あなたの物語のはじまりは、この日だった――
『プリズナーズ』、『複製された男』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の最新作(2017年現在)です!
『プリズナーズ』は結構好きな作品ですし、『複製された男』も嫌いではないのでひそかに気になっていました!しかも松竹に努める映画仲間から「オススメだよ」と言われていたので期待値も高めでした。
原作は短編集のうちの一編だそうですね。未読です。
先が読めない!異色のサスペンス映画『プリズナーズ』ネタバレ&感想【前編】
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パンフが結構すごい!
こんな感じ。パッと見はティッシュボックスのようです(笑)が、しかし
中を開くとこんな感じ。
ちゃんとタイトルもありました(笑)サイズはA4の半分ほど。56Pもあって税抜き667円なのはかなりのお安さです!!表紙もザラついた紙に型抜きで凝ってるし、写真のないページは横書きの雑誌のコラムページのようでオシャレです!特に!!
このエイミー・アダムスの影がうつっているページは透けてるんです!
左ページに重ねると「地球」の文字、右ページに重ねると「人間」の文字に影が重なる形になります!!この仕様めっちゃオシャレ!!(笑)ちなみに北海道に出現したという例の物体の写真もありました。
これ以外にも、全世界に現れたという11か所全ての写真が載っていました。いやぁパンフで語り過ぎですね(笑)こんなに楽しいのは久々かも(笑)
【映画情報】
【原題】ARRIVAL
【制作国】アメリカ
【監督】ドゥニ・ヴィルヌーヴ
【原作】テッド・チャン『あなたの人生の物語』Story of Your Life(ハヤカワ文庫)
【脚色】エリック・ハイセラー
【製作総指揮】グレン・バスネル、ダン・コーエン、エリック・ハイセラー、トリー・メッツガー、ミラン・ポペルカ、スタン・ヴロドコウスキー
【製作】ショーン・レヴィ、ダン・レヴィン、デヴィッド・リンド、カレン・ランダー、アーロン・ライダー
【音楽】ヨハン・ヨハンソン
【出演([]内は役名)】
- ルイーズ・バンクス[エイミー・アダムス]
- イアン・ドネリー[ジェレミー・レナー]
- ウェバー大佐[フォレスト・ウィテカー]
- ハルバーン捜査官[マイケル・スタールバーグ]
- マークス大尉[マーク・オブライエン]
- シャン将軍[ツィ・マー]
【公開日(日本)】2017年5月19日
【上映時間】116分
【配給】ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
【映倫区分】G
【IMDB】8.0/10.0 (およそ350,000人の評価)
【あらすじ】
ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との意思疎通をはかる役目を担うこととなり、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが……。【引用元:映画.com】
【感想そしてネタバレ】
☆4.5/5.0
私この映画大好きです!!!!!
元々、SFのジャンルは苦手なものが多く、特に前知識なしでもろに宇宙人が出て来るようなものは観ていてゲッソリしてしまうのですが、これは・・・それには含まれないものでした。
2010年に公開されたニール・ブロムカンプ監督の『第9地区』に似た雰囲気を感じました。これが好きな人は好きかもしれません!
邦題が良い!
原題は「ARRIVAL」到着や、誕生という意味もあり、そちらも悪くないなとは思うのです。が、邦題の「メッセージ」これが私、好きなんですよ!!
宇宙人が飛来し、私たち地球人に何を伝えようとしているのか?主人公のルイーズは、後世にどんなメッセージを残していくのか?
そして、この映画を通して私たち観客に監督は何を伝えようとしているのか?
これらの様々なメッセージが絡み合うこの作品に、ぴったりな邦題だと思うんです!!!
まるで叙述トリックの小説のよう
序盤から差し込まれるシーンの数々は、ルイーズの過去の映像のように見えるわけです。なので私は
「あぁ、この女性は過去に子供を亡くし、夫とも別れもはや仕事しか生き甲斐のない女性なのだ・・・」
と解釈していたわけです。中盤までは。
しかし!!!
途中から、ルイーズの回想シーンのように見える映像は全て、ルイーズが見る”未来の映像”であることが分かります。
ここで、今までの映画への解釈が180度変わっていくわけです。非常に効果的でインパクトのある、小説で言うところの叙述トリックのような演出が見事だなと感じました。
叙述トリックとは?
ミステリ小説において、文章上の仕掛けによって読者のミスリードを誘う手法。 具体的には、登場人物の性別や国籍、事件の発生した時間や場所などを示す記述を意図的に伏せることで、読者の先入観を利用し、誤った解釈を与えることで、読後の衝撃をもたらすテクニックのこと。
本来の大筋
突如現れたUFOのような「ばかうけ」のような「柿ピーの柿」のような物体をきっかけに世界が大変な事になったり、それを乗り越えた事で主人公のルイーズが家族を失った悲しみを乗り越えてイアンと結ばれる・・・そんなような話だと勝手に思っていましたが、それは違いました!!
本来は、未来を見る能力があり、世界最高峰の言語学者であるルイーズだけがその二つの方法を使って地球の未来を救う事ができる・・・そういう内容だったのです。
言語を学んでいく過程が楽しい
私のようなド素人でも、分かりやすく、全く言葉の通じない相手でも身振りや手ぶり、文字に起こすことによってコミュニケーションを図っていくことが出来るんだという事がとても分かりやすかったです。それに、宇宙人と対話をしようとするという設定そのものが新鮮でした。
残酷な未来を選ぶというラスト
このラストは非常に斬新で、涙が止まりませんでした。
宇宙人が来た理由そのものが「彼らの言語を地球人に伝えること」。それは、時間を超越して先の事まで見通せる彼らが”3000年後”に人類に自分たちを救ってもらうために必要なことだったのです。
だから、ルイーズにしかできなかった。
ルイーズは、自分が見る未来の光景からヒントを得て、宇宙人の目的を知り彼らの言語を完全に理解し、”武器を与える、だから世界を統一しろ”と間違った情報を得て分裂してしまった各国をまとめようと奔走します。
そして全てを知る。自分は将来物理学者のイアンと結婚し子供をもうけ、そして産まれた娘を病気で失ってしまう事。そのことを黙っていたのが原因でイアンと離婚してしまうことも。
だけど彼女はその未来から得た情報で地球を救った、そして宇宙人たちの未来をも救う事になる。
自分の一番大切な物を失う未来を知ってなお、あの選択をする、それは恐ろしく残酷で精神的にもストレスだし、普通の人ならば出来る事ではない。だけど、自分の将来にどんな不幸が待っていたとしてもそれを受け入れて生きて行こうとするルイーズの姿はとても力強く、私に”生きよう”と力を与えてくれました。
あーーーー思い出しただけで泣けてきますね!!!
まとめ
色々と、「何であんな高度な科学力があるのにもっと上手く立ち回れないの?」と宇宙人に対して思う点もあるかもしれません。が、”高度な科学力がある”というのも私たちの思い込みでしかない。彼らにとって出来る事と出来ない事は私たちにもわからないのですから、主人公ルイーズのように、今できることに全力で取り組む(鑑賞する)しか出来ないと思うのです。
短編小説の中の一編とは思えないほどの完成度だと思いました。脚色、脚本がお見事すぎる。
それから、宇宙人の描く言語が美しすぎる。監督の映像も美しすぎる。ミスリードな演出も最高です。コステロ、アボットもだんだん可愛く見えてくるし。
結局は”無知”が一番恐ろしいのだなと感じました。
SF映画はあまり観ない私ですが、SFジャンルの中で間違いなくベスト3に食い込みます!!!
ぜひぜひ皆さんも、DVDレンタルでも良いので観てみてください!!SFが苦手な方でも楽しめる作品だと思います!!