差し込んでみたり。そういう”作られた集団性の儚さ”みたいなものが感じられて、とても上手い演出だなって思いました。
あと空のシーンがとてもきれい・・・見惚れます。とてもたくさん差し込まれていたんですが、いくつか貼りたいと思います!
シュウヤ君とミツキちゃんの関係も切なくて哀しい。
写メなので画質がアレですが、本来はもっと美しいです。
特に私が気に入っているのは、鏡を使った表現方法。
カーブミラーだったり、お店の防犯用のミラーだったりに登場人物を映す手法をとてもたくさん使っています。
それが、どういう意図でその表現をしているのかはわかりませんが・・・とにかく惹かれたんです。非情で哀しい場面でも、どこかで客観的に自分を見ている存在がいる、という事なのかもしれませんね。
唯一残念だった点
劇場で観た時も思ったんですが、ラストのVFXがなぁ・・・。要るかなぁ、あれ。大切なものを失った表現なのはわかりますが、それまでかなりリアル追及方針だったのに急に「!?」となってしまいました(笑)
これさえなかったら完璧だったのにな(;_;)
まとめ
大好きなのに良さをいまいち説明しきれていない気がします(笑)
きっと、松たか子は復讐する事が目的なのではなく、“法を犯しても裁かれない“だから”命なんて軽いんだ”(自分のも、周りのも)と思っている若者達に、本当の意味で自分のしたことの重さを分からせる・責任を取らせることが目的だったのかな、と。
本当は、殺してやりたいほどに加害者の少年たちが憎かったのかもしれない。復讐だって思う存分にしたかったのかもしれない。
陰湿に見える彼女のやり方だけど、それでも最後の最後で、憎しみを連鎖させないように耐えたのかも。それが、ラストの涙に繋がっていったのかなと。
あのシーン、本当に泣けて来ます。
「ばからし」
と呟く彼女の、精一杯の強がりであり、自分を保つための一言だったのかと思うと。切なくて、苦しくて。
どれだけ憎い相手がいようと、最後はしっかり守るべきものを守らないといけない。
赦す事って、本当に困難だけど、何よりも大切な事だと思います。
鬱な映画にも思える作品だけど、そこはかとない希望は、最後にあるのかなと。
少し、同監督の『嫌われ松子の一生』に通じるものがありますね。
ぜひ皆さんも、色んな登場人物の色んな想いを一点からだけ観るのではなく、様々な視点から観て、考えてもらいたい。
でも出来れば心に余裕がある時に観てもらいたいなぁ。
そんな作品です。