雨に紛れてヤツらは来た―――
「面白いかは別として珍しいオチの映画がある」「これは予想できない」と複数の映画仲間さんから「あんまり面白さは期待しないで。でも観てほしいの><」と控えめにオススメされた今作。
メキシコ発のホラー・スリラーということですが・・・ジャケットからは、頭のおかしい家族が監禁する(もしくはされる)系かな?と予測。
ちなみに同監督の作品は一つも観ていないため、どういう作風なのか全く予想がつかない状態で鑑賞しました。
【未体験ゾーンの映画たち2017】の作品ということで、少し不穏な空気は漂いますね・・・(笑)
【映画情報】
【原題】Los Parecidos
【制作国】メキシコ
【監督/脚本】イサーク・エスバン
【製作】イサーク・エスバン、ミリアム・メルカード
【製作総指揮】サロモン・スケナシ、ミリアム・メルカード
【撮影】イシ・サルファティ
【音楽】エディ・ラン
【出演([]内は役名)】
- グスターボ・サンチェス・パッラ[ウリセス(主人公の髭男)]
- カサンドラ・シアンゲロッティ[イレーヌ(DV夫から逃げてきた女)]
- フェルナンド・ベセリル[マルティン(チケット売り場の男)]
- ウンベルト・ブスト[アルバロ(医大生)]
- ルイス・アルベルティ[警察官]
- サンティアゴ・トレス[イグナシオ]
【公開日(日本)】2017年1月21日
【上映時間】90分
【配給】AMGエンタテインメント
【IMDB】6.0/10.0 (およそ1,520人の評価)
【あらすじ】
世界中が記録的な豪雨に襲われた夜。人里離れたバスステーションで、偶然居合わせた8人の男女が立ち往生していた。やがて1人の女性がウィルスに感染したような症状を見せ、正気を失ってしまう。ラジオから流れてくる情報によると、原因不明の伝染病で外でもパニックが起きているらしい。彼らは建物から出ることもできず、1人また1人と感染していき……。【引用元:映画.com】
【感想(ネタバレしています!)】
☆2.6/5.0
はい、出ましたジャケ詐欺ですねー。
まずこのような場面、このような人たちは出てこないです(笑)
こんなクラシックなお洒落ソファも出てこなければ、そもそも「バスステーションでのワンシチュエーション」ものなんですよ。ものすごく家の中っぽいジャケットですがもう、何から何まで間違ってます(笑)
たまーに、こういう「作ってる人たちは本当に映画を観たのかな?」と疑問に思う邦題だったりジャケットだったりがありますけども、なんでなんでしょうね。
やる気あるんでしょうかね。
ところで、この映画の外国版のポスターはこんな感じです。IMDBから引っ張ってきました。
いやぁハイセンス。どうしてこのクオリティが出せないのかー。
むしろ、このままのジャケットをそのまま使ったって、十分目を引けると思うんですよね。
一体どこが衝撃のラスト15分だったのか?
ぶっちゃけてしまうと、この映画の衝撃を得るタイミングはラスト15分では決してない。
それだけはハッキリと言えます(笑)
衝撃は衝撃ですが、それは爆笑や失笑を誘ったり、人々を困惑させる類のもので、決して「うぉおおおこの映画やばEEEEEE!!!」となるようなものではないです。
相変わらず、アオリも適当だ。やる気あるんですかね。
結論から言うと
雨の降るバスステーションの中で起きる怪奇現象は「全ての人が主人公と同じ髭面になる(正確にはそう見えるようになってしまう)」というもの。
突拍子もない発想そのものは誰しも一度は思いつくような、でもやろうとしないような、そんな感じのもので、しかもそのオチは「宇宙人がやらかしたよ!」という安直なもの。
でも、この映画オープニングがとにかくオシャレなんです。
雨の降るバスステーションを引きで撮っていて、徐々にクローズアップ、そしてタイトルバック。モノクロ映画?と見紛うほどに彩度を限りなく低くした画面もオシャレで、この監督のセンスを感じさせます。
それだけに、うーん。内容がもったいない。
全ての人間が同じ顔になることによって、個性がなくなってしまう恐怖。
言いたいことはなんとなく分かるんですが、宇宙人がそれをする意味も、病気の男の子がオーメンのダミアンばりに覚醒して場を恐怖に陥れる展開も、どうもよくわからない(笑)
(ただしイグナシオは相当な美少年)
そもそも最終的に没個性したことそのものを忘れてしまって、みんながみんな元通りの顔に見えるというなら、最初と何も変わっていないのではないか?と思うのですよ。
だって、今の私たちの顔だって、鏡に映る、触れて分かる、その通りの顔を本当にしているなんて誰に証明できますか?私たち人間がお互いの視覚や触覚を通して認識しているだけであって、別種族(それこそ宇宙人とか)から見てみたら全く違う容貌をしているかもしれない。それこそ、全部同じに見えているかもしれない。
現時点ですでにそうなのだから、映画のラストで没個性(人間すべての顔が同じになった)したということそのものを無かった事のようにしてしまうのはあまりにも意味がないかなと。正直、そこに怖さはないですよね。
それから、笑わせに来てるのか分かりませんが、犬の顔まで髭面になってたあの演出(笑)
本当に必要?狙ってるよねぜったいにね!
人類が、同じになってしまうという恐怖の雨のはずなのに、犬まで人間の顔になるのはおかしいんじゃないかというツッコミをせざるを得ません。
まとめ
ホラーとしてはイマイチ。哲学としてもイマイチ。
ホラー映画で笑えるマニアックな映画ファンの皆様には、ぜひとも登場人物が全員同じ「髭面」になるという奇妙な場面を観て笑っていただきたい。そんな一本です。
ただ、前述したようにものすごくセンスを感じる作品なので、この監督の別作品は追いかけてみてもいいかも!と思えました。『パラドクス』とかね。