井の中の蛙大海を知らず、されど――
元々、原作である漫画家の古屋先生のファンだったんですが、原作『帝一の國』は未チェック。公開が始まった頃にようやく漫画も買い始め、こ、これは面白い!!となり。七巻(ちょうど帝一が一年の時の生徒会長選挙)が終わった時点で「次巻から登場する一年生は劇場版には一切登場しない」と聞き、あと七巻分読み終わる前に終わってしまうまもしれない、このタイミングで観に行ってみよう!と劇場へ向かいました。
パンフはこんな感じ。邦画のパンフは左開きが多いイメージがありますね~~
キラッキラです!(笑)評議会の座席表が顔写真付きで載っていて、なんとなーくバトルロワイヤルを思い出させます(多分学園物のパンフだとありがちかも?)
『撮影日誌』というページもあり、2016年12月15日(木)~2017年2月7日のクランクアップまでの撮影や制作風景を写真付きで日誌にしてあって興味深い!あんまりこういうの載せてるパンフはないので楽しいですね~!
それから、何故かすごろくページとサイコロを組み立てて遊べるページもありました(笑)
中開きのページも含めて37Pで、667円+税でした。まぁまぁ豪華かも?
この超絶クオリティなコスプレ会場みたいなページ、笑えます。みんな仲良さそう~♪
この他にも人物紹介ページがきらびやかなので、また映画情報のところで一人一人載せていきたいと思います!
【映画情報】
【制作国】日本
【監督】永井聡
【脚本】いずみ吉紘
【原作】古屋兎丸『帝一の國』(集英社ジャンプコミックス)
【製作】小川晋一、木下暢起、市川南
【音楽】渡邊崇
【主題歌】クリープハイプ -イト-
【出演([]内は役名)】
- 菅田将暉[赤場帝一]
- 野村周平[東郷菊馬]
- 竹内涼真[大鷹弾]
- 間宮祥太朗[氷室ローランド]
- 志尊淳[榊原光明]
- 千葉雄大[森園億人]
- 永野芽郁[白鳥美美子]
- 吉田鋼太郎[赤場譲介]
- 木村了[堂山圭吾(現生徒会長)]
- 荻原利久[根津二四三]
- 三河悠冴[本田章太]
【公開日(日本)】2017年4月29日
【上映時間】118分
【配給】東宝
【映倫区分】G
【IMDB】7.4/10.0 (およそ20人の評価)
【あらすじ】
全国屈指のエリートたちが集まる超名門・海帝高校。政財界に強力なコネを持つこの学校で生徒会長を務めた者には、将来の内閣入りが確約されるという。主席入学を果たした1年生の赤場帝一は、総理大臣になって自分の国をつくるという夢を叶えるための第一歩として、生徒会長の座を狙っていた。2年後の生徒会長選挙で優位に立つべく誰よりも早く行動を開始した帝一は、想像を絶する命がけの権力闘争の中へ身を投じていく。【引用元:映画.com】
補足
生徒会長になるためにはまず、一年の時点で各クラスのルーム長にならねばならず、それは表向きは人望や成績面から考慮されるとのことですが実際は、親から学校への寄付金の額によって決まるシステム。
更に、生徒会長は二年の中から次の会長候補を三人選出するしきたりがある。なので一年生は二年生の中で一番会長に相応しいであろう人物に目星を付け、その人を勝たせるために尽力(まさに犬のように票集め)する必要がある。その人が生徒会長になれば、二年に進級した時に時期候補の三人のうちの一人に選んでもらえるからです。
そして、三人の選ばれた候補の中から、ルーム長・副ルーム長・委員会や各部活の部長と副部長を含めた評議会のメンバー60名での投票で生徒会長が決まるシステムになっています。
【感想(ネタバレもあるよ!)】
☆3.5/5.0
原作の再現度がわりと高め!!!しかし
プロローグで帝一が桜の花弁が舞い散る中登校し、入学式が行われる。一番の成績を収めた帝一は、新入生代表としてスピーチすべく、壇上へと上がっていく。一歩一歩、力強い足取りで。
正直私はもう冒頭15分くらいは感動で足が震えていましたね、本当にみんながみんな、漫画からそのまま現実に飛び出してきたみたいで、喜びとワクワク感がものすごかったです。
キャラクターの再現度の高さを表すと
- 光明……◎◎
- 弾くん……◎
- 帝一………〇
- 氷室先輩…△
- 駒先輩……×
- 森園先輩…×
- 堂山会長…××
こんな感じでした!
ちなみに、演劇部部長の玉三郎先輩とかも美形の俳優さんだし、二年の草壁先輩や京田先輩(いつも森園先輩と一緒にいた人)とかもすごく似ていた!!!全く活躍しないメンバーの再現度のクオリティが本当にもったいなくて、あそこまで上手にまとめられるなら、ぜひ前後編にして全てのエピソードが見たかった!!!!
最初は良かったものの・・・徐々に原作と違うな?という部分が出てくると、うーん・・・と悩みだしてしまい。この人はこんな感じじゃないのになぁ、と不満に思うところも出てきました。
特に一番辛かったのは
原作7巻までで一番大好きだった、現生徒会長の堂山さんの存在感の薄さ!!!彼の品行方正さ、平等さ、忍耐力、厳しさの中の優しさや時々魅せる無邪気さなどなど「これぞ生徒会長の器」!!という彼の愛すべき人間性は腐ったシステムの蔓延する海帝高校の中でとても輝いていたし、頼りになる存在だったのに・・・。なぜあそこまで影が薄くなってしまったの・・・。彼が森園さんに言う「井の中の蛙大海を知らず、されど空の高さを知る」を言う場面や、最終的に時期生徒会長を選ぶ場面での威厳が・・・彼が言うからこそ、決めるからこその言葉の重みが・・・非常に軽くなってしまっていましたね。
森園さんの公約
「生徒会長選挙は、全生徒で行う」というものです。これも出すタイミングがマズいなぁと。原作だと森園さんはこの政策を生徒会長になってからやり始めるんです。そして、「今までの伝統を壊すな」と教師らや政界の人達からも圧力をかけられてしまいます。それくらい大変な改革だったのに、それを会長選挙の演説で公約として出してしまうとは!!!
これでは「絶対に当選するはずないな・・・」と思ってしまいました。
氷室先輩の『オールドボーイ』っぷりと駒先輩の裏切り
原作を読んでいて、氷室先輩の最後の縋りっぷりがまるで韓国映画の『オールドボーイ』のとあるシーンのようだと思ったんです(笑)なので、そこの鬼気迫る演技っぷりは果たして『オールドボーイ』並みなのか!?とワクワクしていたんですが・・・。これは、伏線が薄すぎましたね。映画版では本田くんを貶めたのは氷室先輩だったっぽく描かれていますが、実はそうではなかった。なのにこれでは昔から氷室先輩がクズだったみたいじゃないですか!
原作では、氷室先輩は会長候補に選ばれてから少しずつおかしくなっていったんです。堂山会長にも突然態度を変え始めるし、追い詰められて実弾(賄賂)にまで手を出す。そして金がなくなれば女装して夜のクラブで働き、さらに駒先輩にまでお金を稼がせる・・・。あそこまで卑劣に必死に勝とうとしていた男が最後の最後で泣きつき会長の靴を舐め許してくださいと悲願する、その落差がショッキングなのに・・・。省かれ過ぎていました。あれだけ人格が変われば、駒先輩が「お前は生徒会長になってはいけない男だ」と言い出すのも理解できるというもの。
そもそも、2人の関係は「イジメられていた駒先輩を氷室先輩が助けた」ことから始まったのではなく、お互いが唯一理解し合える喧嘩仲間だった・・・という設定だったんですよね。そこの二人の絆の強さがもう少ししっかり描かれていれば、駒先輩の最後の決断も、非常に上手く働いたことでしょう。
映画版になかったシーン・映画版にしかなかったシーン
◆先輩後輩の絆、ルーム長と副ルーム長の絆が深まっていくシーン。特に氷室先輩が帝一を信頼していく過程(帝一の犬っぷり)や、弾くんと森園先輩との心の交流、森園新会長が氷室先輩を改心させるシーン(ここがないと何で氷室先輩が髪切って副会長になったのかわかりにくくない?)。果ては堂山会長と本田くんの絆の崩壊とその再構築・・・。
これらが私が観たかった場面で、どれも映画版にはなかったですね・・・。選挙での三票を獲得するために争う夏合宿も見たかったなぁ。
◆逆に映画版のみにあったのは、帝一の父親が逮捕されてしまうという流れ。あそこで菊馬の父親が出て来たらなんでもアリになってしまうだろ・・・とツッコんでしまう。
菊馬との殴り合いも、個人的にはいらなかった。
しかしとにかく笑った!!
主演の菅田将暉さんの演技が本当に面白くて「この人はなんでもやるなぁ・・・」よ感心するほど。テストの採点を父親とするシーンなんかかなり面白くて、思わずクスクス笑ってしまいました。周りの女の子のお客さんたちも声を出して笑っていた。私だけじゃなかった、良かった(笑)
その他にも、さすがコメディと銘打ってるだけあって笑えるシーンが盛りだくさんでした。みなさん素晴らしい演技しすぎです(笑)
良かった改変シーン
◆帝一は原作では何か迷ったり悩んだりすると父親と一緒にお風呂に入り、背中を流してあげながら父の背中に彫られた毘沙門天の刺青に助言をもらう・・・というシーンが度々あるのですが、さすがに高校生にもなって父親と風呂に入るのだろうか・・・というのが多少違和感あったので、映画版では一緒に銭湯に入る(そして刺青もない)と改変されていました!銭湯に行くくらいならあり得ますし自然ですよね!良い改変です!
◆美美子について。原作だと美美子はかなり優柔不断で、弾くんと帝一を選べずどちらとも友人以上恋人未満のような関係を続けてしまいます・・・しかし映画版ではバッサリカット!漫画の方ではかなり美美子の優柔不断さにイライラしてしまっていたので、こちらも良い改変でした!(笑)
まとめ
映画を観たあとで原作を最後まで読んでみると、この実写化のクオリティの高さがよくわかりました。尺の関係で省かなければならなかった場面にも理解できたし、よくぞあれだけの時間に上手い事納得できるようにまとめてくれたなぁ・・・と。結局のところ、個人的に見たかったシーンが省かれていた点、キャラクター同士の絆の交流の描かれ方が足りていなかった。その二点が減点ポイントになってしまっただけですね。ああ、本当に惜しい。決して原作も万人向けではないですし厳しいのは分かっていますが・・・ドラマ化せめて前後編にしたもらいたかったです。
んん~~~でもやっぱり楽しかったな!少し斜め上を走っていくザ・エンタメ。これに尽きます。
映画版にはない帝一が二年時の、一年生との大波乱もかなり面白いですし、一番のストーリーのクライマックスはかなり衝撃的な展開です。ぜひ、映画版を気に入った方は原作も読んでみてください!!!