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『ダゲレオタイプの女』感想/黒沢清ミーツ仏映画!

その撮影は永遠の命を与える愛。

 

役所広司さん主演のサイコサスペンス『CURE』や浅野忠信、深津絵里主演の『岸辺の旅』などで有名な、黒沢清監督の最新作!なんと舞台はフランスです・・・!

 

一般の劇場公開とは少し遅れて近所のミニシアターにもこの作品がやってきましたので、嬉々として観に行ってまいりました。

ちなみに私は黒沢清監督のテレビシリーズ『贖罪』のファンです^^

パンフレットはこんな感じ。

まるで絵画のよう!!!サテン?生地のドレスがフランス人女優コンスタンス・ルソーの美しさを引き立てていますね。

ページ数はおよそ22ページほど。定価700円。厚みはあまりないですがミニシアター系の映画ですと大体どれもこんな感じですね。

【映画情報】

【原題】Le secret de la chambre noire
【制作国】フランス/ベルギー/日本
【監督・脚本】黒沢清
【音楽】ブライアン・タイラー
【出演】タハール・ラヒム、コンスタンス・ルソー、オリヴィエ・グルメ、マチュー・アマルリック
【公開日(日本)】2016年10月15日
【上映時間】131分
【配給】ビターズエンド
【IMDb】★6.1/10.0

【ダゲレオタイプとは?】

世界最古の写真撮影方法。長時間の露光を必要とするため、人物を撮影する場合は長時間に渡り身体を拘束される。ネガを作らず、直接銀板に焼き付けるため、撮影した写真は世界に一つしか残らない。

「写真を撮るとは命を削り取る事」

と思われるほど、モデルになる者は命がけで被写体になっていた。その撮影は被写体と撮影者の愛情交換であり、束縛でもある。

【出典:ダゲレオタイプの女 公式パンフレット】

 

【あらすじ】

写真家を志す主人公ジャン(タハール・ラヒム)が、パリ郊外にある古屋敷に訪れ、そこで170年前に滅びた写真撮影の技術「ダゲレオタイプ」を再現しようとする中年写真家ステファン(オリヴィエ・グルメ)の助手となるところから物語は始まる。モデルとして父を手伝うステファンの娘、マリーとの恋物語や古屋敷に潜むステファンの亡き妻の影やその死の真相…。そして、土地開発に伴って古屋敷を土地ごと売って欲しいと目論む開発業者の登場によって、ジャンの運命は大きく変わっていく。

 

【感想】

うーん★3.8/5.0くらいですかね!観る人を選ぶ映画だとは思いますが、私は楽しめましたし色々な事を考えるきっかけにもなり…面白かったです。

 

実はこの話はホラーである、という事を知らずに観に行く方が多いようなのですが、私個人としては、出来れば何の前知識も無しに観て欲しいなぁ、というのが本音です。

なぜならこの映画にはホラーだけでなく、アートに向き合う写真家の狂気が描かれていたり、生と死をひっくるめたヒューマンドラマであったりと、ホラーだけでなく色んな目線で楽しめる要素が散りばめられていると感じるからです。

「ホラー映画を観に行くぞ!」と思って観るとどうしてもホラーに意識が寄りがちになり、物足りなく感じる場合があるかもしれません。それくらい、ホラー的な要素はほんのりとしています。

多分、少し霊的な部分を曖昧にする事で「ダゲレオタイプ」という物が作り出すドラマを観て欲しいという意図があったのかもしれません。例えば、幽霊の存在を「幽霊だぞ!」とハッキリ描くのではなく「これはもしかしたら、主人公の妄想や幻覚であるかもしれない」と考えさせる余地を残している部分ですね。

作中に出てくる”写真撮影に使う水銀”の存在なんかが、そういう考えを支える手助けをするアイテムになっていると思います。

 

個人的に、アーティストが”自分の作品に固執して命を削っていく”姿にとても響かせられてしまうので…そういった部分が琴線に触れたのが大きいですね。

「写真に撮られると魂を奪われる」なんて、私が小さい頃によく聞いていましたが(最近はあまりそういう事は言われませんが)、これはかつて、撮影時間が何時間も必要だった頃の人々が感じた肉体的・身体的な疲労感から出て来た言葉なのかもしれません。

当時のフランスでダゲレオタイプが使われていたころは、亡くなってしまった身内の写真を銀板にして保存する…何てことがあったらしいので、「ダゲレオタイプ」自体が非常に死に近いものだ、と感じられるところが、ホラー映画ともとても相性が良かったのかもしれません。

 

【なぜフランスで?】

一緒に観に行った母が「フランスで撮る意味はないかも」と言っていたのですが(笑)、確かに”ダゲレオタイプ”というものにこだわらなければ、十分に日本でも通用するプロットだと思います。

実際、パンフでも「まずはフランスで撮ってみないか」、というプロデューサーである吉武美知子さんの誘いから始まり、すでに書いていた作品のプロットを「これならフランスでも映画に出来る!」と持って行ったと書かれていました。

吉武さんは黒沢清監督の世界をフランスで展開させたらどうなるのか、というところを見たかったと語っていました。

 

私はこの映画のどんよりとした中にある透明感や、モデルが命を削って撮影に挑む撮影風景の張りつめた空気感、どれもとても美しくて…黒沢清節はいかんなく発揮されていたと感じました。

街並みや、画や、衣装など。見所も沢山あるかと思います。

”ただの”ホラー映画ではないもう一つ先に進んだ何かを感じ取って欲しい作品ですね^^

監督の、次回作にも期待大です!!

 

 


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