僕がいる間は、泣かなかった―――。
『X‐MENシリーズ』のウルヴァリンで有名なヒュージャックマンを主演に迎えた、『複製された男』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と主演ジェイク・ギレンホールの再タッグ作品!
ギレンホールさんは『ゾディアック』のように陰鬱なミステリーが本当に良く似合う役者さんですよね!
今作はメインの誘拐劇に加え、考察大好きな映画ファンが裏の意図を色々と妄想できる、そんな深みある作品です(笑)
下にも書いていますが、今回はお目当ての俳優さんがいたのもあって劇場で鑑賞いたしました。
パンフレットはこんな感じ!
税抜き667円で30ページあるのですが、持ってみるとひじょーーーーにうっすい!薄さが不安になるパンフです(笑)
薄さの理由は中のページが雑誌や新聞の記事を思わせるデザインで非常に薄い紙を使っているからですね。こんな感じ
パッと見は見辛く感じますが、すごく雰囲気の出ているパンフでこれはこれで良いかなーと。映画評論家、映画ジャーナリスト、映画ライター等の解説やコラムが非常に多い印象を受けたのは余計な装飾がないせいかもしれません。しかし読みごたえはバッチリ!
【先にこれだけ言わせて!】
ジェイク・ギレンホールやテレンス・ハワードなどちびぞう一押しの演技派俳優が集まった今作ですが、個人的に注目しているのは今一番応援したい俳優「ポール・ダノ」の怪演です!!
私が勝手に「ポスト・フィリップ・シーモア・ホフマン(亡きホフマンさんの後継者的な役者さんという意味です)」と称しているこの俳優さんとは、『リトル・ミス・サンシャイン』の”無口なお兄ちゃん”で出会いました。
この人は他の作品でもどうもボコられたり苦悩している役が多く…
- 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ではボーリングのピンでボコられ殺されるし、
- 『ルビー・スパークス』では新作書けなさ過ぎて苦悩した上、妄想を現実にさせるという特殊能力を発動させたのに更に苦悩するし、
- 『LOOPER/ルーパー』では30年前の自分が拷問されちゃったから体がサクサク消えてっちゃうし、
- 『それでも夜は明ける』では木に逆さ吊りにされてボコられて無様に助けを求めるし(序盤はすごい横柄な態度してるからギャップすごい)、
- 『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』では薬物に溺れる悩み多きミュージシャンの役を演じているし、
そしてそんなポール・ダノさんが今回、ヒュー・ジャックマン扮する父親役に娘を誘拐した犯人だと疑われ”原型を留めないレベルでボコられる”…
いやぁ、ヒュー・ジャックマンの拳は硬くて鋭そうですぞ。下手したらアダマンチウムの爪で切り裂かれる
もっと明るくてハッピーな軽い役も演じさせてあげてよ!(笑)
(まぁ、”ポスト・フィリップ・シーモア・ホフマン”の宿命かもしれませんが)
正直映画の内容もですけども、大好きな俳優さんがボコられると予告編でうっすら理解した上で観に行くのは別の恐ろしさがありました(笑)
【映画情報】
【原題】Prisoners
【制作国】アメリカ
【監督】ドゥニ・ヴィルヌーヴ
【脚本】アーロン・グジコウスキ
【音楽】ヨハン・ヨハンソン
【出演】ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール、ヴィオラ・デイヴィス、マリア・ベロ、テレンス・ハワード、メリッサ・レオ、ポール・ダノ、ディラン・ミネット、ゾーイ・ソウル、エリン・ゲラシモヴィッチ、カイラ・ドリュー・シモンズ、ウェイン・デュヴァル、レン・キャリオー、デヴィッド・ダストマルチャン
【公開日(日本)】2014年5月3日
【上映時間】153分
【配給】ポニーキャニオン/松竹
【映倫区分】PG12
【IMDB】8.1/10.0
【あらすじ】
家族で幸せなひと時を過ごすはずの感謝祭の日、平穏な田舎町でひとりの少女が失踪する。手がかりは少なく、警察の捜査も進展しないなか、少女の父親は証拠不十分で釈放された第一容疑者の証言から、彼が誘拐犯だと確信。自らの手で娘を助け出すため、一線を超える決意をする。【引用元:映画.com】
【感想(ネタバレ注意)】
☆3.8/5.0
私好きです、この映画。
一番は撮影の上手さ。画面作り。雰囲気作り。淀んだ空気が恐怖感を運んでくるような、じっとりとした感覚が味わえるのは本当に上手だと思います。ホラー映画と紙一重な上質なサスペンス。それから、ミステリーお約束のテンプレが存在しない、先の読めない脚本。最初に疑われる容疑者はまず犯人じゃないだろうと思いきや、冒頭で引用した「僕がいる間は~」という意味深な台詞を言わせることで「おやおや?やはりこいつなのか?」と主人公と同じように疑っていってしまいます。そこから先、二転三転する展開も飽きないし、最後まで緊張感が解けないんですよね!すごく安定した面白さのある映画だと思います。
◆タイトルに込められたテーマ
- 誘拐された少女たち
- 娘を助けるため容疑者を拷問するという狂気に囚われていく主人公ケラー
- 容疑者アレックスも実は最初に誘拐された子どもであり、叔母に囚われている
- もう一人の容疑者ボブもまたかつて誘拐されていた頃の状況に囚われ、叔母の犯行を模すようになっていた
- 真犯人である叔母も、”神への戦い”という一種の復讐の儀式に囚われていた
- 主人公と同じ立場でありながら、傍観者を決め込んだ友人夫妻もまた、”世間体”や一般常識に囚われている
このようにタイトル「プリズナーズ(囚人たち)」に込められている通り、あらゆる人が何かに囚われているよ、という物語。
そして、子どもを誘拐された親の立場に立った時…「あなたならどうする?」という究極の問いも投げかけている。
深い。深すぎる。子どもを誘拐された人の気持ちを推し量れば、明らかに間違った事をしている主人公を責めきれなくなってしまうところが難しいところ。まぁ、他にもやり方あったのでは?とも思うけど。
脚本を書いたアーロン・グジコウスキさんが「車の鍵や携帯電話など、どうってことのない物を置き忘れた時に感じるような気持ち。そこにあるはずのものに手を伸ばしたら、実はもうなかったと気付いた時に生じるちょっとしたパニック。それを我が子に置き換えて考えてみたら、以前とは全く違った気持ちになった。その出来事が人間の心にどんな影響を与えるのか?普段なら絶対にしない行動に走らせるのか?最初に思い浮かんだのはそういった心情に対する問いかけだった」とパンフで語っています。
この問いに対する答えの一つとして、この物語があるんだろうな。暴力によって起きた出来事が与える心への影響までも描こうとしている。この映画は単なるサスペンスだけでなく、そういったヒューマンドラマの視点でも楽しめるのが深みを感じる一つの要因なのかなと思います。
長くなって来たので【後編へ続く!!】