私はこの船で暮らし―――
永遠に旅をする 辿り着けない旅を・・・見知らぬ男とともに
劇場で予告編を観たときに気になってはいたものの、結局何気なくスルーしてしまっていた今作。家族の勧めもあってようやく、今回自宅で鑑賞しました。
主演俳優には、ヒロイン役にジェニファー・ローレンス!大好きな女優さんです(『ハンガー・ゲーム』や『世界に一つだけのプレイブック』で有名ですが、個人的には『X-MEN』シリーズのレイヴン(ミスティーク)が印象的)。そして主人公にはクリス・プラット、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスターロード役が記憶に新しいですね-!彼は宇宙に縁があるのかな(笑)
【映画情報】
【原題】Passengers
【制作国】アメリカ
【監督】モルテン・ティルドゥム
【脚本】ジョン・スパイツ
【製作】ニール・H・モリッツ、スティーブン・ハーメル、マイケル・マー、オリ・マーマー
【製作総指揮】デビッド・ハウスホルター、ベン・ブラウニング、ジョン・スパイツ、ブルース・バーマン、グレッグ・バッサー、ベン・ワイスブレン、リンウッド・スピンクス
【撮影】ロドリゴ・プリエト
【編集】メリアン・ブランドン
【音楽】トーマス・ニューマン
【声の出演([]内は役名)】
- クリス・プラット[ジム・プレストン]
- ジェニファー・ローレンス[オーロラ・レーン]
- マイケル・シーン[アーサー]
- ローレンス・フィッシュバーン[ガス・マンキューゾ]
- アンディ・ガルシア[ノリス船長]
【公開日(日本)】2017年3月14日
【上映時間】112分
【配給】ソニーピクチャーズ・エンターテイメント
【IMDB】7.0/10.0 (およそ230,000人の評価)
【あらすじ】
20XX年、乗客5000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が、新たなる居住地を目指して地球を旅立ち、目的地の惑星に到着するまでの120年の間、乗客たちは冬眠装置で眠り続けていた。しかし、エンジニアのジムと作家のオーロラだけが予定よりも90年近く早く目覚めてしまう。絶望的で孤独な状況下で生き残る方法を模索するうちに、2人は惹かれ合っていくのだが……。【引用元:映画.com】
【感想】
☆3.5/5.0
壮大で美しい宇宙と船内の映像
まず賞賛したいのはこれ!!
宇宙の映像の美しさ、無機質で洗練された宇宙船内外のデザイン!それ以外にも、無重力で浮いてしまうプールの水の表現や、隕石の激突によって起きた異常によって熱暴走する船室、そしてラストの”楽園”のシーンまで、どれも非常に美しく、それだけでも観る価値はあるかな、と思えます!
実力派俳優たちの共演
ジェニファー・ローレンスの美しさ!首元のホクロがすごく色っぽくてきれいです!そして彼女の、恋する女の目から憎しみに満ちた目に変わっていく演技!自分を起こしたのがジムだと知った後の、殴るわ蹴るわの暴行シーンが何気に鬼気迫っててゾッとしましたね。彼のした事の重さを再確認させられるというか。
対するクリス・プラットも、影のあるイケメンを演じていましたね・・・。目覚めてから、ジャケットの着方を鏡で確認して、これから始まるであろう新たな人生にウキウキする様子、そこから自分が一人だと知って絶望していく様子・・・。オーロラに対して、恋人をしながらも時々見せる罪悪感の滲んだ表情・・・。どれもすごく上手でしたね。
そして!!忘れてはいけない、アンドロイドのアーサーを演じたマイケル・シーン!凄いです、もう見た目は人間にしか見えないのに、ちゃんとアンドロイドしている。絶妙に噛み合っているようで噛み合っていない台詞回しとか、些細な表情筋の使い方とか「あ、本当の意味では理解されていない」というゾッとする感じが上手かったです。だからと言って完璧にロボット・・・とも少し違う、絶妙に愛着の持てる感じが凄く良かったんですよね。
この三人だけでほとんどの場面を回していくのに、後半の船長が目覚めるまで退屈しないのが本当にすごい。映像と、脚本と、演技者の力の賜物だと思います。
あと一番最後に出て来るノリス船長?という名前の人らしいですが、アンディ・ガルシアでビックリ(笑)もはやカメオ出演ですよね(笑)アンディ・ガルシアも大好きな俳優さんなので、ラスト「あっ!!!」とテンション上がってしまいました(笑)
泣けるけどご都合主義
残念な点になってしまうのかなぁ。切なくて、泣けるシーンも終盤あるんですが、途中まではわりとツッコミどころ満載で観てしまっていました。
ジムの孤独にもっと共感させてほしかった
彼がひとりで過ごした一年と三週間という時間をもう少し詳細に観たかったですね。全裸で徘徊したって誰も気にも留めない・・・というところとか切なくて良かったんですが。
ちょっと尺というか、表現不足だったかな。引用させてもらったあらすじも、予告編もそうだったんですけどまるで「偶然二人で目覚めた」というアオリなわけです。でも実際は全然違う!!
実際は、ひとりで目覚めたジムが残り90年の人生を孤独に過ごすのに耐え切れず、一目惚れした美女を自分の都合で起こしてしまう・・・。それは、殺人にも等しい、人の人生をまるごと奪うような行為なわけで。この情報を知らずに観た人は、きっとジムの行動には共感出来ないどころか嫌悪感さえ持ってしまうかも。
だからこそ、ジムの孤独にあともう少しでも共感を呼ぶ表現が必要だったかな、と。じゃないと物語への没入感が薄れてしまうから。「絶対に共感しない、自分ならそんなことはしない」と言い切れる人もいるかもしれないですが、本当にそうなのかな、と思います。あの状況になってみないとまずジムの気持ちは分からないし、人間は弱いから。極限状態であればまともな判断が下せず”人生を百万倍良くする方法”に縋ってしまうかもしれないですよね。
船長の台詞に「溺れる者は誰かに縋るものだ、でないと死んでしまう」という台詞がありましたが。この部分について、「ああ、この状況では仕方ないのかもしれない・・・」と思わせる表現が、もう少し欲しかった、という事ですね。
イケメンじゃなかったらどうするんだ問題
ジムがものすごいブサメンだったり、技術者ではなかったり、ものすごい幼かったり、逆に老人だったりしたら・・・というツッコミですね(笑)相手がいくら美女でも、彼女にも選択する権利があるわけで。そもそも技術者でなかったら、誰かを起こすことも出来なかったんですよねー。全体的に、予定調和な脚本であることは、間違いないです。
もし、ジムがサイコキラーだったらホラーな展開になるかも!とも思います。それはそれで観てみたい(笑)
船長の存在も都合がいい
後半になって起きて来る船長ですが、5000人以上もいる中で彼が目覚めたという偶然もものすごい。そしてすぐに死んでいなくなってしまうのも、都合が良い。最後に扉を開けに行く役をジムにさせるには、再度二人っきりにする必要がありますもんね。しかし最初から最後まで二人では船のシステムの深い部分まで入り込めない+医療機器の限界突破をさせることが出来ないわけで。監督の意図に沿って登場したキャラだなぁ、と冷静に思えてしまうところが残念でした。
ジムの罪は最初から許されるべくして犯された
最後の方で「沈みゆく船」だったんだ、とオーロラも観客も気付きます。つまり、ジムが彼女を起こそうが起こさないままだろうが、全員死にゆく運命だったんですよね。
この作品の最大のテーマは「人命の価値」で、武田泰淳の短編小説『ひかりごけ』のように、極限状態に置かれた人間が犯すタブーについてどう考えるか、という部分がキモだと思うんです。許されない罪に対してジムとオーロラがどうしていくのか、そこが観たいんですよね。
でも、物語は「最初からジムが許される」ように作られているわけで。
まぁラブロマンスをメインにしてしまうとそうなるのかもしれませんが・・・。原作でのラストは映画版とは違い、もう少し暗澹としたものだったようなので、そっちの方も観てみたかったなーと思いました。
まとめ
散々色々言いましたが(笑)
あまり深いことを考えずにラブロマンスとして観れば、ロマンチックなシーンも沢山ありますし、何より映像が美しい。
それから主演陣のキャラクターも魅力的で惹き込まれます。もっと素直に観れば、オーロラが「偉業を達成する人生」よりも大切な物を見つける物語なわけで。ヒューマンドラマなのか、ラブストーリーなのか、どちらに重点を置くかで見方もまた変わってくるのかなー、と。
これだけ色々とツッコんでおきながら最後の方は泣いてしまったちびぞうなので、決して失敗はしない良作だと思います(笑)